「牛首村」

一条真也です。
18日の夜、この日公開したばかりの日本映画「牛首村」を観ました。ブログ「犬鳴村」ブログ「樹海村」で紹介した清水崇監督による「恐怖の村」シリーズ第3弾ですが、前2作と同様、またしても駄作でした。嗚呼、無情!

 

ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「『犬鳴村』『樹海村』に続いて清水崇監督が心霊スポットをテーマに撮り上げる「恐怖の村」シリーズ第3弾で、モデルのKoki,の女優デビュー作となるホラー。自分にそっくりの少女の動画を見たヒロインが、とある村の奇妙な風習にまつわる恐ろしい体験に巻き込まれる。Koki,がヒロインと自分にうり二つの少女の二役を演じ、『イノセント15』などの萩原利久や『仮面ライダーゼロワン』シリーズなどの高橋文哉、『あの群青の向こうへ』などの芋生悠らが共演する」

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ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「東京に暮らす女子高生の雨宮奏音(Koki,)は、心霊動画に映る自分にそっくりの女子高生を見つける。その少女は牛の首のマスクを強引に付けさせられ、廃虚に閉じ込められようとしていた。胸騒ぎを覚えた奏音は、動画が撮影された坪野鉱泉へ向かい、『牛首村』と呼ばれる村に残る風習の存在に凍りつく」


ホラー映画には目のないわたしですが、これはちょっと酷すぎますね。Koki,をはじめとした俳優陣は別に悪くないのですが(萩原利久はダメ)、とにかくシナリオが悪すぎる。昭和の田舎の遊園地のお化け屋敷というか、どうしようもないチープ感が全篇に漂っています。これなら前作の「樹海村」や前々作の「犬鳴村」の方がマシだったと思うのは、わたしだけではありますまい。あまりにも面白くなくて、途中で寝てしまったほどです。それだけ緊張感がない、つまりは怖くなかったということです。

 

この映画のヒロインはKoki,ですが、ダークヒロインと呼ぶべき呪われた女性が登場します。それが「リング」の貞子の亜流みたいなキャラなので、呆れてしまいました。Jホラーを代表するのは中田秀夫監督の「リング」シリーズと清水祟監督の「呪怨」シリーズが双璧です。この「牛首村」のメガホンを取ったのは清水監督ですが、「一体どうしちゃったの?」と言いたくなります。よりによって、貞子もどきの存在を出すのはまずいでしょう。


映画初主演のKoki,ですが、心配していたほど演技は下手ではありませんでした。というか、普通に上手いです。さすがはキムタクの娘だと思いましたが、スクリーンに最初に映し出されたときは「本当に、キムタクにそっくりだなあ!」と驚きました。まるで、キムタクが女装してJKになっているみたいでした。その後もKoki,の顔がアップになるたびに「やっぱり、キムタクに似てる」と思ってしまい、ストーリーを追う邪魔になるほどでした。ただ、恐怖におびえる表情や絶叫シーンは良かったです。もっと上質のホラーやスリラーへの出演を続ければ「日本の絶叫クイーン」も夢ではありません。


ストーリーについて書くのはネタバレになるので控えますが、「自分にうり二つの人間」がいれば、普通誰でも考えるアノ可能性がありますよね。それを本当にオチに使ってしまうところが、どうしようもなくショボさを感じさせる脚本でした。まったく、Koki,の無駄遣いです。牛首村は石川県の白山市に実在するそうです。地名としての「牛首」の名は養老元年、白山を開山された越の大徳、泰澄大師が、村の守護神として牛頭天王十二神将などの神々を祀り、後に牛頭から語源を得て「牛首村」となったと伝えられています。ブログ「犬鳴村」でも書きましたが、特定できる実在の場所をホラーの舞台にすることは実際の偏見や差別につながるので避けるべきだと思います。



この映画では、惨劇の舞台となる牛首村の場所が石川県ではなく、富山県某所にある「坪野鉱泉」となっています。1970年頃に「ホテル坪野」として開業されましたが、ある事件を機に82年に廃業。経営者が失踪し誰も手をつけなくなってしまったと噂されている廃ホテルです。93年までに隣接されていた施設が解体され、現在まで残っているひとつの建物が「坪野鉱泉」と称され、地元の若者が訪れる肝試しスポットと化しました。


ホテル廃業以降、現在まで“北陸最恐の心霊スポット”として恐ろしい都市伝説が絶えず、今では立ち入り禁止となっているそうです。かつて霊能者の冝保愛子が霊視し、相手があまりにも強大な悪霊ゆえに除霊を諦めたとの逸話も残っています。ここが実際に心霊スポットがどうかは知りませんが、実在の場所なら近隣の住民にも迷惑なので、ホラー映画の舞台にするべきではないでしょう。あと、廃ホテルの無残な現状を見て、わたしは「コロナでこれからホテルがどんどん倒産したり閉館するだろうから、日本中に心霊スポットとしての廃ホテルが増えるかもしれないな」と思いました。一日も早い感染の終息を願っています。

 

2022年2月19日 一条真也