パーパスからアンビションへ

 

一条真也です。
これまで多くの言葉を世に送り出してきましたが、この際もう一度おさらいして、その意味を定義したいと思います。今回は、「パーパスからアンビションへ」です。



わたしは企業経営者ですが、何事も陽にとらえて、他者の幸せを願う志を掲げていれば、企業は必然的に発展していくものと確信しています。数年前、志は「パーパス」という言葉でビジネス界でも流行しました。それらによると、「パーパス(=企業の社会的存在意義)」は2020年代の最重要コンセプトだそうです。SDGs、気候変動、ESG投資、サステナビリティジェンダーギャップ、テクノロジーへの反発などを視野に入れ、社会課題の解決が戦略の中心に置かれる時代の、「利益の追求」と「社会を良くする」を両立させる新しいビジネスの形を追求することが求められています。



今、なぜこれほどパーパスに注目が集まるのか。それは、社会そのものが「意義化」しているからなのかもしれません。「パーパス」はサンレー創立55周年記念出版であるアンビショナリー・カンパニー(現代書林)のテーマである「アンビション」との共通点も多いと言えます。しかしながら、わたし自身は、「パーパス(志)」を超えるものが「アンビション(大志)」であると考えています。かのクラーク博士は「ボーイズ・ビー・アンビシャス」と言いましたが、わたしは「カンパニーズ・ビー・アンビシャス」と言いたい。そして、基本がソーシャルビジネスである冠婚葬祭互助会ほど大志を掲げ、かつ、それを果たせる業界はないと思います。

 

わが社は「サンレーズ・アンビション」として、「天下布礼」を進めています。具体的には「社会貢献」「有縁社会再生」「老福社会実現」「グリーフケア」の4つのカテゴリーで数多くのプロジェクトを推進しています。最近、わが社の社会貢献事業が多大な注目を集めています。わが社の大志、すなわちサンレーズ・アンビションが次々に「かたち」となっており、話題を集めているのです。

「読売新聞」2022年12月6日朝刊

 

わが社では児童養護施設に入居している新成人に晴れ着などを提供し、記念写真の撮影を行っています。2021年から始めた取り組みで、2022年は年内に北九州市内7か所の児童養護施設から計20人が参加しました。2022年12月5日、児童養護施設「双葉学園」から4~7歳の園児や児童5人が小倉の松柏園ホテルで撮影に臨みました。着付けなどは無償で行われ、子どもたちは晴れ着を身にまとい、笑顔で写真に納まりましたた。同施設ケアワーカー室の籾井真由美担当係長は「今日の撮影が決まった時から、子どもたちはわくわくしてカウントダウンするなどしていた。記念に残ってありがたいし、子どもの成長にも感動できた」と話していました。

西日本新聞」2021年12月8日朝刊

 

さらに、わが社が指定管理者を務める天然温泉「ふるさと交流館 日王の湯」(田川郡福智町神崎)で「子ども食堂」を開催し、小中学生を無料招待しています。これらの活動は大きな話題となり、全国紙をはじめとしたマスコミ各社からも取材の申し込みが相次ぎました。取材ではよく、「なぜ、このような社会貢献事業をされるのですか?」という質問があります。わたしは、「わが社の本業である冠婚葬祭互助会はソーシャルビジネスだからです」とお答えしています。ソーシャルビジネスとは、高齢者や障がい者の介護・福祉、子育て支援、まちづくり、環境保護地域活性化など、地域や社会が抱える課題の解決をミッション(使命)として、ビジネスの手法を用いて取り組むもの。「人間尊重」としての礼の精神を世に広める「天下布礼」の実践です。

アンビショナリー・カンパニー』(現代書林)

 

晴れ着の無料レンタルは、儀式というわが社の本業というべきものの意味と価値を世に広く問うものです。七五三は不安定な存在である子どもが次第に社会の一員として受け容れられていくための大切な通過儀礼です。成人式はさらに「あなたは社会人になった」というメッセージを伝える場であり、新成人はここまで育ててくれた親や地域社会の人々へ感謝をする場です。長寿祝いも含めて、すべての通過儀礼は「あなたが生まれたことは正しい」「あなたの存在と成長をこの世界は祝福している」という存在肯定のセレモニーです。万物に光を降り注ぐ太陽のように、サンレーはすべての人に儀式を提供する志を抱いています。

 

2024年2月29日 一条真也