大川隆法氏、死す!

一条真也です。
2日は、朝から母校である小倉高校の評議委員会に出席しました。会議の最後、わたしが評議委員会の委員長に就任することが決定しました。その直後、新興宗教団体「幸福の科学」の創始者で総裁の大川隆法氏の訃報に接し、大変驚きました。ブログ『現代スピリチュアリティ文化論』には大量のアクセスが寄せられていますが、まさかスピリチュアリティの本の書評ブログをUPした日に現代日本における「スピリチュアルの巨人」が亡くなるとは!


ヤフーニュースより

 

幸福の科学」の関係者によれば、大川隆法氏は一昨日に東京・港区の自宅で倒れ、病院に搬送されました。2日午前、死亡が確認。66歳でした。死因は分かっていないそうです。FNNの取材に対して、教団側は、「大川総裁の現在の状況についてはコメントを差し控える」としているとか。ブログ『日本の新宗教50 完全パワーランキング』で紹介したように、幸福の科学創価学会と並ぶ有名教団です。そのトップの死去なだけに、宗教界の混乱は避けられないでしょう。

ヤフーニュースより

 

大川氏は、1956年(昭和31年)、徳島県生まれ。東京大法学部を卒業後、商社「トーメン」に勤務後、1987年に幸福の科学を設立。同年に出版した著書『太陽の法』がベストセラーとなり、その後も多くの著書を出版。公称1100万人の信者獲得につなげたとされます。劇場映画公開による広報活動にも力を入れました。2009年には政界進出を目指して政治団体幸福実現党」を設立。この年の衆院選に出馬し、落選。その後、学校法人「幸福の科学学園」を立ち上げました。さらに幸福の科学大学を設置する計画を進めていましたが、2014年に文部科学省の大学設置・学校法人審議会が開設を不可と判断。

 

 

ブログ『幸福の科学』にも書いたように、一時、わたしは「幸福の科学」の信者ではないかなどと誤解されて困惑していました。グーグル検索しても、わたしと「幸福の科学」との関係を示す記事など皆無です。ただ、元・幸福の科学の信者と名乗る匿名ブロガーが、東京大学名誉教授の矢作直樹氏とわたしの共著である『命には続きがある』(PHP研究所)を取り上げて、「パラパラと読んでみて思ったのは、『幸福の科学』とは大差無いレベルだということ」などと毒づいているぐらいでした。

命には続きがある』(PHP研究所)

 

この際、もう一度、はっきり言っておきます。
わたしは、「幸福の科学」の信者でも会員でもありません。わたしが社長を務める株式会社サンレーの本社のすぐ近くに「幸福の科学」の小倉支部がありますが、一度も訪れたことがありませんし、先方から一度も勧誘を受けたこともありません。「幸福の科学」に限らず、わたしは、いかなる特定の宗教団体の信者でも会員でもないことを、ここに明言しておきます。

葬式に迷う日本人』(三五館)

 

それにしても、なぜ誤解を招いたのか? いくつかの理由が推測できますが、まずは、宗教学者島田裕巳氏との共著『葬式に迷う日本人』(三五館)を上梓したことが理由として考えられます。島田氏は「オウム真理教」との関係が深く、反対に「幸福の科学」には批判的な立場であったことで知られています。「葬儀」をテーマにした島田氏とわたしの直接対決が「オウム真理教」と「幸福の科学」の代理戦争のようにとらえられた可能性があります。

永遠の知的生活』(実業之日本社

 

それから、幸福の科学出版から刊行されている雑誌「ザ・リバティ」の取材をわたしが何度か受けたことも理由の1つかもしれません。でも、「ザ・リバティ」は信者や会員以外の文化人や芸能人がバンバン登場しているので、別にインタビューを受けたからといって、わたしが信者と誤解されるいわれはないのですが・・・・・・。テレビにもよく出ている有名な人たちが「ザ・リバティ」には毎号登場していました。たとえば、わたしが『永遠の知的生活』(実業之日本社)で対談をさせていただいた故渡部昇一先生などもよく登場されていました。もちろん、渡部先生は「幸福の科学」の信者ではありませんでしたね。


「ザ・リバティ」2015年9月号

 

それと、わたしは「ザ・リバティ」の取材にしてもいつも必ず受けるわけではありません。たとえば、「死」とか「読書」とか「人間関係」をテーマとした特集では、拙著の告知をするという目的もあって、インタビューを受けました。しかし、「UFO」とか「宇宙人」に関するインタビューの依頼が来たときは、きっぱりとお断りしました。それは、わたしのテーマではないからです。なぜ、わたしが「ザ・リバティ」の取材を受けるようになったのかというと、幸福の科学出版に知人がいたからです。


なぜ、知人がいたのかというと、その昔、東急エージェンシーを退職したばかりのわたしが「ハートピア計画」というプランニング会社を立ち上げた頃、第1回「大川隆法IN東京ドーム」の演出企画に関する仕事をお受けしたことがあるからです。その仕事は電通と一緒でしたが、亡くなられた作家の景山民夫さんとともに、当時は紀尾井町にあった「幸福の科学」の本部会議室には何度もお伺いしました。清水富美加さんの件でテレビによく出ていた「幸福の科学」グループ専務理事で広報担当の里村英一さんも当時から知っていました。電通東急エージェンシーといえば、東京オリンピックパラリンピックを巡る談合事件で東京地検特捜部から独占禁止法違反の罪で仲良く起訴されていましたね。博報堂も一緒でしたが、大手広告代理店のビジネスが大きな曲がり角に来たことを痛感しています。

ハートビジネス宣言』(東急エージェンシー

 

大手広告代理店だけでなく、巨大宗教団体のビジネスも行き詰まっていると思えます。時代は大きく変わりました。しかし、当時のわたしは日本でも唯一といってもよい「宗教プランニング」を業としていました。その内容は、拙著『ハートビジネス宣言』(東急エージェンシー)所収の「宗教コンサルティングの思想」に詳しく書かれています。ですから当時のわたしは、「幸福の科学」に限らず、ありとあらゆる宗教団体や神社や寺院の関係者とお会いしていました。「法の華三法行」の福永法源氏に会ったこともあります。このときは東急エージェンシー・インターナショナルの依頼でした。結局、「法の華三法行」とは仕事をしませんでしたが、要するに、当時のわたしは宗教に強いプランナーとして広告代理店の助っ人的な立場だったのです。その頃の経験は、冠婚葬祭業という現在の仕事に大いに役立っていることを正直に告白いたします。

 

 

わたしが「幸福の科学」の信者でも会員でもないと言いましたが、だからといって、同教団にまったく関心がないわけではありません。そもそも、里村専務理事や「ザ・リバティ」の編集者の方々をはじめ、とても良い方というか、心の純粋な人間的に素晴らしい方が多いです。それと、「幸福の科学」の創始者である大川隆法氏の著書は、最近のものこそ読んでいませんが、初期の『太陽の法』『黄金の法』『永遠の法』の三部作は興味深く読みました。わたしは、創価学会の『人間革命』、生長の家の『生命の実相』、GLAの『心の発見』など、新宗教関係の本は部分的ながら、かなり読みました。それらの本と比べても、大川氏の三部作は完成度が高い印象がありました。同じ頃に世間を賑わせていたオウム真理教麻原彰晃の著書も何冊か読みましたが、「本として、あまりにもレベルが低い」と感じました。一方の大川氏の著書には「この教祖は教養があるな。かなりの読書家に違いない」と思いました。



そう、わたしは「幸福の科学」を宗教団体というよりも、教養団体、あるいは読書団体として見ていたのです。実際、「幸福の科学」の会員さんには読書家が多いです。幸福の科学出版から「教養の大陸」シリーズというのが出ているのですが、その創刊ラインナップはサミュエル・スマイルズ著『自助論 西国立志編』、R・W・エマソン著『エマソンの「偉人論」』、内村鑑三著『代表的日本人』、福澤諭吉著『学問のすすめ』の5冊で、まさに「教養ど直球!」といった感じです。わたしは全部読みましたが、素晴らしい編集でした。これらの本は、いわゆる古典です。人類における古典中の古典といえば、『論語』や『聖書』や『コーラン』といった聖典が思い浮かびます。聖典をはじめとした古典や良書を読むことは、宗教の教義よりも人をハートフルにするように思います。

論語と冠婚葬祭』(現代書林)

 

来週、わたしは、神道研究の第一人者である鎌田東二先生と「神道と日本人」をテーマに対談いたします。昨年は、儒教研究の第一人者である加地伸行先生と「儒教と日本人」をテーマに対談し、『論語と冠婚葬祭』(現代書林)を上梓しました。いずれ、仏教界の方とも「仏教と日本人」をテーマに対談する予定です。わたしの本業である冠婚葬祭やグリーフケアは、あらゆる宗教と密接に関わっています。グリーフケアの師である島薗先生は、新宗教研究の第一人者として知られますが、わたしは島薗先生や鎌田先生や加地先生から多くの学びを得ました。

心ゆたかな社会』(現代書林)

 

わたしは特定の宗教団体の会員や信者には絶対になりませんが、あらゆる宗教を「いいとこどり」して、「心ゆたかな社会」としてのハートフル・ソサエティを創造する一助になりたいと願っています。じつは「幸福の科学」というコンセプト自体は、わたしにとって最も関心度の高い考えです。でも、実在する宗教団体と混同されるのを恐れて、これまで、わたしは「幸福の科学」という言葉をあまり使ってきませんでした。でも、これからは「ウェルビーイング」や「コンパッション」といったキーワードを窓として、幸福の科学というものを自分なりに追求して行きたいと思っています。最後に、故大川隆法氏のご逝去に際し、謹んで哀悼の誠を捧げさせていただきます。合掌。


2023年3月2日 一条真也