「きっと、それは愛じゃない」

一条真也です。
東京に来ています。20日は業界団体の会議が15時開始だったので、その前にヒューマントラストシネマ有楽町で映画「きっと、それは愛じゃない」を観ました。宗教・結婚・家族といった問題を扱ったラブストーリーで、現在のわたしのテーマともぴったり合って感動しました。今年、東京で観る最後の映画でしたが、素晴らしかったです!

 

映画ナタリーの「解説」には、「『ブリジット・ジョーンズの日記』を手がけた製作陣が、リリー・ジェームズを主演に迎えたラブストーリー。ロンドンを舞台に、運命の相手を待ちわびるドキュメンタリー監督が、幼なじみのお見合い結婚に密着する様子を描く。監督はシェカール・カプール。共演はシャザド・ラティフ、シャバナ・アズミ、エマ・トンプソン、サジャル・アリーら」とあります。

 

映画ナタリーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「ドキュメンタリー監督のゾーイは、幼なじみのカズがお見合い結婚をすることを知る。親が選んだ相手と結婚しようとする彼に興味を持ったゾーイは、結婚までの道のりを追うことにする。恋愛がうまくいかないゾーイは、カズの婚約報告に受けて自分の思いに気づく」


主演のリリー・ジェームズは現在34歳ですが、25歳のときに「シンデレラ」(2015年)で主役のシンデレラを演じています。ディズニー映画でしたが、美しさと想像力と魔法が詰まったモダン・クラシックな作品に仕上がっていました。エラ(リリー・ジェームズ)はまま母(ケイト・ブランシェット)と義理の姉たちにいじめられていたが、自分の運命をつかみ取ろうと決心。お城での舞踏会に参加し、フェアリー・ゴッドマザー(ヘレナ・ボナム・カーター)の助けとガラスの靴のおかげで、魔法が現実のものとなります。まだディズニーがポリコレに手を染めていない頃の作品であり、リリー・ジェームズが美しかった!

 

「きっと、それは愛じゃない」では、リリー・ジェームズ演じる主人公のゾーイが姉の子どもたちに『シンデレラ』の絵本を読んであげるシーンが登場します。映画にはシンデレラだけでなく白雪姫の名前も挙げられますが、いずれにせよ素敵な王子様が迎えに来てくれて“ハッピーエンド”となったプリンセスたちです。でも、現実の世界は童話のように甘くありません。理想の結婚相手は大変な努力の末にGETすべきものなのです。


ゾーイは幼なじみで医師のカズ(シャザド・ラティフ)がお見合い結婚をすると知って、ドキュメンタリー映画を製作することを思いつきます。カズはゾーイのファーストキスの相手であり、今でも淡い恋心を抱いています。でも、カズは親が薦める22歳の娘と結婚するのでした。スカイプでは大人しかった娘は、じつは奔放な性格で、マリファナは吸うし、何よりも愛し合う恋人がいました。そんなことを知らないカズは、「現実主義と情熱の間に永遠の幸せがある」「結婚に、情熱や相性は関係ない」と言います。


カズはイギリス生まれですが、イギリス人ではありません。彼はパキスタン人であり、ムスリムイスラム教徒)です。ゾーイが「絶対にバレないとしたら、結婚後も浮気する?」と質問したところ、カズは「しないよ。神様が見ているから」と即答します。イスラム教の結婚(ニカー)は、まず契約があり、結婚にあたって契約書を作成します。契約書の作成から披露宴の開催が結婚式の流れです。ムスリムでない人がムスリムと結婚する場合、「ニカー」を行う前に、まずイスラム教徒になる必要があります。シャハーダ信仰告白)→ニカー→披露宴となりますが、映画ではこのあたりの流れが詳しく描かれていて、とても興味深かったです。イスラム儀式の勉強になりました。

 

最初は、幼ななじみのカズのお見合い結婚を応援するつもりだったゾーイでしたが、次第に自分の本当の気持ちに気づきます。そして、その気持ちを正直にカズに告白します。わたしは、この映画はウェルビーイングの物語であると思いました。持続的幸福としてのウェルビーイングは「ありのままに」生きることが大切だからです。また、ウェルビーイングにおいては結婚や夫婦生活が重要になってきます。単に「幸せである」ハピネスとは違い、「幸せであり続ける」ウェルビーイングを実現するためには、自分に合った結婚相手の存在が欠かせません。カズは「結婚に、情熱や相性は関係ない」と言いましたが、結婚には情熱が必要であり、夫婦は何よりも相性が大切です。恋愛結婚であるか見合い結婚であるか、そんなことは関係ありません。見合い結婚だって、立派な縁。幸せな結婚生活のために最も大切なのは、夫と妻の相性が良いことなのです!

ウェルビーイング?』(オリーブの木

 

もちろん、相性が求められるのは夫婦だけでなく恋人でもそうですが。そして、相性の良さを測るには、同じ映画を好きになれるかどうかが重要ではないかと思います。ブログ「枯れ葉」には映画館で並んで映画鑑賞する男女が登場しましたが、「きっと、それは愛じゃない」にも登場しました。映画館で並んで映画を観ることは昔からデートの王道です。それは、男女の相性を考える上で最も大切な「価値観」というものが浮き彫りにされるからではないかと思うのです。なぜなら、映画とは総合芸術であり、そこにはあらゆる価値観や人生観や死生観が詰め込まれているからです。宗教が違っても、民族や国家が違っても、年齢が違っても、同じ映画を観て感動できる男女はきっとうまくいく。1本の映画には、観る者の価値観をくっきりと浮き彫りにする力があるのです。結婚するとき、何よりも確認すべきなのは相手の職業や年収ではなく、価値観ではないでしょうか? わたしは、そう思います。


男女の相性を測る最高の方法とは?(映画.comより)

 

2023年12月21日 一条真也