「グリーフケアと葬儀」オンライン講義

一条真也です。
10月28日、『満月交心 ムーンサルトレター』(現代書林)が発売されました。
この日の夜、上智大学グリーフケア研究所客員教授として特別講義を行いました。わたしにとって、生まれての初めてのオンライン講義です!

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オンライン講義のようす

 

社会人の受講生も多いので、18時45分から講義を行いました。ただし、いつもの東京・四谷の上智大学キャンパスからではなく、小倉の松柏園ホテルのメインバンケット「グランフローラ」からのオンライン講義です。上智大学グリーフケア研究所島薗進所長もオンラインで参加して下さいました。

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最初に自己紹介しました

 

冒頭、わたしは姿勢を正して、「わたしは、冠婚葬祭業を本業としております。この仕事に心から誇りを持っています。これまで、わたしが学んできたこと、行ってきたことのすべて、いわば人生のすべてをかけて、グリーフケアの研究と実践に尽力したいと考えています。どうぞ、よろしくお願いいたします」と受講生のみなさんに対して深く一礼いたしました。

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オンライン講義スタート!

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葬儀四部作の紹介

講義のテーマは「グリーフケアと葬儀」です。
まずは、「葬儀」についての自分の考えを明らかにしました。わたしは、人類の文明も文化も、その発展の根底には「死者への想い」があったと考えています。約7万年前に、ネアンデルタール人が初めて仲間の遺体に花を捧げたとき、サルからヒトへと進化しました。その後、人類は死者への愛や恐れを表現し、喪失感を癒すべく、宗教を生み出し、芸術作品をつくり、科学を発展させ、さまざまな発明を行いました。

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葬儀の5つの役割

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葬儀は「物語」の癒し

つまり「死」ではなく「葬」こそ、われわれの営為のおおもとなのです。葬儀は人類の存在基盤です。葬儀は、故人の魂を送ることはもちろんですが、残された人々の魂にもエネルギーを与えてくれます。もし葬儀を行われなければ、配偶者や子供、家族の死によって遺族の心には大きな穴が開き、おそらくは自死の連鎖が起きたことでしょう。葬儀という営みをやめれば、人が人でなくなるように思えてなりません。葬儀という「かたち」は人類の滅亡を防ぐ知恵なのではないでしょうか。

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水の入ったコップを掲げる

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「こころ」と「かたち」のメタファー

それから、「グリーフケア」について話しました。わたしたちの人生とは喪失の連続であり、それによって多くの悲嘆が生まれます。大震災の被災者の方々は、いくつものものを喪失した、いわば多重喪失者です。家を失い、さまざまな財産を失い、仕事を失い、家族や友人を失った。しかし、数ある悲嘆の中でも、愛する人の喪失による悲嘆の大きさは特別です。グリーフケアとは、この大きな悲しみを少しでも小さくするためにあるのです。

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グリーフ・ソサエティについて

f:id:shins2m:20201028193924j:plain月あかりの会」について

2010年6月、わが社では念願であったグリーフケア・サポートのための自助グループを立ち上げました。愛する人を亡くされた、ご遺族の方々のための会です。月光を慈悲のシンボルととらえ、「月あかりの会」という名前にしました。同会の活動をはじめ、「隣人祭り」や「ともいき倶楽部」「笑いの会」など、これまで実践してきた実例を紹介しながら、無縁社会=グリーフ・ソサエティを超える方策についての私見を語りました。

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途中で動画を流しました

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グリーフケア動画放映のようす

上智大学グリーフケア研究所といえば、以前は髙木慶子先生が所長を務めておられました。かつて、わたしはブログ『悲しんでいい』で髙木先生の著書を紹介しました。そして現在の所長は、日本を代表する宗教学者である島薗進先生です。島薗先生の所長就任は2013年4月1日のことで、ブログ「島薗進先生からのメール」に書かせていただきました。さらには、ブログ「鎌田東二先生からのメール」に書いたように、2016年4月から「バク転神道ソングライター」こと鎌田東二先生が上智大学グリーフケア研究所の特任教授に就任されました。

f:id:shins2m:20201028195514j:plainグリーフケアの時代』を紹介

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島薗先生とのやりとり

わたしは、島薗・鎌田両先生との御縁で16年・17年と2年連続で特別講義を担当し、2008年の4月から客員教授を拝命しました。今年は3人で『グリーフケアの時代』(弘文堂)という共著も出すことができました。佐久間庸和とは、わたしの本名です。島薗先生は東京大学名誉教授、鎌田先生は京都大学名誉教授でもあり、ともに日本の宗教学の世界のツートップです。このお二方と小生の名前が並ぶとは、今も信じられません。

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講義後、質問をお受けしました

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真摯にお答えしました

 

こうして、生まれての初めてのオンライン講義は無事に終了しました。講義後の質疑応答では、3名の方が興味深い質問をして下さいました。わたしも、真摯に答えさせていただきました。これまで自分なりに冠婚葬祭業界で実践してきたことを踏まえて、さらなる研究を重ね、充実した講義を行いたいと願っています。次回、11月11日は「グリーフケアと読書・映画鑑賞」をテーマにした講義をオンラインで行います。

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次回は、11月11日です!

 

2020年10月29日 一条真也