人は、いつか必ず死ぬということを思い知らなければ、生きているということを実感することもできない。
(ハイデガー)
一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、マルティン・ハイデガー(1889年~1976年)の言葉です。ハイデガーは、ドイツの哲学者。現象学の手法を用いて存在論を展開しました。
「死の哲学」を追究したハイデガーは、大著『存在と時間』の中で、「死の現存在分析」というタイトルで「死」を語っています。なぜ彼が「死」について書いたのかというと、わたしたち人間の「存在」が「死」によって終わると考えたからではないでしょうか。
わたしたちは「死」を自覚したとき、有限な時間を意識したとき、可能性を求める本来のあり方に戻ることができるというのが、彼の考えです。「生誕」から「死」までの間が存在の全体像であり、全体をとらえることで存在の本質により近づくことができるということです。
『存在と時間』は実存主義や構造主義、ポスト構造主義など20世紀の哲学思想にきわめて広範な影響を与えました。彼の哲学は世界中の哲学者や思想家、精神科医にまで影響を与えたといわれています。現象学、形而上学、存在学などを中心に幅広く多岐に渡った研究していたからです。
じつは『存在と時間』の原書には上巻という記述があります。その下巻があったのか。残念ながらそれを読む機会はもうありません。死と生の関係を教えてくれる貴重な言葉です。なお、この言葉は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。
2021年2月20日 一条真也拝