『図解でわかる!ブッダの考え方』 

一条真也です。
東京に来ています。12日は全互協の正副会長会議、理事会、冠婚葬祭文化振興財団の理事会などに出席しました。翌13日に北九州に戻ります。
58冊目の「一条真也による一条本」をお届けします。今回は、『図解でわかる!ブッダの考え方』(中経の文庫)です。ドラッカーニーチェなどでベストセラーを連発した中経の文庫「図解でわかる!」シリーズの1冊です。

図解でわかる!ブッダの考え方
(2012年5月5日刊行)

 

本書のカバー表紙には黄金の仏陀像の写真が使われ、「人から『苦』をなくすために、ブッダは何を考えたのか」「不妄念 心が修まっていれば、人目は気にならない」「小欲 あまり高い目標を追い求めると破滅する」と書かれています。

 

カバー裏表紙には、「苦しまずにすむにはどうすればいいのか」「ブッダは『苦』のことを考え抜いた人でした。死、愛、欲などの人間の感情すべてから『苦』は生まれます。『苦』から逃れ、心が満ちて生きられる方法。それがブッダの考え方です。ブッダが悟った『四法印』、苦しみの仕組み『十二縁起』などを知り、心穏やかに生きられる思想を身につけましょう!」と書かれています。

 

また、カバー前そでには、「ブッダの思想は、先行きのまったく見えない時代を照らす『普遍的な考え方』!」「◎仏教は、正義より寛容の徳を大切にする」「◎極端なことをしない『中道』がいちばん悟りに近い」「◎私たちは常に不確かな関係の中で生きている」と書かれています。

 

本書の「目次」は、以下のようになっています。
「まえがき」
   序章 ブッダの人生を変えた出来事
足を怪我したブッダ
ブッダの肉声が聞こえてくる
神とは人間よりもすぐれた者
悪魔とは、自らの煩悩
青年期を生きた古代人のブッダ
第1章 ブッダの基本的な考え方
1.4つの真理に行き着いたブッダ

       ブッダは人類最初の宇宙人
       3分でわかるブッダの考え方の基礎
       苦しみの原因からの解消法
       仏教の根本の教え「四法印
       弟子に伝えるときにひと工夫
       どんな修行をすればいいの?
2.ブッダが否定してきたもの
       「無分別智」という考え方
       分別の代表は比較
       生死の問題も、「老・死なし」とした
       抽象論を避けたブッダ
       「彼岸」と「此岸」
       六波羅密の思想
       ブッダが考えた世の中の構造
3.ブッダが行き着いた「関係」
       縁と空の世界
       縁起とは何か
      「空」と「無」の違い
       世の中はすべて有縁
4.ブッダの幸福観
       足るを知ることで、人は幸福になれる
       幸福を望みすぎることも苦を呼ぶ
       比較してしまうと幸福はなくなる
【コラム】牛(幸福)を求めた男の物語
5.ブッダの恋愛観
       ブッダは愛されも苦を生むものとした
       ブッダはセックスをどう考えていたのか
【コラム】日常生活の楽しみ方を提案
6.ブッダが説く人間関係
       人間関係を安らげるブッダの考え方とは
7.ブッダの死生観
       ブッダは死をどうとらえていたのか
       死は不幸ではない
       ブッダは「葬式無用」と言った?
       7日間の供養が行われた
       禅の僧侶・達磨の四聖句【教外別伝】
第2章 ブッダ現代社会を考える 
現代日本人の中のブッダ
「足るを知る」ということ
感謝こそ、ブッダの考え方の真髄
花は一所懸命に咲いているだけ
「環境問題」をも考えたブッダ
命を食べない?
現代社会でも実現できていない「平等」
【コラム】日本の仏教 ブッダ聖徳太子
【コラム】ブッダを深く知るためのブックガイド
禅の僧侶・達磨の四聖句【不立文字】
第3章 ブッダのプロフィール 
ブッダは王子として生まれた
ブッダの悟り
ブッダの最期は美しい
仏教の開祖としてのブッダ
禅の僧侶・達磨の四聖句【直指人心】
第4章 聖人としてのブッダ 
ブッダとイエスの類似点
似ているブッダとイエスの教え
ブッダとイエスの相違点
六師外道というライバルがいた
禅の僧侶・達磨の四聖句【見性成仏】
第5章 ブッダの言葉たち 
ブッダのことば』を聞く
人間愛に満ちたブッダの言葉
さまざまな仏典に残る言葉たち
【コラム】大乗仏教と上座仏教
【コラム】仏教と書物
「あとがき」
ブッダが生涯にめぐった場所」
ブッダの生涯」
「仏教の歴史」
「参考文献」

ブッダとイエス」を比較しました 

 

わたしは、現代日本人はブッダの本当の考え方を知るべきであると思います。わたしたちは、大きな危機を迎えています。戦争や環境破壊などの全人類的危機に加え、日本人は東日本大震災という未曾有の大災害に直面しました。想定外の大津波と最悪レベルの原発事故のショックは、いまだ覚めない悪夢のようです。そんな先行きのまったく見えない時代で、必要とされる考え方とは何でしょうか。それは何よりも、地域や時代の制約にとらわれない普遍性のある考え方ではないかと思います。普遍性のある考え方といえば、わたしにはブッダ孔子ソクラテス、イエスといった世界の「四大聖人」の名が思い浮かびます。

 

ブッダのことば-スッタニパータ (岩波文庫)
 

 

ブログ『ブッダのことば』にも書きましたが、わたしは、『スッタニパータ』という原始仏典の翻訳書をよく読みます。実際のブッダが生前中に残したとされる言葉を集めた本ですが、わたしはそれを古典と思って読んだことは一度もありません。ブッダの言葉に限らず、たとえば孔子の言葉が集められた『論語』でも、イエスの言葉が記された『新約聖書』でも、ソクラテスの言葉を記録した『ソクラテスの弁明』をはじめとするプラトンの諸著作でも、つねに未知の書物として、それらに接し、おそるおそるそのページを開いてきました。ゆえに、そうした書物に書かれてある聖人たちの言葉は、わたしにとって常に新鮮であり続けています。実際、読むたびに、新しい発見が多いです。

世界をつくった八大聖人』(PHP新書)

 

聖人たちは決して古臭い歴史上の人物などではありません。彼らの思想は今でも生きていいます。彼らの心は現代に生きています。「四大聖人」という発想そのものが非常に日本的であり、そこには「何でもあり」や「いいとこどり」といった心学的要素が見られます。わたしは、四大聖人にモーセムハンマド老子聖徳太子の4人をさらに加えて『世界をつくった八大聖人』(PHP新書)という本を書きました。それらの聖人の中でも、これからの人類社会に最も求められる考え方を残したのがブッダではないかと思います。


図解と文章で、わかりやすい説明を心がけました

 

ブッダは、世界宗教である仏教を開きました。現在、仏教と現代物理学の共通性を指摘する人がたくさんいます極微という最少物質の大きさは素粒子にほぼ等しいとされています。それ以下の単位は仏教でいう「空」しかありません。ですから、「空」をエネルギーととらえると、もう物理学そのものなのです。また、かのアインシュタインは、「相対性理論」によって、物質とは生成消滅するものだということを説きました。これまで隠されていた物質の本性を初めて人類に明かしました。永遠不滅の物質など存在しないという彼の理論は、まさに仏教の「諸行無常」そのものです。このように、ブッダは今から2500年も前に宇宙の秘密を解明しているのです。


四諦」から「八正道」へ

 

それでは、ブッダの考え方はスケールが大きすぎて、現代に生きる一般人にはあまり関係ないのでしょうか。いや、そんなことはまったくありません。ブッダの考え方には、現代に生きるわたしたちが幸せになるためのヒントがたくさんあります。現在、「仏教ブーム」だそうですが、その背景には一神教への不安と警戒が大きくあると思います。キリスト教世界とイスラム教世界の対立は、もはや非常に危険な状態に立ち入っています。この異母兄弟というべきキリスト教イスラム教の対立の根は深く、これは千年の昔から続いている業です。しかもその業の道をずっと進めば、人類は滅びてしまうかもしれません。それを避けるには、彼らが正義という思想の元にある自己の欲望を絶対化する思想を反省して、憎悪の念を断たねばなりません。この憎悪の思想の根を断つというのが仏教の思想にほかなりません。


神儒仏は日本人の「こころ」の三本柱!

 

仏教は、正義より寛容の徳を大切にします。
いま世界で求められるべき徳は正義の徳より寛容の徳、あるいは慈悲の徳です。この寛容の徳、慈悲の徳が仏教にはよく説かれているのです。わたしは、仏教の思想、つまりブッダの考え方が世界を救うと信じています。さらに、わたしたち日本人は特にブッダの考え方を学ぶ必要があります。日本人の「こころ」は仏教、儒教、そして神道の三本柱から成り立っていますが、日本における仏教の教えは本来の仏教のそれとは少し違っています。インドで生まれ、中国から朝鮮半島を経て日本に伝わってきた仏教は、聖徳太子を開祖とする「日本仏教」という一つの宗教と見るべきだと、わたしは考えています。もちろん、日本仏教の中にも素晴らしい教えが多く説かれていますが、本書ではあくまでブッダが説いたとされるオリジナルの教えを豊富な図解入りで解説してみました。


ブッダが見つけた真理

 

これまで知らなかったブッダの本心に気軽に触れて下さい。本書でブッダの考え方を知ったみなさんが、わたしたちの未来に少しでも希望を感じていただけたら、これに勝る喜びはありません。著者冥利に尽きます。なお、本書の「あとがき」には、[http://www.worldpeace-pagoda.net/:title=世界平和パゴダ]および2011年逝去された故ウ・ケミンダ大僧正への想いを書きました。わがメッセージを感じ取っていただければと思います。

 

 

 

2021年5月13日 一条真也