一条真也です。
5月26日(火)は、シンガポール視察の最終日です。
朝食を済ませた後、8時半にホテルをチェックアウトし、専用車でシンガポール冠婚葬祭研修へ出発。最初の目的地は、光明山普覚禅寺です。
シンガポールには、さまざまな民族が住んでいます。当然ながら宗教の多様で、生粋のシンガポーリアンの心は儒教に支えられていますが、狭い国内にはタイ、ミャンマー、チベット、スリランカ、中国などの仏教寺院、道教、ヒンズー教やシーク教寺院、キリスト教の教会、ユダヤ教会、イスラム教のモスクなどが建っています。
シンガポール最大の寺院です
池には、なぜか大量のカメが・・・・・・
さながら「宗教見本市」といった観がありますが、そんな中でシンガポールの郊外に建つ中国系仏教寺院である光明山普覚禅寺は、シンガポール最大の寺院です。ここはとにかくスケールが大きくて、本堂も大仏も観音像もすべて大きい! 池もあって、なぜか大量のカメがうごめいていました。
この光明山普覚禅寺には、火葬施設が備えられています。
シンガポールの火葬場は基本的に国営ですが、ここは例外的に民営です。
華僑を中心とした多くの中華系の人々の火葬が営まれています。
ここで火葬のデモンストレーションも見学しました。
バラエティに富んだ副葬品
車の副葬品も本格的です
車の副葬品の横に立つ
みなさん、興味津々でした
ただ、遺体と一緒に燃やす副葬品がバラエティに富んでいます。
紙で作られた家や自動車などの副葬品が大きいので驚きました。最近では、アイフォンをはじめとしたスマホの副葬品が人気があるそうです。
納骨堂
新しい納骨堂の前で
新しい納骨堂の内部
遺骨持ち出し防止用のセンサー
さらに、この寺院は近代化された納骨施設を備えています。
まるでコインロッカーのように林立した納骨施設は壮観でした。
すべて故人の写真が飾られていましたが、中には生前予約で仮押さえされたものも多く観られました。非常に立派な納骨堂ですが、60年間の使用が基本です。また、シンガポールは基本的に土地は国家が所有していますので、いずれ国に返還しなければならないそうです。そのとき、膨大な数の遺骨はどこに行くのでしょうか。驚いたのは、出口に万引き防止用のセンサーが設置されていたことでした。なんでも、親族間の争いなどで遺骨を無断で持ち去ろうとする人がいるというのです。
まるで図書館のようでした
納骨堂の価格表
中央に三体の仏像がありました
まるで図書館の書棚が立ち並んでいるような納骨堂の光景を前にして、わたしは「たしかに納骨堂や霊園とは一種の図書館だな」と思いました。かつて、「人間とは図書館である!」というコラムで紹介したように、1人の人間、それも人生経験ゆたかな高齢者とは一個の図書館に等しいという考え方があります。それだけの情報や知識や知恵が込められているのです。
しかし、さらに古い納骨堂へと案内されたのですが、そこはまるで古文書館のようなイメージでした。かなり昔の遺骨なのでしょう、色褪せたような遺影とともに数えきれないほどの遺骨が並んでいます。それも、高い天井まであるガラスケースの中に二重に置かれています。なんでも、低い段の前列が最も高価格で、高い段の後列が最も低価格なのだとか。高い段の遺骨をお参りするときは、梯子を貸し出すそうです。それを聞いて、わたしは複雑な気分になりました。
ブログ「最大の平等」で紹介したように、「死は最大の平等である」というのがわが信条ですが、死後まで経済力による格差が付きまとうのはやきりきれない思いがします。この古色蒼然とした納骨堂もいずれは国に返還しなければなりません。多くの死者たちの行き先は一体どうなるのか。
シンガポールという国は、「死者の尊厳」よりも不動産の有効活用による「経済発展」を優先させるのか。ちょうど今、『お墓の作法』(仮題、青春出版社)という新書を書いているので、その内容についても考えました。
新旧の納骨堂を見学した後は、本堂に向かいました。
サッカー場と同じ大きさという広大な本堂にポツンと鎮座する黄金の大仏は13.8メートルの巨大さです。でも、本堂があまりにも広すぎるので大仏の大きさがよく実感できないというのが残念でありました。
本堂を出たところ
色彩豊かな渡り廊下
さまざまな仏教説話の絵が・・・・・・
巨大な菩提樹(ブッダ・ツリー)
本堂を出ると、わたしたちは渡り廊下を歩きました。
渡り廊下は色彩豊かで、精緻な彫刻を施された連々と繋がっています。
各所には仏教説話の内容を描いたイコンも配されています。
ふと庭園を見ると、巨大な菩提樹(ブッダ・ツリー)が植えられていました。
巨大観音像と小坊主像
巨大観音像を背に・・・・・・
黄金のパゴダ(仏塔)が輝いています
パゴダを背に合掌
また、巨大な観音像を中心に広い芝生には置かれたたくさんの小坊主の像なども並んでおり、さながら「宗教テーマパーク」といった印象でした。この光明山普覚禅寺は、火葬施設、納骨施設、それに本格的な寺院に巨大な大仏や観音像、さらにはパゴダ(仏塔)まで揃っており、非常にバラエティに富んだ宗教施設です。シンガポールにおける仏教のプレゼンテーション施設と言えるかもしれません。
*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。
2015年5月27日 一条真也拝