『死が怖くなくなる読書』

一条真也です。
16日の夕方、東京から北九州に戻りました。
63冊目の「一条真也による一条本」をお届けします。今回は、『死が怖くなくなる読書』(現代書林)です。サブタイトルは、「『おそれ』も『かなしみ』も消えていくブックガイド」で、2013年8月に刊行されました。

死が怖くなくなる読書』(現代書林)

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本書の帯

 

本書の表紙カバーには、草原に置かれた本のページが風でめくれている絵が描かれ、帯には「アンデルセンから村上春樹まで・・・」「死生観は究極の教養である!」「『死』があるから『生』がある その真理に気づかせてくれる50冊」と書かれています。

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本書の帯の裏

 

帯の裏には、「長い人類の歴史の中で、死ななかった人間はいませんし、愛する人を亡くした人間も無数にいます。その歴然とした事実を教えてくれる本、「死」があるから「生」があるという真理に気づかせてくれる本を集めてみました。本書を最後まで読まれたならば、おだやかな『死ぬ覚悟』を自然に身につけられることと思います。それとともに、あなたが『生きる希望』を持って下さったなら、著者としてこれほど嬉しいことはありません。(はじめに)」と書かれています。さらにカバー前そでには、「読書という行為には、グリーフケア=死別の悲しみを癒す機能がある」と書かれています。

 

これまで数え切れないほど多くの宗教家や哲学者が「死」について考え、芸術家たちは死後の世界を表現してきました。医学や生理学を中心とする科学者たちも「死」の正体をつきとめようとして努力してきました。まさに死こそは、人類最大のミステリーであり、全人類にとって共通の大問題なのです。

 

なぜ、自分の愛する者が突如としてこの世界から消えるのか、そしてこの自分さえ消えなければならないのか。これほど不条理で受け容れがたい話はありません。本書には、その不条理を受け容れて、心のバランスを保つための本がたくさん紹介されています。本書の読了後、そのことをよく理解されると思います。本書では、あなた自身が死ぬことの「おそれ」と、あなたの愛する人が亡くなった「かなしみ」が少しずつ溶けて、最後には消えてゆくような本を選びました。

 

死別の悲しみを癒す行為を「グリーフケア」といいますが、もともと読書という行為そのものにグリーフケアの機能があります。たとえば、わが子を失う悲しみについて、教育思想家の森信三は「地上における最大最深の悲痛事と言ってよいであろう」と述べています。じつは、彼自身も愛する子どもを失った経験があるのですが、その深い悲しみの底から読書によって立ち直ったそうです。

 

本を読めば、この地上には、わが子に先立たれた親がいかに多いかを知ります。また、自分は一人の子どもを亡くしたのであれば、世間には子を失った人が何人もいることも知ります。これまでは自分こそこの世における最大の悲劇の主人公だと考えていても、読書によってそれが誤りであったことを悟るのです。本書では、5つの章に分けて、50冊の本を紹介しています。以下の通りです。

 

第1章 死を想う
メメント・モリ藤原新也 

「死」の博学事典荒俣宏監修 
死にカタログ寄藤文平 
あした死ぬかもよ?』ひすいこたろう 
「死ぬのが怖い」とはどういうことか』前野隆司 
日本人の死のかたち』波平恵美子 
日本人の死生観を読む島薗進 
わたしが死について語るなら山折哲雄 
そうか、もう君はいないのか城山三郎
ぼくがいま、死について思うこと椎名誠 
第2章 死者をみつめる
今日は死ぬのにもってこいの日』ナンシー・ウッド 

先祖の話柳田國男 
災害と妖怪』畑中章宏
恐山』南直哉 
遺品柳原三佳 
遺体石井光太 
納棺夫日記青木新門 
悼む人天童荒太
降霊会の夜浅田次郎 
アミターバ 無量光明玄侑宗久 
第3章 悲しみを癒す
おかあさんのばか』写真:細江英公、詩:古田幸 

人生で大切な五つの仕事』井上ウィマラ 
悲しんでいい』郄木慶子 
悲しむ力』中下大樹
僕の死に方金子哲雄 
伴侶の死平岩弓枝編  
さよならもいわずに』上野謙太郎 
古事記ワンダーランド鎌田東二 
人は死なない』矢作直樹 
天使のまなざし』ジャッキー・ニューカム 
第4章 死を語る
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年村上春樹 

小暮写眞館宮部みゆき 
人質の朗読会小川洋子 
スウィート・ヒアアフター吉本ばなな 
その日の前に重松清 
白石一文 
ナミヤ雑貨店の奇蹟東野圭吾 
永遠の0(ゼロ)百田尚樹 
ツナグ辻村深月 
盆まねき富安陽子
第5章 生きる力を得る
幸せの遺伝子村上和雄 

ありがとうの花山元加津子 
こころの手足 中村久子自伝』中村久子 
夜と霧』V・E・フランクル 
人魚の姫アンデルセン 
マッチ売りの少女アンデルセン 
青い鳥メーテルリンク 
銀河鉄道の夜宮沢賢治 
星の王子さま』サン=テグジュぺリ 
また会えるから一条真也(あとがきに代えて)

f:id:shins2m:20210906200659j:plain死を乗り越える読書ガイド』(現代書林)

 

本書を最後まで読まれた方は、おだやかな「死ぬ覚悟」を自然に身につけられることと思います。それとともに、あなたが「生きる希望」を持って下さったなら、著者としてこれほど嬉しいことはありません。本書は、「愛する人を亡くされた親しい方へのプレゼントにも最適」だと広く好評を博しました。なお、巻末の拙著『また会えるから』が長らく品切れ状態なので外し、代わりにロングセラー発売中の拙著『愛する人を亡くした人へ』を加えた本書のアップデート版が、『死を乗り越える読書ガイド』のタイトルで2020年8月に現代書林から刊行されました。

 

2021年9月17日 一条真也