鎌田東二先生講演

一条真也です。
30日の14時から開催された冠婚葬祭総合研究所主催の講演会に参加しました。場所はTKP新橋カンファレンスセンター2階(ホール2A)です。講師は、「バク転神道ソングライター」こと宗教哲学者の鎌田東二先生で、テーマは「弔いの思想と葬儀の社会的価値と機能~人類はなぜ葬儀を発明したのか?」でした。

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最初に法螺貝を奏上 

 

冒頭、冠婚葬祭総合研究所の柴山社長から挨拶がありました。それから鎌田先生が登壇し、最初に法螺貝を奏上しました。わたしはすっかり慣れていますが、講師がいきなり法螺貝を吹いたので、その場にいた多くの人々は仰天したようでした。

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講演する鎌田先生

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会場が満員になりました

 

講演は、以下の5つのパートに分けられていました。
1、「弔うこと」と「葬儀の発明」
2、宗教の三要素
3、日本における死の特性
4、多死時代の弔いの思想と儀礼
5、まとめ

 

鎌田先生は最初に、最近、京都シネマで再鑑賞したというフランス映画の名作「禁じられた遊び」の話から始められました。特に、ポーレットとミッシェルが作った墓がすべて、人間の墓ではなく、動物の墓であった点を強調されました。空襲で死んだ愛犬の墓、続いて、猫の墓、ミミズの墓、モグラの墓、ヒヨコの墓・・・疎開途中で空襲を受け、胸元に抱いた愛犬機関銃操作の音で逃げ出したので、ポーレットは犬の後を追いかけていったのでした。



そんなポーレットを追いかけた両親は戦闘機に撃たれて即死、犬も死にます。しかし、親切に荷車に乗せてくれたおじさんとおばさんが犬は死んでいると川に投げ捨てたのでポーレットはその犬を追って川辺に探しに行きます。鎌田先生は「彼女にとって、父母の死よりも、イヌの死の方がリアルで哀しかったのでしょうか。なぜか、両親の死体を見ても、ポーレットは泣かなかったと記憶します。このあたりの人間の死体よりも犬の死体に愛着する描写は、なかなか突き放したドライな感じで、凄味があると思いましたね」と述べました。
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講演会のようす

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儀礼についての自説を披露

 

鎌田先生のお話はいずれも興味深い内容でしたが、「死者とのつながりがある方が、強く生きていける」「死者との相互交流、死者との共生は、今を生きるわたしたちを強く生かしてくれる。また、深く生かしてくれる」「死者との交流が持てば、悲しみはあっても、強く生きることができる」という言葉が印象的でした。

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石笛を吹く鎌田先生

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龍笛を吹く鎌田先生

 

また、途中で石笛や龍笛も吹いてくれました。
その音色は会場中に響きわたり、聴衆を魅了しました。
最後は「葬儀には『美』が不可欠であり、『物語』が不可欠である。人間はみな生まれつきのGPSを持って生きているが、死者を忘れるとそれが機能しなくなり、現在いる位置の確認ができなくなる」という言葉を述べられ、盛大な拍手を受けました。

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「まとめ」の内容

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ティー・パーティーのようす

 

講義終了後は会場内でティー・パーティーが開催され、鎌田先生は互助会業界の方々と名刺交換をしたり、質疑応答をしたりしていました。わたしも、30年来の付き合いのある鎌田先生と業界のみなさんが歓談している姿を見て、不思議な想いを抱くとともに、非常に感慨深いものがありました。

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冠婚葬祭総合研究所の図書室で

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2人の共著が並んでいました

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蔵書を感慨深く眺める内海さん

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図書室で仕事をする鎌田先生

 

ティー・パーティーの後は、近くの「COMS虎ノ門」まで移動、そこに入っている冠婚葬祭総合研究所の図書室で打ち合わせをしました。「出版寅さん」こと内海準二さんも一緒でした。内海さんは図書室の蔵書に自分が編集した「一条本」が多いことを発見し、感慨深い様子でした。その後、わたしたちは赤坂見附のレストラン「ジパング」に場所を替えました。ジパングには全互協の儀式継創委員会の浅井委員長が待っておられて、わたしたちは4人で会食しながら儀式文化について熱く語り合いました。みなさんから法令試験合格のお祝いの言葉をいただき、恐縮しつつも、嬉しい一夜となりました。

 

2018年10月30日 一条真也