村上春樹氏の新作タイトルは長い!

一条真也です。

村上春樹氏が4月12日に新作長篇を刊行します。
版元は初の長篇小説を出すことになる文藝春秋です。
多くの村上作品を文庫化した講談社でも新潮社でもなく、文藝春秋
タイトルは、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』だそうです。


わが書斎の村上春樹コーナー



本日、版元による特設サイトもオープンしました。予約ページもありますが、いきなりアマゾンで1位になっていますね。このサイトには作者の村上氏のメッセージも掲載されていて、「『1Q84』がいわばジェットコースター的な物語だったので、それとは少し違うものを書いてみたいという気持ちがありました。それがどんなものなのか、書いてみないとわからなかったけど」と述べています。



1Q84』は、たしかに面白い小説でした。ブログ「『1Q84』BOOK1&2」、およびブログ「『1Q84』BOOK3」も、よろしければ、ご参考までに。
でも、たしか全部で4部作だとばかり思っていましたが・・・。
だって、あれでは物語が完結していませんもの。
先に別の作品を書いて、しばらくしてから『1Q84』BOOK4を発表するのでしょうか? それとも、天才には物語の完結など関係ないのでしょうか?



それにしても、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』とは不思議なタイトルですし、長いですね。全部で20字もあります。まあ、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は1文字多い21字ですけどね。
わたしは、2009年の5月に村上春樹氏の長篇小説を集中して読みました。
きっかけは、同年の2月15日にイスラエルで行われた村上氏の例のスピーチです。そう、エルサレム賞受賞スピーチの内容(「高く堅牢な壁と、そこにぶつかれば壊れてしまう卵があるなら、私は常に卵の側に立とう」という言葉はあまりにも有名になりました)を知り、なぜか「村上春樹の全作品をどうしても、いま、読まなければならない」と強く感じたのです。



そういうわけで、デビュー作の『風の歌を聴け』から『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ダンス・ダンス・ダンス』『国境の南、太陽の西』『ねじまき鳥クロニクル』『スプートニクの恋人』『海辺のカフカ』『アフターダーク』へと至る長篇小説を一気に固め読みしました。そして少し経ってから、『1Q84』を新刊で読んだわけです。



こうして見ると、村上氏の小説のタイトルは長いものだけではありませんね。
わたしの好みをいうと、じつは短いタイトルの本が好きです。
わたしの著書でも長いタイトルのものがありますが、たいていは出版社に押し切られたもので、あまり好きではありません。本当は『哲学入門』とか『読書論』とか『人間』とか『儀式』とか、さらには『礼』とか『縁』といった短いタイトルの本を出したいです。人文系ではそういうシンプルなタイトルのほうが名著が多いですからね。小説でも、漱石の『こゝろ』とか『門』とか短い題名のものが好きです。



でも、村上春樹氏の場合は、そんなこと関係ないのでしょうね。
何はともあれ、久々の新作長篇。とても楽しみです。今度こそ、ノーベル文学賞を取ってほしいと願っているのは、わたしだけではありますまい。
ちなみに、わたしは漱石作品も春樹作品もすべて読んでいますが、村上春樹夏目漱石の文学的DNAを受け継いでいると確信しています。



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2013年3月15日 一条真也