茶道と「おもてなし」   

一条真也です。東京に来ています。
今日は全互協の委員会会議に参加しました。明日は、六本木ヒルズにあるハリウッド大学院大学で「おもてなし」についての講義を行います。
12日、「サンデー毎日」12月24日号が発売されます。
わたしは、同誌にコラム「一条真也の人生の四季」を連載しています。
第109回のタイトルは、「茶道と『おもてなし』」です。


サンデー毎日」2017年12月24日号



わたしは冠婚葬祭会社を経営していますが、先日、本社のある小倉で、創立50周年記念祝賀会を開催しました。同業の経営者のみなさんが全国から集まって下さいましたが、まずは抹茶でおもてなしさせていただきました。わが社では、茶道の精神を体現できる「お茶のある人」になるため、多くの社員が稽古に励んでいます。



拓殖大学呉善花教授によれば、1回の茶道の稽古は、現在多くの企業で行われている研修10回分に相当するとか。一般的な社員研修とは違い、茶道は、おもてなしの修行、礼儀作法の修行、人間の修行なのです。茶道は茶室という狭い空間での主客のふるまいが中心になっていますが、そうした息づかいまで聞こえるような距離でお互いが接し合うことで、感覚が研ぎ澄まされ、相手が何を求めているかを自然に察知できる感性が身についてきます。



茶で「もてなす」とは何か。それは、最高のおいしいお茶を提供し、礼儀をつくして相手を尊重し、心から敬意を表することに尽きます。そして、そこに「一期一会」という究極の人間関係が浮かび上がってくるのです。人との出会いを一生に一度のものと思い、相手に対し最善を尽くしながら茶を点てる「一期一会」の精神を最初に文字に著したのは、利休の弟子・山上宗二でした。利休が生み出した「和敬清寂」の精神とともに、日本が世界に誇るべきハートフル・フィロソフィーだと言えます。



わが会社のミッションは「冠婚葬祭を通じて、良い人間関係づくりのお手伝いをする」ですが、茶道はまさに「良い人間関係づくり」のためのヒューマン・コミュニケーションのアートであると言えるでしょう。
おもてなしは「ふるまい」「しつらい」「よそおい」によって成り立ちます。この各要素は、すべて茶道の中に存在しますが、それにとどまらず、「つつしみ」「うやまい」「おもいやり」という人の生き方、接客においては「常に一歩ひいてお客さまをたてるという心」も茶道は包有しています。


サンデー毎日」2017年12月24日号の表紙



2017年12月12日 一条真也