『100文字でわかる世界の宗教』(文庫版)

一条真也です。
ついに、25日から4都府県に3回目の緊急事態宣言が発出されました。アナクロそのものである禁酒法と灯火統制には、呆れて物が言えません。そこまでして、東京五輪を開催したいのでしょうか。みんな、トーマス・バッハ教祖(IOC会長)の説く「五輪教」というカルト宗教に洗脳されたように感じるのは、わたしだけではありますまい。
このまま東京五輪が強行開催されれば、世界中から選手や関係者が集まってきます。当然ながら、彼らはさまざまな信仰を持っていることでしょう。
100文字でわかる世界の宗教
(2011年3月36日刊行) 

 

宗教といえば、53冊目の「一条真也による一条本」として、『100文字でわかる世界の宗教』(ワニ文庫)をご紹介します。東日本大震災発生から間もない2011年3月26日の刊行で、2006年刊行の『100文字でわかる世界の宗教』(ベスト新書)の増補改訂版です。 

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本書の帯

 

本書のカバー表紙には、各宗教を象徴するアイコンが描かれ、帯には「キリスト教 聖地エルサレムには、イエスの墓が2カ所ある!?」「イスラム教 イスラム銀行は、なんと金利ゼロ!?」「仏教 密教を日本に伝えた空海最澄は、ケンカ別れをした!?」「教義、タブーから歴史まで、いまどきの宗教事情がわかる!」と書かれています。

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本書の帯の裏

 

カバー裏表紙には、「紀元前から世界の政治、経済、文化、歴史に多大な影響を与えてきた宗教。本書は、キリスト教イスラム教、仏教の『三大宗教』をはじめ、ユダヤ教ヒンドゥー教の教義や開祖、慣習などを、たったの100文字で解説する。『エルサレムは3つの宗教の聖地』『キリストの名前の由来は、ユダヤ教の伝説だった』『スンニ派は慣行重視、シーア派は血縁重視』など、日本人になじみの薄い宗教の実態が明らかになる」とあります。

 

本書の「目次」は、以下の通りです。
「宗教――人間の精神をつくるもの」一条真也
【Section1】キリスト教
ボクの罪を告白します
すべての人を救う「愛の宗教」
エス旧約聖書新約聖書/三位一体/7つの大罪/カトリックプロテスタント東方正教会グノーシスキリスト教原理主義/アダムとイヴ/最後の審判ゴルゴタの丘/十字軍/聖母マリア/ユダ/洗礼/告解
【Section2】イスラム
ようこそ!イスラムの世界へ
過酷な砂漠を生き抜く叡智
ムハンマドコーラン/六信五行/イスラム教の禁則/シーア派スンニ派スーフィズムイスラム原理主義/アサシン/ラマダーン/メッカ巡礼/一夫多妻制/ジハード/モスク/オスマン帝国
【Section3】仏教
悟りをひらきたい!
執着を捨て、苦しみの世界から脱出
釈迦/仏教経典/般若心経/三法印、四聖諦、八正道/大乗仏教/上座仏教/チベット仏教ダライ・ラマ
【Section4】ユダヤ教
神と契約しませんか?
ユダヤ人は、神に選ばれた民族なり!
ヤハウェモーセ十戒/律法と戒律/カバライスラエル嘆きの壁反ユダヤ主義死海文書/割礼/ラビ
【Section5】ヒンドゥー教
カレー屋さんの店主に聞いてみました!
今も人びとの暮らしにとけこむ悠久の神々
バラモン教ヒンドゥー教の神/ヴェーダとバガバッド・ギーター/解脱/カースト制度ガンジーヒンドゥーナショナリズム/石窟寺院/シーク教とシーク戦争
【Section6】その他の宗教
宗教はいったいいくつある?
民族の数だけ、文化の数だけ存在する宗教
神道修験道儒教道教ジャイナ教ゾロアスター教ブードゥー教ミトラ教マニ教/カルト宗教
「参考文献」

 

いわゆる「世界宗教」とは、キリスト教イスラム教・仏教の3大宗教のことです。本書は、「1.キリスト教」「2.イスラム教」「3.仏教」「4.ユダヤ教」「5.ヒンドゥー教」「6.その他の宗教」といったふうに6つの章に分かれています。「その他の宗教」では、神道修験道儒教道教ジャイナ教ゾロアスター教ブードゥー教ミトラ教マニ教、そしてカルト宗教を取り扱っています。それぞれの章には多くのキーワードによる項目があり、それぞれ2ページで図解・イラスト入りで、100文字でシンプルに説明しています。

 

もともと本書は新書でしたが、パートナーは造事務所さんでした。現在は、「出版界の木下藤吉郎」こと堀川尚樹さんが社長を務めている編集プロダクションです。「世界一やさしい宗教の本」をめざして作りましたが、非常に反響を呼び、版を重ねてきました。このときも単なる文庫化ではなく、イスラム教を中心に大幅に改稿しました。当時、リビアにしろ、エジプトにしろ、何が起こっているのかを本当に理解するには、表面の政治ばかりを見てもダメだと痛感しました。その裏にあるイスラム教のことがわからないと絶対に理解できないと思ったのです。

ユダヤ教vsキリスト教vsイスラム教』(だいわ文庫)

 

21世紀は、9・11米国同時多発テロから幕を開いたと言ってよいでしょう。あの事件はイスラム教徒の自爆テロリズムによるものとされていますが、この世紀が宗教、特にイスラム教の存在を抜きには語れないということを誰もが思い知りました。宗教というものを「戦争エンジン」とみなし、「宗教は、要らない」と言う人が多いことは知っています。しかし、やはり人類にとって宗教は必要不可欠なものであると、わたしは確信しています。何だかんだ言っても、宗教とは、とどのつまり人間の救済システムであるはず。人間はほんの短い人生の間に老病死や貧困や人間関係など、さまざまな苦悩を抱え、しばしば絶望に至ります。一切の希望の光を見失い、自ら生命を断つ者も少なくありません。そんな危機的状況から救い出してくれて、人々に「生きる意味」を与えてくれるものが宗教です。


ハートフル・ソサエティ』(三五館) 

 

宗教はまた、究極の不安である「死」の不安から人間を解放し、「死ぬ覚悟」を与えてもくれます。つまり、宗教は人間の心を救い、かつ豊かにしてくれるのです。その救いのメカニズムとして、神の観念、聖職者、儀礼、修行といった、実に手の込んだ仕掛けが用意されています。どれだけ多様な形式があるにせよ、あらゆる宗教は神や絶対者に最大の価値を置くとともに、人間の心というものにも価値を置いています。「人の心はお金で買える」などと主張する宗教は当然ながら存在しません。いずれの宗教も、心ゆたかな社会、ハートフル・ソサエティへの水先案内人となりえるのです。そして、最終的に平和エンジンとなりえるのも、やはり宗教しかありません。

日本三大宗教のご利益』(だいわ文庫)

 

日本人は、よく宗教を知らないといわれます。正月には神社に行き、七五三で神社にお参りする。クリスマスを盛大に祝い、結婚式は教会であげる。そして、葬儀では仏教のお世話になる。ある意味で、宗教的に「いいかげん」というか「おおらか」なところが、代表的な日本人の宗教感覚だといえるかもしれません。みずからが信じる神のためには戦争をも辞さない、ユダヤ教イスラム教といった「一神教」の人々には、燃えるような宗教心が宿っています。ですが、日本人の心の底に横たわるのは、むしろゆるやかな宗教心ではないでしょうか。


100文字でわかる世界の宗教』(ベスト新書)
 

そして、そんな日本人たちは言います。「宗教がちがったって、同じ人間じゃないか。どうして宗教のために人間同士が争わなければならないのか」と。たしかに、そのとおりです。人間は人間です。けれども、ハードとしての肉体は同じであっても、ソフトとしての精神がちがう場合、それははたして同じ人間だと言い切れるのでしょうか。答えは否。精神をないがしろにすることは、とうていできません。そして、その精神にもっとも影響を与えるものこそが、宗教なのです。人間の営み、数々あれど、宗教ほど歴史があって、かつ興味深いものはないのです。そんな宗教の世界を100文字で解説してみました。まさに、世界一やさしい宗教の本だと思います。1人でも多くの方が本書を読まれて、真の国際人となられることを願っています。

 

100文字でわかる世界宗教 (ワニ文庫)

100文字でわかる世界宗教 (ワニ文庫)

  • 発売日: 2011/03/18
  • メディア: 文庫
 

 

 

2021年4月25日 一条真也