「ド正論」で生きる

一条真也です。
22日の夕方、ネットを見ていたら、ヤフーニュースで「『ド正論』ビートたけし 石丸伸二氏への指摘が的確すぎると話題に『ず~~っと石丸さんに思ってたのがまさにコレ』」という記事を見つけました。大いに納得!

ヤフーニュースより

 

「女性自身」配信のこの記事では、タレントのビートたけし(77)が7月21日放送のビートたけしのTVタックルテレビ朝日系)で、東京都知事選で約165万票を獲得して2位となった石丸伸二氏(41)に”アドバイス”を送った話題が取り上げられています。この番組の冒頭では、YouTubeなども見ているというたけしが、選挙後の石丸氏のメディア対応が話題になったことを挙げ「芸能界の、なんか間抜けな文化人面してるやつらが文句言ったり、なんかいろいろあるけれども」と話し出し、石丸氏も笑顔を見せたそうです。

 

たけしは続けて「俺が思うにはだね、話題になったのは選挙後なんだよね。選挙後の石丸さんのメディアに対する対応の仕方について、いろんなやつがいろんなこと言ってるんだけど。俺は、それ見てて自分のことと比較すると、身につまされた。そりゃ怒るよな、同じ質問ばっかりでってのはあって」と理解を示しました。その上で「ただ、石丸さんが政治で有権者をまとめていくためには、“なんでそんなことも分からねえんだ”って言うような事までも、ちゃんと誠意をもって答えたふうにしないと、結構、世の中って動かねえなってのはあるね」と、石丸氏に助言しました。

 

このたけしの発言に共感する人は多かったようで、Xではたけしの発言に同調する声が溢れた。たとえば、「たけしさんド正論ですね。ま、みんなそう思ってんだよね。「言い方」てね。敵意を持ってないからそれなりの対応と反応ってところですね。ま、自分を通してる。ただ、相手がたけしさんでなかったらコレにもいつもの対応しただろうなとおもう」「俺がず~~っと石丸さんに思ってたのがまさにコレビートたけしって何喋ってるかわかんなくてあんま好きじゃなかったんだけど、映画監督こなすくらいだし賢いんだろうな」「ビートさんのおっしゃる通りだと思います。イシマル氏がちゃんと受け止めたかはわかりませんが・・・」「たけしさんが言うと重みがありますね。その通りだと思います」などなど。わたしも、大いに共感しました。みんなが漠然と感じていることを見事に言語化するのは素晴らしいですね!



大衆が漠然と思っていることを言語化できるというのは頭が良い証拠ですが、それ以上にビートたけしという人には高い倫理性を感じます。ブログ「被災地での犯罪に厳罰を!」でも紹介したように、かつて、熊本地震の被災地で発生している空き巣について、ビートたけしは「あいつら射殺しろよ」と怒りをあらわにしました。彼は、自身のTV番組で「こういうときにそういう犯罪すんのは特別に罰しなきゃおかしいだろ」と自身の考えを示しましたが、わたしは深く共感。彼には、ブログ『全思考』ブログ『超思考』で紹介した本名の北野武としての著書がありますが、いずれも高い倫理性に貫かれており、感服しました。

 

 

『超思考』では、さまざまな世の中の出来事をぶった斬っていきますが、わたしは特に第十五考「師弟関係」に大いに共感しました。北野氏の若い頃、師匠と弟子という人間関係はすでに形骸化していました。北野氏が松鶴家一門に入ったのも、誰かの弟子にならないと漫才の舞台に立てないので、単に漫才をするためだったとか。では、北野氏は師弟関係を軽んじているのかというと、そうではありません。北野氏には御存知「たけし軍団」という多くの弟子たちがいますが、「師匠として何かを教えたとすれば、礼儀くらいのものだ。礼儀だけは厳しく躾けた。たとえば俺が誰かと話していたら、その話している人は全部お前らの師匠だと思ってやってくれ。俺よりも年上の人だったら、俺よりも偉い人だと思って接してくれなきゃ困るということだけは言った」と述べています。


なぜ、弟子たちに礼儀を教え、厳しく躾けたのか。北野氏は、「礼儀を躾けるのは、それがこの社会で生きていく必要最小限の道具だからだ。社会を構成しているのは人間で、どんな仕事であろうとその人間関係の中でするしかない。何をするにしても、結局は、石垣のようにがっしり組み上がった社会の石の隙間に指先をねじ込み、一歩一歩登っていかなければ上には行けない。その石垣をどういうルートで登るかを教えてやることなんてできはしないのだから、せめて指のかけ方は叩き込んでやろうと思っている」と述べています。わたしは、この文章を読んで、まるで孟子の言葉ではないかと思いました。まさに儒教の徒といってもおかしくないほど、北野氏は「礼」というものを重んじています。だからこそ、生き馬の目を抜くような芸能界でトップの座にあり続けているのでしょう。

若き日のビートたけし氏と佐久間名誉会長(中央)

 

そういえば、昔、わが社がお笑いイベントを開催して北九州に「ツービート」や「ゆーとぴあ」などの若手芸人をたくさん呼んだことがあります。イベント終了後、当時の佐久間進社長(現、名誉会長)は彼らを小倉の夜の街に連れ出し、伝説的おかまバー「ストーク」などで飲んだそうです。自身が実践礼道・新小笠原流を立ち上げ、礼儀については人一倍厳しい佐久間会長ですが、そのときの「ビートたけし」こと著者の礼儀正しさには感嘆したそうです。「あんなに礼儀正しいタレントさんは初めて見た」と言っていました。わたしは父から「礼」について徹底的に叩き込まれた人間ですが、その父の言葉を聴いて、それまでは単なる毒舌芸人としか思っていなかったビートたけしへの見方を根本から改めた記憶があります。最後に、わたしは「一条真也の本は正論すぎる」などと揶揄されることがあるのですが、このトシになったらもう決してブレないで、死ぬまで、ド正論を吐き続ける爺でありたいと思います。

 

2024年7月22日  一条真也