絶対に失敗の許されない仕事 

一条真也です。金沢に来ています。
16日、サンレー北陸の新年祝賀式典および新年祝賀会を行います。
さて、「サンデー毎日」1月28日号が発売されました。わたしは、同誌にコラム「一条真也の人生の四季」を連載しています。今年最初のコラムとなる第113回のタイトルは、「絶対に失敗の許されない仕事」です。


サンデー毎日」2018年1月28号



今年の「成人の日」も全国で多くの新成人が誕生しましたが、前代未聞の問題が発生しました。着物レンタル業者が突然、営業停止したのです。人生に一度の晴れの日に、振り袖を着られない女性たちが相次ぎました。
この会社では、振り袖や小物のレンタル、写真撮影のほか、成人式当日の着付けなども請け負っていました。



しかし、1月8日朝になって、突然、営業を停止したのです。その後、連絡がつかず、行方もわからないといいます。冠婚葬祭のお手伝いを生業とするわたしは怒髪天を衝く思いです。本当に、こんなに怒りを感じた事件は久しぶりです。人間にとって最も大切なものを奪った、きわめて悪質な犯罪ではないでしょうか。



その一方で、事件が起こった当日、行政関係者も、被害に遭った人の対応のために急遽、ボランティアを集めて、着付けを行ったといいます。問題の会社とは無関係の美容院などもネットを通じて呼びかけ、新成人を受け入れたと聞きました。また、くだんの会社のうち、福岡市内の店舗だけは、「営業するのは当たり前。お嬢様たちを泣かせるわけにはいかない」と午前中は通常対応していたそうです。こういう善意の人々がいてくれたことがせめてもの救いです。



一生に一度の晴れの日を台無しにされた被害者の方々の無念と悔しさを思うと、言葉もありません。成人式に限らず、結婚式も葬儀も一生に一度のかけがえのない「セレモニー」であり、「メモリー」です。最近、福岡県の葬儀保証組合が破産し、会員から「葬儀サービスが受けられない」と悲鳴が上がっているという報道も記憶に新しいですが、一部の業者のために冠婚葬祭業界全体の信頼が損なわれるのは残念なことです。



冠婚葬祭業は「絶対に失敗の許されない」仕事です。
それは一生に一度の大切な日のお手伝いをするからです。次はないのです。夜逃げする貸衣装店はもちろん論外ですが、奇をてらった下品な成人式衣裳を高額で貸し付ける店も罪深いと感じます。


サンデー毎日」2018年1月28号の表紙



2018年1月16日 一条真也