『論語塾』

一条真也です。
わたしは、これまで多くのブックレットを刊行してきましたが、一条真也ではなく、本名の佐久間庸和として出しています。いつの間にか44冊になっていました。それらの一覧は現在、一条真也オフィシャル・サイト「ハートフルムーン」の中にある「佐久間庸和著書」で見ることができます。整理の意味をかねて、これまでのブックレットを振り返っていきたいと思います。 


論語塾』(2013年6月刊行)

 

今回は、『論語塾』をご紹介します。2013年6月に刊行したブックレットです。西日本リビング新聞社が発行する「リビング北九州」2012年5月26日号より2013年4月27日号の連載エッセイをまとめたものです。このブックレットの目次構成は、以下の通りです。

 

孔子とは?」

『論語』への招待

人は学問で成長する

何をするにも、まずは健康

和とは何か

幸せに生きるために

友人について考える

信用される人になろう

リーダーになるために

親に対する礼とは

親の葬儀は人の道

人生を設計する

思いやりがすべての基本


社会の中で人間がどう幸せに生きるか

 

わたしは、紀元前551年に生まれた孔子を人類史上で最も尊敬しています。ブッダやイエスも偉大ですが、孔子ほど「社会の中で人間がどう幸せに生きるか」を考えた人はいないと思います。その"人間通"である孔子とその門人の言行録が『論語』です。よく、『論語』を孔子が書いた著書だと思っている人がいますが、それは間違いです。あくまで孔子の言葉や行動を弟子たちが記録したものなのです。


「リビング北九州」に連載された「論語塾」のコラム

 

論語』は、千数百年にわたって読み継がれてきました。意識する、しないにかかわらず、日本人の心にも大きな影響を与えてきたと言えるでしょう。特に江戸時代になって徳川幕府儒学を奨励するようになると、必読文献として、武士階級のみならず、庶民の間にも広く普及しました。わたしは大学の客員教授として、これまで多くの中国人留学生や日本人学生たちに『論語』を教えてきました。わたしは、「これ以上は無理なほど、コンパクトな論語入門を書きたい」と思って、このブックレットを刊行しました。『論語』に登場するさまざまな言葉を紹介しながら、「社会の中で幸せに生きる」方法について考えてみました。


「リビング北九州」2013年4月27日号

 

ブログ「第3回『孔子文化賞』授賞式」で紹介した授賞式では、わたしが第2回「孔子文化賞」の受賞者として檀上に上がり、スピーチしました。そこで、わたしは『論語』への熱い想いを述べました。「不惑」と呼ばれる40歳を迎えるにあたり、何をすべきかといろいろ考えましたが、「不惑」なる言葉が『論語』に由来することから、『論語』を精読することにしました。当時、サンレーの社長に就任したばかりでもあり、冠婚葬祭の根本思想としての「礼」を学び直したいという考えもありました。学生時代以来、久しぶりに接する『論語』でしたが、一読して目から鱗が落ちる思いがしました。というのも、当時の自分が抱えていた、さまざまな問題の答えがすべて書いてあるように思えたのです。江戸時代の儒者である伊藤仁斎は「宇宙第一の書」と呼び、安岡正篤は「最も古くして且つ新しい本」と呼びましたが、本当に『論語』1冊あれば、他の書物は不要とさえ思いました。


論語』への熱い想いを述べました

 

そこで、40になる誕生日までに『論語』を40回読むことに決めました。それだけ読めば、内容は完全に頭に入ります。以後は、誕生日が来るごとに再読することにします。つまり、わたしが70歳まで生きるなら70回、80歳まで生きるなら80回、『論語』を読んだことになります。何かの事情で私が無人島などに行かなくてはならないときには迷わず『論語』を持って行きます。また、突然何者かに拉致された場合にも備えて、つねにバッグには『論語』の文庫本を入れておきます。まさに、「論語バカ一代」です! こうすれば、もう何も怖くないし、何にも惑いません。何のことはない、わたしは「不惑」の出典である『論語』を座右の書とすることで、「不惑」を実際に手に入れたのです。

 

 

2022年7月17日 一条真也