「怪物の木こり」

一条真也です。
3日の日曜日、日本映画「怪物の木こり」シネプレックス小倉で観ました。話題の作品でしたが、面白くなかったです。浦沢直樹『MONSTER』にインスパイアされていることは明白でしたが、シナリオがダメですね。あと、画面が暗すぎて、何が何だかわかりませんでした。監督は三池崇史ですが、一体どうしちゃったの?


ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した倉井眉介の小説を映画化。連続猟奇殺人鬼に命を狙われたサイコパス弁護士が、殺人鬼を返り討ちにする機会をうかがう。『藁の楯 わらのたて』などの三池崇史が監督、同作にも携わった小岩井宏悦が脚本を担当。目的のためには殺人も辞さない主人公を『ジョーカー・ゲーム』などの亀梨和也が演じ、『七人の秘書』シリーズなどの菜々緒、『見えない目撃者』などの吉岡里帆のほか、堀部圭亮、渋川清彦、染谷将太中村獅童らが出演する」

 

ヤフーの「あらすじ」は、「絵本『怪物の木こり』に登場する怪物の仮面をかぶり、おので頭を割って脳を奪い去る猟奇殺人事件が続発する。次の標的として弁護士・二宮彰(亀梨和也)が狙われるが、彼は殺人鬼を上回るほど狂気じみたサイコパスだった。一命を取り留めた彰は復讐を誓い、自ら犯人を突き止めようとするが、警視庁のプロファイラー・戸城嵐子(菜々緒)らさまざまな者たちの思惑が絡み合い、捜査は混迷する」となっています。


「昔あるところに怪物の木こりがいました」という絵本から物語が始まりますが、これはもう完全に浦沢直樹氏の名作漫画『MONSTER』に登場する“なまえのないかいぶつ”でした。子どもたちに生体実験をする設定なども同じなのですが、原作者の倉井眉介氏は「『怪物の木こり』は『MONSTER』にインスパイさされて書きました」と明言しているのでしょうか? そうじゃなかったら似過ぎていますね。2019年の『このミステリーがすごい!』大賞を受賞したというのが、ちょっと信じられません。


『MONSTER』は、ドイツおよびチェコを舞台としたサスペンス作品です。冤罪、猟奇殺人、医療倫理、病院内での権力闘争、家族の在り方(親子愛、兄弟愛)、人間愛、児童虐待アダルトチルドレン、トラウマ、東西冷戦構造、ベルリンの壁崩壊の以前以後のドイツ社会などをテーマとしています。2019年3月時点で累計発行部数は2000万部を突破。1999年、第3回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。2000年、第46回小学館漫画賞青年一般部門を受賞。2004年春から同作品のアニメが日本テレビほかで放送されました。なお、このマンガはハリソン・フォード主演の映画「逃亡者」をモチーフにしているのでないかと言われています。


「怪物の木こり」は構成やストーリーも雑な印象がありましたが、主演の亀梨和也菜々緒の演技も大仰で、わたしの好みではありません。何よりも、亀梨と菜々緒の顔がともに人工的なので違和感をおぼえました。吉岡里帆は好きな女優ですが、殺人鬼に猿轡を嚙まされるシーンを含めて、この映画ではまったく色気がありませんでしたね。もったいない使い方でした。亀梨は元ジャニーズ事務所のKAT-TUNのメンバーですが、故ジャニー喜多川は「ユーの目、すごくいいよ!」と絶賛していたそうです。たしかに、亀梨は目力がありますね。彼の役柄は弁護士ですが、ブログ「法廷遊戯」で紹介した3日前に観た映画では、King&Princeのメンバーである永瀬廉が弁護士を演じていました。

 

ブログ「検察側の罪人」で紹介した2018年の日本映画では、元SMAP木村拓哉、嵐の二宮和也が検事役で出演していました。どうして、元ジャニーズの俳優たちは弁護士とか検事とか法曹関係者を演じることが多いのでしょうか。わたしは、どうしても、人類史上最悪の性犯罪者である故ジャニー喜多川のことを考えてしまいます。時期的に見て、これらのキャスティングはジャニーズ事務所の社長だった藤島ジュリーK氏が関わっているはずですが、彼女の心の中に「叔父であるジャニーの罪を裁いてほしい」という無意識の願望でもあるのでしょうか? そういえば、映画「怪物の木こり」には幼い少年たちを攫ってきて恐ろしいことをする男女が登場しますが、あの姉弟のメタファーのように思えて仕方ありませんでした。



最後に、この映画には「サイコパス」という言葉が何度も登場しますが、完全なる悪人みたいなニュアンスで使われているのが気になりました。サイコパスとは、精神疾患の一種を指す英語の単語です。具体的には、他人の感情を理解する能力が欠如し、社会的な規範や法律を無視する傾向がある人物を指します。また、自己中心的であり、他人を利用することに抵抗感を持たない特性を持ちます。しかし、一方で魅力的で説得力があり、他人を操作する能力を持つことも特徴的であるといいます。アスペルガー症候群をはじめとする発達障害の人を完全な悪人として描く映画は少ないと思いますし、そんなことをしたら大問題になるでしょう。ならば、精神疾患であるサイコパスの人を必要以上に危険人物として描くのは、社会的偏見を助長するのではないかと感じました。


2023年12月4日  一条真也