冠婚・衣裳責任者会議   

一条真也です。
21日の朝、東京から北九州に戻りました。本当は全互協の理事会や委員会に参加したかったのですが、北九州で大切な用事がありました。その日の午後から、サンレーグループ冠婚・衣裳責任者会議が開催されたのです。会場は、松柏園ホテルバンケットザ・ジュエルボックス」でした。各地から、わが社の誇る“むすびびと”たちが集結しました。


最初はもちろん一同礼で・・・

冠婚・衣裳責任者会議での訓話のようす



17時から、わたしが「社長訓話」を行いました。
わたしはまず、「冠婚事業は哲学産業です」と述べました。
古代ギリシャの哲学者ソクラテスの「とにかく結婚したまえ。良妻を得れば幸福になれるし、悪妻を得れば哲学者になれる」という言葉の紹介から、「哲学は驚きにはじまる」こと、そして結婚相手との出会いほど不思議で驚くべき出来事はないと訴えました。


内田樹氏の『困難な結婚』を紹介

困難な結婚

困難な結婚

続いて、現代日本を代表する哲学者である内田樹氏の『困難な結婚』という本を紹介しました。内田氏によれば、結婚しておいてよかったとしみじみ思うのは「病めるとき」と「貧しきとき」です。結婚というのは、そういう人生の危機を生き延びるための安全保障です。結婚は「病気ベース・貧乏ベース」で考えるもの。そして、以下の内容を紹介しました。
・結婚とは安全保障である。
・「もっと良い人」はいません
・今より幸せになるために結婚してはいけません
・結婚生活を愛情と理解の上に築いてはならない
・「よくわからない人」だから素晴らしい


結婚とは安全保障である!

夫婦は世界で一番小さな互助会!



わたしは、基本的に内田氏の発言に賛同しつつも、夫婦の本質である「安全保障」を別の四文字熟語で置き換えたいと思います。それは「相互扶助」です。「相互扶助」を二文字に縮めれば、「互助」となります。そう、互助会の「互助」です。そういうふうに考えれば、夫婦というのは、じつは互助会であることに気づきます。かつて、童話の王様アンデルセンは「涙は世界で一番小さな海」という言葉を残していますが、わたしは「夫婦は世界で一番小さな互助会」と言いたいです。


はれのひ」事件の感想を質問しました



それから、成人式の晴れ着でトラブルを起こした「はれのひ」について話しました。この冬は雪もよく降って大変寒いですが、わたしは心は怒りの炎で燃え上がっています。振り袖販売・レンタル会社の「はれのひ」に対する怒りです。成人式当日、早朝の4時に「もぬけの殻」となった店を訪れ、極寒の中で絶望した新成人や親御さんの心中を思うと、あまりにも気の毒で、涙が出てきます。まことに、一生に一度の成人式を台無しにした罪はあまりにも重いです。わたしはマイクを持って、「はれにひ事件を知ったとき、どう思ったか?」を参加者に質問して回りました。


はれのひ」事件について話しました



成人式の当日、楽しみにしていた晴れ着を着ることができなかっただけでなく、多くの方が預けていた大切な着物の行方が不明になりました。一時はフリマアプリで売られたのではないかと大騒ぎになりました。日本中の人々が「はれのひ」に対して怒り狂いました。ポイントは、今回のきわめて悪質な事件で、「はれのひ」は何をしたのかということです。わたしは、「はれのひ」は晴れ着だけでなく、いろいろな大切なものを奪ったと考えています。


はれのひ」が奪ったもの



まず、「はれのひ」は、新成人たちの「礼」の精神を踏みにじりました。
成人式における「礼」とは、無事に成人となった自分を尊重し、育ててくれた親を尊重することです。新成人を祝おうという親御さんや親族などの「礼」の精神も踏みにじりました。それから、新成人たちは、大人になる日に大人から裏切られてしまいました。社会は「信用」から成り立っているわけですが、それが根幹から崩されてしまいました。


さまざまな機会を奪った「はれのひ



さらに、成人式で着物を着るとは、日本文化に触れることです。「ニッポン人には和が似合う」とは、わたしの口癖ですが、新成人として晴れ着を着ることで、和装に興味を持つ女性は多いです。ひいては、それが日本文化全般への関心につながり、日本人としてのアイデンティティや誇りを持つことにも通じていきます。その機会が奪われました。
成人式で生まれて初めて振り袖を着ると、多くの女性は感動します。そして、「ああ、わたしは女性なのだ」「わたしは大人の女性になったのだ」と改めて実感することでしょう。それは女性美へのめざめであり、新成人は可愛い10代の「女子」から美しい20代の「女性」へと育っていきます。「はれのひ」はその機会を奪いました。


冠婚葬祭は、感謝する機会である



冠婚葬祭とは、すべてのものに感謝する機会です。
七五三・成人式・長寿祝いなどの通過儀礼は、無事に生きられたことを神に感謝する儀式です。そのために、いずれも神社や神殿での神事すなわち儀式が欠かせないわけです。成人式で晴れ着を着ることによって、新成人は家族への感謝の念を強めます。また、両親は美しく着飾ったわが娘の姿を見て、これまでの育児の日々をなつかしく思い出します。そのような家族の絆が奪われてしまいました。


儀式産業というもの



また、今回の事件に関しての怒りのコメントで最もよく使われているのは「一生に一度しかない成人式」という言葉です。今回の事件の悪質さは、「時間の不可逆性」に大いに関係しています。デパートでの不祥事なら新しい商品をお客様にお渡しすればいいし、レストランでの不祥事なら次回の食事でサービスするという方法もあります。しかし、儀式産業に関しては、勝負は一回限りで、次はありません。それが儀式産業というものです。


儀式なくして人生なし!



社会学者エミール・デュルケムは「さまざまな時限を区分して、初めて時間なるものを考察してみることができる」と述べています。これにならい、「儀式を行うことによって、人間は初めて人生を認識できる」と言えないでしょうか。儀式とは世界における時間の初期設定であり、時間を区切ることです。それは時間を肯定することであり、ひいては人生を肯定することなのです。さまざまな儀式がなければ、人間は時間も人生も認識することはできません。まさに、「儀式なくして人生なし」です。「はれのひ」は「もう二度と戻らない時間」すなわち「かけがえのない人生」を奪いました。「そんなことすんなよ、返したれよ思い出」というツイートをした人がいましたが、同感です。


冠婚葬祭業界全体の信頼が損なわれた



一生に一度の晴れの日を台無しにされた被害者の方々の無念と悔しさを思うと、言葉もありません。成人式に限らず、結婚式も葬儀も一生に一度のかけがえのない「セレモニー」であり、「メモリー」です。最近、福岡県の葬儀保証組合が破産し、会員から「葬儀サービスが受けられない」と悲鳴が上がっていると、元旦のヤフー・ニュースのTOP記事で出ていました。冠婚にしろ、葬祭にしろ、一部の業者のために冠婚葬祭業界全体の信頼が損なわれるのは残念でなりません。


「こころの同時多発テロ」と呼ぶべき事件



かのオウム真理教は「地下鉄サリン事件」という日本犯罪史上最悪の事件を起こしましたが、今回の「はれのひ」事件はいわば、「こころの同時多発テロ」とでも呼ぶべきものでした。わたしたちは、冠婚葬祭業を「絶対に失敗の許されない仕事」と心得て、お客様の「こころ」を裏切らないようにしたいものです。これだけ多くのものを奪った「はれのひ」の社長は稀代の大泥棒です。いくら個人破産をしようが、けっして許されない罪だと思います。
わたしは、「はれのひに こころ裏切る大泥棒 こころ守るは われらの仕事」という道歌を披露しました。


「生活の古典」を大切に!!



最後に、わたしは「年中行事」の大切さについて話しました。
民俗学者折口信夫は、年中行事を「生活の古典」と呼びました。彼は、『古事記』『万葉集』『源氏物語』などの「書物の古典」とともに、正月、節分、雛祭り、端午の節句、七夕、盆などの「生活の古典」が日本人の心にとって不可欠であると訴えました。
なくなる。おそらく今の80代の人たちが絶える頃には、寺社は別としても、古風な信仰を保つ人たちを除いては、単なる1月になるだろう」と予測しています。岩下氏によれば、いま、「伝統文化とか伝統芸能を大切にせよ」などとよく言われるが、それはわたしたちの暮らしの中で昔から伝承されてきた「生活の古典」がなくなる前触れではないかといいます。同感です。


平成が終わると、文化が激変する



文化が大きく変化する、あるいは衰退するのは、日本の場合は元号が変わった時であると言われています。実際、明治から大正、大正から昭和、昭和から平成へと変わったとき、多くの「生活の古典」としての年中行事や祭り、しきたり、慣習などが消えていったといいます。
そして、平成も終わり、新しい元号へと変わります。来年の2019年4月30日、天皇陛下は退位されることになりました。平成は来年の4月末で終わります。翌5月1日に改元となります。


最後は、もちろん一同礼!



わが社では、新しい時代となっても、日本人が「生活の古典」を大切にするお手伝いをしたいと思います。冠婚葬祭、年中行事、そして、祭り。すべては日本人の「こころ」を「かたち」にした素晴らしい文化であり、互助会はこれらの文化を守り、後世へ伝えていく大いなる使命があります。この日の社長訓話では、そのような話をしたところ、みんなこちらが怖くなるぐらい真剣な表情をして聴いていました。最後は、もちろん一同礼で終了しました。


夜のヴィラルーチェ

懇親会場の入口

懇親会の冒頭で挨拶する佐久間会長

冠婚事業の将来ヴィジョンを述べました



社長訓話が終わった後は、ヴィラルーチェの「ザ・テラス」で懇親会が開かれました。最初に佐久間会長が挨拶し、「わが社は成熟期にあるように思っていましたが、もしかしたら衰退期なのかもしれません。それでは、いけない。目標を持ち、問題意識を持ち、集中力をもって仕事に取り組んでいただきたい。そうすれば、まだまだ発展できるはずです」と述べました。


わたしも挨拶しました

カンパ〜イ!



続いて、わたしも「わが社には学ぶ心があります。そして、感謝する心があります。第二創業期に入って、冠婚部門のみなさんの奮闘に期待しています!」と述べました。それから、東常務の音頭で乾杯しました。各地から参集したみなさんは、料理を楽しみながら会話の花を咲かせました。
最後は、北陸本部の小久保事業部長によって中締めの挨拶がされました。小久保事業部長は、 サンレー・オリジナルの「末広がりの五本締め」で締めました。これをやると、みんなの心が本当にひとつになる気がします。



2018年2月22日 一条真也