アスタルテ書房

一条真也です。
以前、京都に来るたびに必ず寄っていた古書店がありました。「アスタルテ書房」という幻想文学を主に扱う店で、京都三条通りを少しだけ北へ上がった住居用マンションの一室にありました。扉を開いて靴を脱ぎ、スリッパをはいて店内に入ると、そこには異界が広がっていました。


アスタルテ書房」が入ったマンションの入口で

アスタルテ書房」の入口で

店内のようす

店内のようす



店内には、“異端の画家”と呼ばれる金子國義の絵画作品、四谷シモンの人形などがディスプレイされ、この古書店を象徴する異端のフランス文学を翻訳した澁澤龍彦生田耕作、挿画を手がけた金子國義をはじめとした著名な作家たちもこの古書店を訪れました。


店内のようす

店内のようす

店内のようす



この古書店の店主であった佐々木一彌さんが今年の6月15日に亡くなられたと知って、驚きました。61歳だったそうで、心よりご冥福をお祈りいたします。わたしはよく佐々木さんから澁澤龍彦の思い出話をお聞きしました。思い返せば、10年前に幻冬舎文庫から『ロマンティック・デス〜月を見よ、死を想え』を上梓したとき、来店時にたまたま1冊持っていたのでプレゼントさせていただいたところ、佐々木さんは嬉しそうに受け取られ、丁寧にカバーを外してから読み耽っておられたことをなつかしく思い出します。佐々木さんに『唯葬論』(三五館)をお渡ししたかった!


店内で・・・・・・

店内で・・・・・・

店内で・・・・・・



店主のいなくなった古書店には約1万点の古書や絵画が残されました。これらの商品が売れるまで店は続けられますが、なくなり次第に閉店するそうです。わたしはここで売られていた四谷シモンの人形がずっと欲しかったので、店番の女性に訊ねると、店主の死去すぐの閉店セール開始直後に売れたそうです。人形だけでなく、連日、多くのお客さんが訪れ、古書や絵画を買っていかれたとか。


出入口の扉

入口脇には澁澤龍彦関連のチラシが・・・

澁澤龍彦関連の書棚

ガラスケースに入った幻想文学書の数々

アスタルテ書房で求めました


店内にはソファや木馬があり、本屋というより書斎のような雰囲気でした。そう、佐々木さんが親しく交際した澁澤龍彦の書斎のようでした。書棚には澁澤の著書や訳した本が書棚に並び、ガラスケースには仏文学者の生田耕作が翻訳したバタイユの『眼球譚』の訂正用控本、泉鏡花谷崎潤一郎三島由紀夫らの本が置かれていました。三島も澁澤もすでにこの世の人ではなく、金子國義も今年3月に亡くなりました。わたしは、しばしこの「幻想文学のアジト」に佇んで、今は亡き佐々木さんを偲びました。


民族楽器店でオウムを発見!

もちろん買いましたとも!



アスタルテ書房」からの帰り道、商店街を歩いていたら、民族楽器店がありました。その店先に売られていたオウムの風鈴が目にとまりました。非常にインパクトの強いデザインです。迷わず購入しました。ただでさえ過剰な雰囲気のわが書斎でこのオウムを放し飼いにしたいと思います。かつてアスタルテで求めた本たちとともに・・・・・・


本能寺の前で

「信長公御廟所」の碑あり

日蓮上人の銅像あり

もちろん真似しましたとも!



民族楽器店のすぐ近くにはお寺があります。本能寺といいます。そう、あの本能寺です。場所は移転してはいますが、紛れもなく織田信長が最期を遂げた寺です。信長の廟所ということが標されていました。『立正安国論』を書いた日蓮上人の銅像もありました。もちろん、わたしは真似をして写真に収まりましたとも!


デモの行進が・・・・・・


ゆるキャラのデモ行進は初めて見ました



本能寺を後にして京都市役所の前を通りかかると、大規模なデモ行進に遭遇しました。ものすごい数の人が行進に加わっていましたが、「安保法案を廃止せよ」「アベ政権を許すな」などと叫んでいるわりにはのどかなムードで、京都の人々はなんだかデモを楽しんでいるように思えました。なんと、「ポンキッキーズ」のガチャピンみたいなキャラも歩いていました。ゆるキャラのデモ行進は初めて見ましたが、オウムも、日蓮上人の銅像も、ゆるキャラのデモも、すべては幻想文学の一場面のように思えました。アスタルテ書房が見せてくれた白日夢だったのかもしれませんね。



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2015年9月14日 一条真也