「月刊終活」インタビュー取材

一条真也です。
19日、小倉紫雲閣で行われる第一交通産業の創業者である故黒土始様の通夜式に参列いたします。生前大変お世話になった方です。心より御冥福をお祈りいたします。


鎌倉新書の小林CEOと名刺交換

 

その日の14時から以前から約束してあった雑誌の取材を受けました。「月刊終活」のトップ・インタビューです。「月刊終活」は以前は「月刊仏事」という誌名でした。わたしも何度もインタビュー取材を受けています。同誌を刊行する鎌倉新書小林史生CEOをはじめ、同社の方々が東京からサンレー本社にお越しになられました。


最初はマスク姿で質問を受けました

 

最初に、「アフターコロナを迎え、お葬式のあり方が大きく変わってきている昨今、葬式とは何か、改めてそのお考えをお伺いできますでしょうか」という質問がありました。わたしは、「お葬式とは『人生の卒業式』であり、『究極の自己表現』であると考えています。実際に従来のお葬式のスタイルにとらわれず、自由な発想で自分や故人を送りたい、という人が増えてきています。特に団塊の世代を中心に、新しいお葬式のスタイルが考案されています。日本人は人が亡くなると『不幸があった』などといいますが、死なない人はいません。すべての人が最後に不幸になるというのは、絶対におかしいとわたしは思います。『あの人らしかったね』といわれるような素敵な旅立ちのお葬式を実現することはもちろん、ゆたかな発想で新しいお葬式の時代を開き、いつの日か日本人が死を『不幸』と呼ばなくなることを願ってやみません」とお答えました。


なぜ、お葬式を行うのか?

 

また、わたしは「なぜ、人はお葬式を行うのでしょうか。それは、亡くなった人の魂のためです。お葬式によって故人を無事に旅立たせるのです。その次は、あとに残された人の心のためだといえるでしょう愛する人を亡くした人の心は、深い悲しみのあまり、不安定にゆらゆらと揺れ動いています。お葬式というしっかりした『かたち』が与えられれば、その悲しみはある程度、癒されます。ゆらゆらと動く『こころ』が『水』、『お葬式』というかたちが『コップ』とイメージいただければわかりやすいと思います。お葬式の『かたち』はさまざまです。いろいろなスタイルのお葬式で『自己表現』することができ、さらには『自己実現』を果たすことができます。でも、忘れてはいけないことは、お葬式とは、『愛する人を亡くした人』たちのためにもあるのだということです。『あの人らしかったね』いわれるような、そんなお葬式で人生を卒業されることを心より願っています」と申し上げました。


マスクを外して質問を受ける

 

次に「 サンレー様のグリーフケアへの取組みとして具体的にされている施策をご教示ください」との質問がありました。わたしは、「2020年11月にグリーフケア資格認定制度が発足しました。この制度は一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会が設計し、上智グリーフケア研究所監修のもと、一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団が制度運営しています。わが社では、グループで2名の上級グリーフケア士と142名のグリーフケア士による、ご遺族の悲嘆ケアに注力しています。また、ご遺族の会である『月あかりの会』や、同じ悲嘆をもつ自助グループ『うさぎの会』など様々な角度から、持続的な心の安定(幸福)をサポートさせていただいています」と答えました。


グリーフケアについて語る

 

また、グリーフケアについて、わたしは「『故人を故人らしく、しっかりとお見送りできた』、すなわち、ご葬儀をすること自体がグリーフケアの側面をもっているのです。弊社は冠婚葬祭を通じて顧客に真摯に向き合い、喜びや悲しみを共感することで一緒に人生を歩みたいと思います。日本は今、超高齢社会を迎え、多くの人が死を身近に感じています。一方で近年、ご自宅で亡くなる方よりも病院で亡くなる方のほうが多くなっており、近親者の死と向き合う機会が減っています。信仰から遠のく人が増え、地域社会が希薄化していくことで『深い悲しみ』を抱いた人を支援する機会も減っており、弊社がサポート役になりたいと考えています」と言いました。


小林CEOの質問を聴く

 

次に、「最新のご著書では“お葬式のアップデート”“お葬式のイノベーション”を発信されていますが、お葬式とはどのような変化をしていくべきとお考えでしょうか」との質問がありました。わたしは、「超高齢社会を迎えたわが国では、お葬式は変わらなければいけません。儀式はアップデートするのです。残さなければいけないもの、変化させていいもの(場合によっては取りやめてもいいもの)と精査する時期です。葬式を営んできた寺、葬儀会社も変わらなければいけないということでしょう。これからのセレモニーホールは単なる『葬儀をする施設』ではなく、『葬儀もできる施設』としての、地域の方々が縁を育むコミュニティホールにならなければいけないと考えています。あと、葬儀は参列者によって成り立つものです。血縁・地縁に頼った従来の参列者から趣味の縁である『好縁』やグリーフによる『悲縁』などの新しい縁が求められます。いわば、参列者のイノベーションです」と答えました。


次回作の2冊を持って説明

 

また、次回作が『ウェルビーイング?』と『コンパッション!』の2冊であることを告げ、わたしは「多くの方がSDGsの次のキーワードとして心身ともに良好な状態を表す『ウェルビーイング』を挙げられます。その心身の健康に大きな影響を与えるものとして、愛する人との別れや大切なものを喪失する『悲嘆』ということがあります。人生において悲嘆は決して避けられません。大切なのは悲嘆の軽減と回復であり、そのためにはグリーフケア、そしてケアを行うことの繋がりを表す『コンパッション』が大きな役割を果たしていくのです。企業評価の新基準となりつつあるSDGsのように、コンパッションが新たなスタンダードとなっていくでしょう。大切なのは思いやりや慈悲があふれる都市『コンパッション都市』の創造には、多様なつながりのある『有縁社会』の形成が不可欠だということです」と言いました。

無縁社会」を乗り越えるには・・・

 

さらに、「無縁社会」について、「血縁と地縁の希薄化が目立つ昨今です。2020年時点で50歳時の男性は約3割、女性は約2割が未婚であり、今後高齢の単独世帯の割合が大きく増加し、2040年には約900万世帯まで増加することが予測されています。人間は1人では生きていけません。血縁や地縁以外のさまざまな縁を見つけ、育てていく必要があります。わが社では趣味などの新たな縁作りのお手伝いにと、囲碁や俳句大会も開催しています。さらに、『ともいき倶楽部』『笑いの会』なども開催しています。さまざまな『縁』づくりのお手伝いをして『無縁社会』を乗り越え、『有縁社会』を再生したいと考えています。その役割を果たすために、『お葬式のアップデート』が必要となってきているのです」と申し上げました。

ウェルビーイングへの取り組みは40年前から!

 

次に、「ウェルビーイングという概念を経営理念として掲げられたきっかけはどのようなものでしょうか」という質問がありました。わたしは、「『ウェルビーイング』は、わが社が約40年前に経営理念に取り入れた思想です。当時のサンレー社長であった佐久間進会長が、九州大学名誉教授の池見酉次郎先生(故人)と日本心身医学協会を設立し、日本における心身医学の啓蒙・普及に努めましたが、そのときのコンセプトが『ウェルビーイング』でした。1986年の創立20周年には『Being!ウェルビーイング』というバッジを社員全員が付け、社内報の名前も『Well Being』でした。サンレーウェルビーイング思想は、1986年にオープンした松柏園グランドホテルで具現化されました。」と述べました。

ウェルビーイング」とは何か?

 

また、「ウェルビーイング」という考え方が生まれたのは1948年ですが、そこには明らかに戦争の影響があったと指摘し、わたしは「ウェルビーイングには『平和』への志向があるのだと思います。実際、ベトナム戦争に反対する対抗文化(カウンターカルチャー)として『ウェルビーイング』は注目されました。現在、ロシア・ウクライナ戦争が行われていますが、このような戦争の時代に『ウェルビーイング』は再注目されています。WHO(世界保健機関)憲章における、健康の定義では、『健康とは、たんに病気や虚弱でないというだけでなく、身体的にも精神的にも社会的にも良好な状態』というものです。健康は幸福と深く関わっており、人間は健康を得ることによって、幸福になれます。ウェルビーイングは、自らが幸福であり、かつ、他人を幸福にするという人間の理想が集約された思想と言えるでしょう」と述べました。

「コンパッション都市」とは何か?

 

次に、「そこから、『コンパッション』が出てくるわけですね。『コンパッション都市』の創造を提唱されていますね」という質問がありました。わたしは、「『ウェルビーイング』は健康や幸福についての包括的概念ですが、じつは決定的に欠けているものがあります。それは『死』や『死別』や『グリーフ』です。これらを含んだ上での健康でなければ意味はなく、まさにそういった考え方が『コンパッション』なのです。『コンパッション都市』とは『悲しみを共にする共同体』です。老い・病・死・死別を受けとめ、支え合うコミュニティであり、グリーフケアを中核とした都市です。英語の『コンパッション』を直訳すると『思いやり』ですが、思いやりは仏教の『慈悲』『利他』、儒教の『仁』、神道の『あはれ』、それからキリスト教の『隣人愛』にも通じます」と答えました。

「互助共生社会」を実現したい!

 

また、「老い・病・死・死別を受けとめ、支え合うコミュニティであるコンパッション都市の主体となるのは、地方自治体、葬儀会社、グリーフや緩和ケアに携わる組織だといいます。また、コンパッション都市実現のための具体的行動案として、『移動型の死への準備教室』『ご近所見守りパトロール』『コンパッション関連書の読書クラブ』『死を描いた映画の上映会』などが挙げられていますが、これはわが社の活動そのものです。だからこそ、すべてを実践してきたサンレーが『コンパッショナリー・カンパニー』として街づくりの中核を担うことで、誰もが一生を笑顔で過ごせる『老福社会』、そして『互助共生社会』を実現したいと願っています。基本がソーシャルビジネスである冠婚葬祭互助会ほど大志を掲げ、かつ、それを果たせる業界はないと思います」と述べました。


「CSHW」について語りました

 

最後の質問は、「サンレー様が掲げる、『CSHW』のハートフル・サイクルとは何でしょうか」というものでした。わたしは、「経営学用語に『PDCA』というものがありますが、わたしたちは、『CSHW』を提供したいと願っています。『CSHW』は、Compassion(思いやり)→  Smile(笑顔)→  Happiness(幸せ)→  Well‐being(持続的幸福)と進んでいきます。先の振袖墨汁事件における弊社ホテルのコンパッション対応への社会の反応で発見しました。Well-being(持続的幸福)を感じている人は、Compassion(思いやり)をまわりの人に提供・拡大していくことができます。これが『CSHW』ハートフル・サイクルです。ハートフル・サイクルはそこで回り続けるのではなく、周囲を巻き込みながら拡大し『思いやり』を社会に拡散をしていくサイクルです」と述べたのでした。


取材後、著書にサインしました


記念撮影のようす


鎌倉新書の小林COOと


最後は固い握手をしました

 

この日、鎌倉新書さんは小林CEOをはじめ、総勢5名来社されました。ちょうど黒土家の通夜式の準備でバタバタしていましたが、14時から15時半近くまでインタビュー取材をお受けしました。小林CEOは当ブログを愛読されているそうで、この日の記事がブログ『骨の髄まで』であることもご存知でした。それで、「佐久間社長と一条先生の関係は、武藤敬司グレート・ムタみたいなものですね!」と言っていただき、これには一本取られました。(笑)拙著『葬式不滅』(オリーブの木)や『供養には意味がある』(産経新聞出版)もご持参いただきましたが、大量のポストイットが貼られており、感激いたしました。取材後は、本にサインをさせていただき、ツーショット写真も撮影しました。最後は固い握手を交わして、わたしたちは別れました。小林CEO、今日はお会いできて嬉しかったです。今後とも、よろしくお願いいたします。

 

2023年4月19日 一条真也