『孔子とドラッカー 新装版』 

一条真也です。
54冊目の「一条真也による一条本」は、『孔子とドラッカー 新装版』(三五館)です。2014年7月20日に刊行されました。2006年刊行の『孔子とドラッカー』は多くの方々に読まれ、版を重ねてきましたが、全面アップデートを目指して新装版を刊行したのです。前回と同じく、「出版界の青年将校」こと中野長武さんが編集してくれました。現在、中野さんは三五館シンシャの代表です。


孔子とドラッカー 新装版
(2014年7月20日刊行) 

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本書の帯

 

新装版のカバーは、コラージュを使ったPOPなデザインになっています。帯に「二人がいつも助けてくれた!」と大書され、「大学で『孔子研究』『ドラッカー研究』の講義を担当、いま最も碩学とされる経営者の、『マネジメント』を理解する『論語』の読み方」というコピーが記されています。もちろん版元が考えたコピーですが、自分のことですので非常に面映いです。特に「碩学」という言葉には、穴があったら入りたい心境です。

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本書の帯の裏

 

帯の裏には「『究極のマネジメント』がここにある!」として、「ドラッカーを最高の経営通、孔子を最大の人間通としてとらえる私は、両者の思想に大きな共通点を発見した。孔子は政治という視点、ドラッカーは経営という視点であったが、ともに『どうすれば、社会の中で人間は幸せになれるか」を追求したのである。この発見をもとに、人間の心を動かす法則を集めてみた」と書かれています。

 

本書の「目次」は、以下のようになっています。
「はじめに――平成心学のために」
第1章 無限のマネジメント

  •    愛と思いやりこそ、すべての基本である
  •    大義名分を持たない者はほろびる
  •    人としてふみおこなうべき道を守る
  •    知識よりも智慧によって自己を知る
  •    あらゆる人に真心で接し、誠を尽くす
  •    人の真の価値は信念によって決まる
  •    生命体の連続性を説く壮大なる観念
  •    年少者の想いと年長者の信頼
  •    無私の強い想いが共感を呼ぶ
  •     それは必ず実現できる
  •     悪を垣間見ることも必要である
  •     天地自然の理を知り、経営理念を持つ
  •     宇宙の一員であるという人間観の発見

第2章 和合のマネジメント

  •    主体性を保ちながら他者と協調する 
  •    山の頂で再会することを誓いあう
  •    ライバルの存在が真の実力を養う
  •    アリストテレスに学ぶ対話教育の可能性
  •    コーチングとは、叱りながら褒めること
  •    黙々と人知れず、心を貯金する
  •    学びは人間学と職業学にきわまる
  •    本、メール、ハガキ、人の心を読む
  •    書くことにより縁と志は強くなる
  •    見えないものを見る眼とは何か
  •    リーダーは言霊を繰り返し語れ
  •    いい話も悪い話も耳傾けて聞け
  •    袖すり合った多少の縁をも生かせ
  •    絶望の中にも生きる意味を見つける
  •    人事を尽くして天命を待つ
  •    自分の運を信じれば、道は開ける
  •    論語と算盤で、義と利は両立する
  •    過失は責任転嫁せず、心から謝罪すべし
  •    時間とは人間の生命そのものである
  •       時代を見通す先見力が必要である
  •    統計的研究が行き詰まりを打開する

第3章 天心のマネジメント

  •    サービスとは、喜びを与えること
  •       とにかく自らの強みに集中せよ
  •       自分の弱さを容認し、弱さに徹する
  •    五感で感じれば、心は豊かになる
  •       心ある謝罪と感謝で信頼を得る
  •     顧客満足だけが企業を存続させる
  •     決して逃げずに正しいことをする
  •     上達して君子に至れば、信を得る
  •     公のための怒りをもって事にあたる
  •     ユーモアと笑顔が福を呼ぶ
  •        感情量の大きさが人を動かす
  •        ひとりの狂者が世界を変える
  •     ミッションこそが企業の命である
  •     天を相手に正々堂々と仕事する

「あとがき――月光経営をめざして」
「引用・参考文献一覧」

 

論語 (岩波文庫)

論語 (岩波文庫)

 

 

孔子とドラッカー』が刊行されてから5年。その間、本書を取り巻く環境は激変しました中国では孔子リバイバルが起こり、たいへんな『論語』ブームとなりました。ブームの火付け役は、北京師範大学の于丹(ユータン)教授です。彼女が中国CCTVの人気番組で『論語』についての講話を行なったところ、大ヒットしたのです。当時は中国の全人口の約半分が視聴しているといわれ、その数はなんと7億人だそうです。そのときの講話をまとめた本は、海賊版も含め、これまでに1000万部以上が売れたとか。中国の最高指導者・胡錦濤国家主席もいたく感動したそうで、多くの中国の人々が『論語』を愛読するようになったといいます。北京オリンピックの開会式では、『論語』の言葉が引用されました。

 

マネジメント[エッセンシャル版]
 

 

 一方、ドラッカーは日本で大ブームとなりました。作家の岩崎夏海氏の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(『もしドラ』)が2009年末にダイヤモンド社から発売されるや、大ベストセラーとなったのです。ライトノベル風にドラッカーのマネジメント理論を解説した同書は、2011年4月現在で電子版とあわせ累計で250万部を突破。NHKでアニメ化、人気アイドルの主演で映画化もされるという一種の社会現象にまでなりました。この『もしドラ』によって、これまでビジネスマンの世界では有名であった「ドラッカー」の名前が一躍、日本中に知れ渡ることになったと言えるでしょう。

 

 

このように時代は、明らかに「孔子」と「ドラッカー」を必要としています。本書『孔子とドラッカー 新装版』は、わたしが発見した多くの両者の共通点を中心に、「人は、必ず心で動く」ということを説いた本です。本書によって、孔子ドラッカーの新しい一面を知っていただくのも嬉しいですが、何より「人間の心」に関心を持っていただければ、著者としても新装版を出した甲斐があると言えます。新装版ではカバーを一新し、ハードカバーをソフトカバーに変えただけではありません。本書の中に出てくる項目の多くを新たに改稿しました。特に、「義」や「智」の一部を書き換えた他、「信」「悌」「欲」「縁」「祈」「謝」「笑」「泣」をほぼ全面改稿、さらには新たに「過」という項目を書き加えました。そして、改稿した項目についてはすべて孔子およびドラッカーの考え方に触れています。まさに、最強モードで生まれ変わったと言えるでしょう。

 

 

 

2021年4月26日 一条真也