北九州市新ビジョンにかかる有識者インタビュー

一条真也です。
ついに4月になりました。ブログ「北九州市への提言」で紹介したように、1月15日、わたしは北九州市公式HPに掲載するためのインタビュー取材を受けました。そのときのインタビューがHPにアップされました。


インタビュー集の表紙


北九州市公式HPより

 

北九州市新ビジョンにかかる有識者インタビュー集」のタイトルで、冒頭には以下の挨拶文が書かれています。
北九州市の新たな基本構想・基本計画策定に向け、令和5年(2023年)9月から令和6年(2024年)1月にかけて実施した有識者インタビューでは、たくさんの皆さまに、北九州市の過去(将来も引き継ぐべき歴史や価値観)・現在(ポテンシャル)・未来(おおむね20年先を見据えた目指すべき姿)などの視点から、北九州市が目指すべき都市像等について、さまざまなご意見・ご提案をいただきました。皆さまからいただいたご意見・ご提案については、新たな基本構想・基本計画に適宜反映させていただいたほか、本冊子のとおりインタビュー集としてとりまとめました。この場を借りて、大変ご多忙の中、インタビューにご協力をいただいた53名の皆さまおよび関係の皆さまに感謝申し上げます」

北九州市公式HPより

53名の有識者メンバーの顔触れは親しい方も、そうでない方もおられますが、麻生渡氏(一般財団法人九州 最高顧問・元福岡県知事)、末吉興一氏(公益財団法人アジア成長研究所 名誉理事長・元北九州市長)、北橋健治氏(前北九州市長)のお名前もありました。経営者では、小笠原浩氏(株式会社安川電機 代表取締役会長)、田中亮一郎氏(第一交通産業株式会社 代表取締役社長)、森田隼人氏(シャボン玉石けん株式会社 代表取締役社長)のお名前もあります。さらに、隈研吾氏(建築家)、築城則子氏(遊生染織工房 主宰)、町田そのこ氏(作家・北九州市文化大使)のお名前を見つけて嬉しく感じました。


佐久間庸和インタビュー・ページより

 

わたしのインタビュー・ページですが、「高齢者が多いことをポテンシャルと捉えて、コンパッション都市を目指してほしい」のタイトルで、以下のように書かれています。

「高齢化を捉え直し再び豊かな街へ」
昨年は北九州市市政60周年でしたが、わたし自身も昨年、還暦を迎えました。北九州市と同い年なのです。北九州市は、全国の政令指定都市の中でもっとも高齢化が進んでいます。世界一の高齢化率であることを考えると、北九州市は世界一高齢化が進んだ街と言えるでしょう。人口が100万人を切ったことから、北九州市の衰退が叫ばれています。しかし、わたしはつねづね、「高齢者が多いことは北九州の強み。それを悪いことと思い込んできたことが意気消沈してきた原因」だと感じています。
かつて筑豊は炭鉱で日本中を豊かにし、八幡は製鉄で日本中を豊かにしました。もう一度、北九州が全国に「豊かさ」を発信できれば、それは「老いの豊かさ」であると確信します。わたしはこの北九州こそ、老いるほど豊かになる「老福都市」が実現できると考えています。つまり、これまでに北九州市の「弱み」とされてきたものを「強み」ととらえ直して、まったく新しい都市モデルを示すべきであると考えます。まさに「老い」がそうです。北九州市は日本一の高齢化都市ですので、全国の独居老人にどんどん移住してもらい、高齢者の楽園にすればよい。つまり、高齢者福祉特区を作って、日本一、高齢者が住みやすい街を作るのです。日本には独居老人が約600万人いるといいます。僻地で生活しながら不安な思いをしている人も、皆同じところに集まったら良いと考えます。国にも財政支援をいただいて、租界のように、安全を確保しながら北九州市に来ていただく、600万人の1割が来たら60万人で、人口100万人達成はすぐにできると考えています。

「文化、医療、子育て等さまざまな魅力がある」
北九州市は前代未聞の5市対等合併により誕生したため、それまでの5市ごとにしっかりとした社会資本が形成されていて、現在にもつながっています。
例えば、人口10万人当たりの医療機関の数では政令市の中で病院数が3位、診療所が4位、病床数は病院、診療所ともに2位と充実している他、救急車を要請して病院に到着するまでの時間は一番早いです。また保育体制もしっかり確立されており、待機児童数は10年以上0が続いてきました。このような点が「住みたい都市」として高い人気を得ている要因でしょう。
また、北九州市は災害が少ない場所だとつくづく思います。台風が来ると言っても直撃はしませんし、地震も大きなものはありません。1901年に八幡製鉄所をその場所に作ったのは、日本で一番安全なところはどこかと調べた結果なのでしょう。あと、意外に知られていませんが、北九州市は人口1人あたりの映画館数が日本一です。これからの超高齢社会で、市民の暮らしやすさや住みやすさを考えるうえで大きな魅力となるでしょう。
「住みたい都市」として人気が高まる一方で「修羅の国」というイメージがあるのも事実です。幕末期、小倉は小笠原藩が統治しており、その時に根付いたのが小笠原礼法です。その基本は「つつしみ、うやまい、思いやり」です。わたしは小倉高校卒ですが、「質実剛健」を是としていました。その意味で、修羅の国のシンボルとして発信されている、(一部の方々の)派手な成人式衣裳のイメージは小倉より博多(商人のまち)に合うのではないでしょうか。北九州においては、あくまでも思いやり(コンパッション)をカタチに示すということが大事だと考えています。

佐久間庸和インタビュー・ページより

 

「若年層が残りたくなる企業の誘致・育成を」
若年層に目を向けると四年制大学が10もあり、人口比での学生数はかなり高いのに、大学卒業と共に多くが北九州市を去っています。受け皿になる企業が少ないからです。大企業でなくても、魅力ある中小企業があれば、若者の働き方への考えが変化している中で、学生を引き留められるのではないでしょうか。北九州市にも企業への誘致や企業育成への努力が求められています。

「つながりづくりによる生きがい創出」
衣食住が揃うと、次に生きがいが必要です。いくら長生きしても、死ぬことが怖かったら良くありません。老いを豊かに生きるためには仲間が必要です。血縁も地縁も薄くなる中、新たな「縁づくり」が欠かせません。わが社では温浴施設「日王の湯」(ひのうのゆ)を運営しています。ここでは毎日訪れる地域の方々や、子ども温泉、子ども食堂等を通じた湯縁(ゆえん)を提供しています。また主催する囲碁大会では「碁縁(ごえん)」を、俳句コンクールでは「句縁(くえん)」を。映画イベントにおいては「映縁(えいえん)」を提供しています。新たに愛する人を亡くした方々が、集い語り合う場を提供し「悲縁(ひえん)」を共有する場になっています。本業である冠婚葬祭互助会は元来「相互扶助」をコンセプトにしています。「利他の精神」をもち、多彩な縁を巡らせることで、豊かな老後を過ごせるまちづくりができればと思っています。

「コンパッションを重視した街づくり」
日本一の高齢化都市であることに加え、ホームレス支援やシングルマザー家庭支援も北九州の特徴です。わたしは、全国で困っている人がいたら、みんな「北九州へ行こう!」を合言葉にしてもらえばいい。死別の悲嘆に暮れている方々も、グリーフケア都市としての北九州に来ればいい。北九州市がその「強み」を生かせば、世界一の都市になれると本気で思っています。その未来像は「コンパッション都市」です。これは老い、病、死、喪失を受けとめ、支え合うコミュニティのことです。まさに、北九州市が目指すべき都市像だと考えます。わが社では、自死の要因として、配偶者の死があるケースも多いため、ご遺族の立ち直りを支援するグリーフケアを推進してきました。またNPO法人を設け、地域の独居高齢者らが集う「隣人祭り」を開き、孤独死防止を図ってきました。すべては、コンパッションに基づいた企業活動です。高齢者特区にして、孤独死しない隣人都市を作り、全国から独居老人が北九州に集まってくれば人口も増えます。さらに、困窮者やシングルマザー支援も充実させ、「困ったら北九州に行ってみよう」という街にする。そうすれば、北九州市は世界一のコンパッション都市となるでしょう。
ぜひ、北九州市を「コンパッション都市」に!

毎日新聞」2022年10月30日朝刊

コンパッション!』(オリーブの木

 

2024年4月1日  一条真也