『知ってびっくり! 世界の神々』 

一条真也です。
46回目の「一条真也による一条本」は、『知ってびっくり!世界の神々』(PHP研究所)です。2010年6月7日に刊行されたわたしの監修書で、株式会社レッカ社の編著となっています。


知ってびっくり! 世界の神々
(2010年6月7日刊行)

 

カバー表紙には、ポセイドンらしき神のイラストとともに、「雑学3分間ビジュアル図解シリーズ」「神秘の裏に隠された本当の姿とは」「浮気がやめられない神、嫉妬深い神・・・人間くさい神々の真実の姿を描く!」と書かれています。

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本書の「目次」は、以下のようになっています。
「はじめに」
「神話発祥地MAP」

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【第1章】メソポタミアの神々

メソポタミア神話の概要  
多くの神話に影響を与えた世界最古の神話
アヌ  若い神々を導く天空の支配者
エア  森羅万象を知り尽くした頼れる水神
エンリル  万人が認めるメソポタミアの権力者
イシュタル  美しくも恐ろしい魔性の女神
エレシュキガル  荒れ果てた大地に住む冥界の主
ギルガメシュ  改心して英雄となった半神半人の王
エンキドゥ  神々に翻弄された獣人の戦士
ティアマト  万物の起源となった怒れる地母神
マルドゥク  最高神を運命づけられた完璧な神
[コラム1]
洪水神話 愚かな人間にくだされる神々の天罰

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【第2章】エジプトの神々
エジプト神話の概要  ナイル川が育んだ神々の物語
ラー  地上を照らす最高神
オシリス  死者の魂を裁く冥界の裁判官
ホルス  亡き父の代わりに王位を奪取した神
アヌビス  死者を導く冥界の守護神
イシス  知略と魔術に長けた慈悲深き地母神
セト  悪役を一手に引き受けた神
プタハ  創造主にのぼりつめたメンフィスの地方神
ハトホル/セクメト  善と悪を併せ持つ二重人格の神
ゲブ/ヌト  天地と神々を生み出した偉大な夫婦神
アテン  わずか20年余で消えた幻の唯一神
[コラム2] 
最初の人間たち 神々がつくった弱き存在

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【第3章】ギリシャの神々
ギリシャ神話の概要  
世界を代表するもっとも有名な神話
ゼウス  オリュンポス12神を束ねる神々の王
ヘラ  結婚に失敗した結婚の女神
ポセイドン  水と嵐を呼んだ大海原の支配者
ヘパイストス  努力して認められた鍛冶の神
アレス  神話史上最弱と揶揄される軍神
ディオニュソス  密儀を考案した狂信女たちの教祖
アポロン  あらゆる分野に秀でた万能神
ヘルメス  したたかに立ち回る神々の伝令者
アテナ  賢く誇り高い戦場の女神
アルテミス  月を司る永遠の処女神
デメテル  娘を溺愛した穀物母神
アフロディテ  肉欲に支配された麗しき魔性の女神
ハデス  王位を逃した冥界の支配者
エロス  自分の幸せも手に入れた愛の神
プロメテウス  人間に味方したティタン神族の賢者
テュポン  女神ガイアが生んだ最後の刺客
モイライ  人間の運命を淡々と紡ぐ三姉妹
ヘラクレス  死後に神となったギリシャ最高の英雄
[コラム3] 
同一属性を持つ神 神格が同じならば性格も同じ!? 

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【第4章】北欧の神々
北欧神話の概要  
世界の終末が預言された悲しき神々の戦記
ユミル  世界の礎となった原初の巨人
オーディン  知識と魔術に長けた北欧神話最高神
ロキ  美しく狡猾なトリックスター
ヴァルキリー  美しくも残忍な戦場の女神たち
トール  北欧神話最強の荒ぶる雷神
シグルズ  オーディンの血を引く英雄
バルドル  死の運命から逃れられなかった悲しき神
フレイ  万能なる貴公子
フレイヤ  美しくも奔放な北欧の魔女
フリッグ  人々から愛された偉大なる地母神
テュール  勇敢な片手の戦士
ヴァフスルーズニル  
          力よりも知識を求めた叡智の巨人
ヘイムダル  ラグナロクを知らせる世界の番人
[コラム4] 
神々のアイテム 無敵の武器から便利な道具まで

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【第5章】ケルトの神々
ケルト神話の概要  消滅の危機を逃れた口承神話
ダヌ  ダーナ神族の始祖となった偉大な女神
ダグダ・モール  心優しき神々の父
アリアンロッド  春を呼ぶウェールズの女神
ヌアダ  もっとも偉大な銀の腕の王
ブレス  英雄から暴君に成り果てた造反の神
ルー・ラヴィーダ  ダーナ神族を勝利に導いた光明神
マナナーン・マクリール  
         海原と妖精を支配する魔術の神
バイヴ・カハ  憎悪と愛情を併せ持つ三女神
エクネ  世界を冒険した詩芸の三神
コルウ・クヮレウィーヒ  
        抜群のチームワークを誇る工芸の三神
クー・フリン  魔槍ゲイ・ボルグを持った最強の戦士
スカアハ  英雄クー・フリンを鍛えた女戦士
フィン・マックール  
      フィアナ騎士団を率いた若き天才
[コラム5] 
神話の英雄  試練を宿命づけられた主人公

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 【第6章】インドの神々
インド神話の概要  
あらゆる神々を包括するインド神話の変遷
シヴァ  ヒンドゥー教最高の神格を持つ破壊神
ブラフマー  宇宙の根本原理を象徴する創造の神
ヴィシュヌ  人々を救済する秩序の神
ヴィシュヌの化身たち  
ヴィシュヌが姿を変えた10の英雄神
トリムルティの妻たち  
               ヒンドゥーの三大神がめとった美しき神妃
ガネーシャ  智恵と学問で繁栄をもたらす象頭神
ハヌマーン  
           空を飛び、姿をさまざまに変える神秘の猿神
カーリー  血に飢えた黒き殺戮の女神
インドラ  太古のインド神話で主役となった戦いの神
アグニ  紅蓮の炎で浄化をなす火の神
アディティ  あらゆる生き物の母となった大母神
アスラ  インドの神々と敵対した先住種族
[コラム6] 
異神話への派生 国を越えて崇拝された神々

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【第7章】日本の神々
日本神話の概要  
天皇家の系譜とともに綴られた神代の物語
伊邪那岐命  世界の礎となった国生みと神生みの神
伊邪那美命  死後に黄泉を支配した悲しき女神
天照大御神  八百万の神々の頂点に立つ最高位の女神
建速須佐之男命  無法者から英雄となった神
月讀命  表舞台に立たない謎めいた神
倭建命  英雄として命を落とした悲劇の武神
大国主神  国土発展に努めた出雲の英雄
[コラム7] 
聖獣と魔獣 神話を彩った幻想世界のモンスターたち 

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【第8章】その他の神々
アフリカ神話  身近な自然要素から生まれた神々
中国神話  漢民族が語り継いだ神々の伝説
朝鮮神話  「生きた伝承」を持つ珍しい神話
アステカ・マヤ神話  
侵略によって全容が失われた神話群
インカ神話  太陽が崇拝されたアンデスの伝承
オセアニア神話  大洋に広まった4つの神話
ハワイ神話  
叙事詩『クムリポ』に残る古来の伝承
「索引」
「参考文献」



人間は神話を必要とする動物です。神話とは宇宙の中に人間を位置づけることであり、世界中の民族や国家は自らのアイデンティティーを確立するために神話を持っています。一般に、アメリカ合衆国には神話が存在しないといわれます。建国200年あまりで巨大化した神話なき国・アメリカは、さまざまな人種からなる他民族国家であり、統一国家としてのアイデンティー獲得のためにも、どうしても神話の代用品が必要でした。それが、映画です。



映画はもともと19世紀末にフランスのリュミエール兄弟が発明しましたが、他のどこよりもアメリカにおいて映画はメディアとして、また産業として飛躍的に発展しました。映画とは、神話なき国の神話の代用品だったのです。それは、グリフィスの「國民の創生」や「イントレランス」といった映画創生期の大作に露骨に現れていますが、「風と共に去りぬ」にしろ「駅馬車」にしろ「ゴッドファーザー」にしろ、すべてはアメリカ神話の断片であると言えます。それは過去のみならず、「2001年宇宙の旅」「ブレードランナー」「マトリックス」のように未来の神話までをも描出す。



また、フランケンシュタインのモンスターやドラキュラ、スーパーマン、バッドマン、スパイダーマンなどは、すべて原作小説やコミックに登場するキャラクターにすぎませんでしたが、映画によって神話的存在となりました。「ロード・オブ・ザ・リング」3部作や「スターウォーズ」シリーズはまさしく神話としての映画を実感させますが、日本においても、「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」から「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」などの宮崎駿監督のアニメ映画ほど神話的世界を想像力ゆたかに描いているものはありません。映画産業とは神話産業であり、現代人の共感の大きな源泉となっているのです。

 

魂の心理学

魂の心理学

 

 

そう、人間は神々を必要とするのです。なぜなら、多神教の神々にふれると人間の魂は奥底から癒されるからです。そう主張したのは、ユング派「元型心理学」の創始者として知られるアメリカの心理学者ジェームズ・ヒルマンです。彼は、人間の魂は多くの機能を持っており、それぞれが必要とする神々がいると主張しました。オリュンポス12神にしろ、八百万の神々にしろ、多神教の神々は、それぞれの魂の元型が求める役割を演じてくれるわけですね。ヒルマンは、人間の魂はもともと一神教には馴染まないとし、「魂の自然的多神教」という言葉さえ使っています。たしかに、浮気がやめられなかったり嫉妬深かったりする神々を知ると、なんとなく安心してしまいますね。



知ってびっくり!世界の神々』は、世界最古のメソポタミア神話からエジプト神話、さらにはギリシャ神話というように神話の流れに沿って神々を紹介しています。神話や神々についての類書が、いきなりギリシャ神話からスタートする中で、この時系列にあった目次立ては非常にユニークであり、読者が神話の影響関係を理解する大きなサポートになるのではないでしょうか。神々は世界中の民族の「こころ」が投影されたものです。この神様のカタログを読んで、多くの方々に、ぜひ世界の人々の「こころ」を知ってほしいと思います。そして、自分だけの特別な神様を見つけてくれれば、監修者としてこんなに嬉しいことはありません。

 

知ってびっくり!世界の神々 (雑学3分間ビジュアル図解シリーズ)

知ってびっくり!世界の神々 (雑学3分間ビジュアル図解シリーズ)

 

 

 

 

2021年2月26日 一条真也