日中韓首脳会談の再開に思う

一条真也です。
1日、安倍晋三首相は韓国の朴槿恵(パククネ)大統領、中国の李克強(リーコーチアン)首相とソウルの青瓦台(大統領府)で日中韓首脳会談を開きました。3首脳は首脳会談を年1回の開催で再び定例化することで合意し、日中韓自由貿易協定(FTA)の交渉加速なども確認しました。さらには、歴史認識問題では「歴史を直視し、未来に向かう」との表現で一致し、これらを盛り込んだ共同宣言を取りまとめ、発表しました。


握手する日中韓の三首脳



日中韓首脳会談の開催は2012年5月以来で、じつに約3年半ぶりです。
会談は3カ国外相らも同席して約1時間半行われたそうです。
安倍首相は終了後の共同記者会見で「3カ国による協力プロセスを正常化させたことは大きな成果だ」と訴えました。
会談では、安倍首相から8月に閣議決定した戦後70年の安倍談話が取り上げられたようです。首相は「歴代内閣の立場は揺るぎないものとした上で、戦後70年間の平和国家としての歩みを基礎に、国際社会の平和と繁栄に一層貢献することを約束した」と説明し、「特定の過去にばかり焦点を当てる姿勢は生産的でない。日中韓の協力の前向きな歴史をさらに紡ぎたい」などと訴えたといいます。これに対し、朴大統領と李首相から具体的な発言はありませんでした。また、慰安婦問題について3首脳はいずれも言及しなかったとか。


今朝の朝刊各紙



わたしは、このニュースを知って本当に嬉しく、1人で祝杯をあげました。
ブログ「東アジアに礼の思想を」にも書きましたが、福岡県には、福岡市と北九州市という2つの政令指定都市があります。ともに朝鮮半島やアジア大陸に近いという地理的、歴史的背景から「アジアの玄関口」と呼ばれ、アジア諸国との交流に力を注いでいます。交通も非常に便利で、飛行機ならソウルまで1時間10分、上海まで1時間30分、台北まで2時間20分で飛べます。これは、それぞれ、関西空港、東京、札幌に行くのと同じ所用時間です。これほど近い東アジアですが、昨今の日本と中国、韓国との関係は良好であるとは言えませんでした。いや、尖閣諸島竹島の問題をめぐって険悪そのものでした。北朝鮮に至っては脅威の対象でしかありません。


礼を求めて

礼を求めて

しかし、わたしは思うのです。日本も含めて東アジア諸国はいずれも儒教国であり、国民には孔子の「礼」の思想が流れているはずです。もともと「礼」は他国の領土を侵さない規範として古代中国で生まれました。今こそ、究極の平和思想としての「礼」を思い起こす必要があります。ちなみに、わたしは北陸大学の客員教授として「孔子研究」の講義を8年間担当しましたが、受講する学生は日本人だけでなく、中国人留学生や韓国人留学生もいました。彼らは国籍の違いなど気にせず、わたしが熱く説く「礼」のメッセージを熱心に聴いてくれました。これからの東アジアの未来を担う彼らのためにも、なんとか日中韓国3国の平和を願っています。


わたしは、かつて『徹底比較!日中韓 しきたりとマナー〜冠婚葬祭からビジネスまで』(祥伝社黄金文庫)という本を上梓しました。
中国や韓国は、日本にとっての隣国です。隣国というのは、好き嫌いに関わらず、無関係ではいられません。まさに人間も同じで、いくら嫌いな隣人でも会えば挨拶をするものです。それは、人間としての基本でもあります。
そして、この人間としての基本が広い意味での「礼」です。
「礼」からは、さまざまな「しきたり」が派生しました。本書は、「ライフスタイル」「冠婚葬祭」「伝統行事」「子育てと教育」「ビジネスマナー」といった5つのパートに分かれ、それぞれの分野の「しきたり」を紹介しています。
特に、「冠婚葬祭」や「伝統行事」は類書にない詳しさであり、資料的な価値も大きいのではないかと思っています。


徹底比較!日中韓 しきたりとマナー』より





それぞれの国の「しきたり」を知ることは、その国の文化を知ることです。
そして、互いの文化の違いと共通点を知ることは、その国の国民の「こころ」を知ることにほかなりません。わたしはこの本が日中韓の相互理解、国際親善、そして世界平和につながることを願っています。
みなさんも、ぜひ『徹底比較!日中韓 しきたりとマナー』をご一読下さい。


「礼」と「慈」と「和」の心で日中韓の平和を!



さらに、日本・中国・韓国は儒教国であるとともに、仏教国でもあります。儒教のコンセプトが「礼」なら、仏教のコンセプトは「慈」です。そして、日本古来の神道のコンセプトは「和」です。「和」は「平和」にも通じます。
わたしは『礼を求めて』、『慈を求めて』、『和を求めて』(すべて三五館)の三部作を上梓しました。ぜひ、「礼」と「慈」と「和」の心によって日中韓の3国が良き隣国として共生し、それぞれが繁栄することを願っています。


*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2015年11月1日 一条真也