『決定版 冠婚葬祭入門』

一条真也です。
95冊目の「一条真也による一条本紹介」は、『決定版 冠婚葬祭入門』(PHP研究所)です。サブタイトルは「基本マナーと最新情報を網羅!」です。

f:id:shins2m:20190313235236j:plain決定版 冠婚葬祭入門』(PHP研究所)

 

春らしいピンク色の帯には、「知って安心! 新しい時代に備えたい一冊」と書かれています。2014年4月に上梓した『決定版 冠婚葬祭入門』(実業之日本社)のアップデート版ですが、前回同様に「出版寅さん」こと内海準二さんがプロデュースして下さいました。あと48日で新元号となりますが、新時代に完全対応したまったく新しい冠婚葬祭入門です。PHPさんによって書店はもちろん全国のコンビニでも広く販売されました。日本人の冠婚葬祭に対する考え方に少しは影響を与えたかもしれません。

f:id:shins2m:20190313235159j:plain本書の帯 

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本書の帯の裏

本書の「もくじ」は、以下のようになっています。
「はじめに」
「これで安心! 慶事・弔事のマナー」
「贈るタイミングと表書き」
「のし紙の書き方」
「葬儀のマナー」
「葬儀・相続のスケジュール」
「一般的な葬儀の流れ」
「礼装のマナー 婚礼」
「礼装のマナー 喪装」

第一章  冠
1 出産と誕生の祝い
❖帯祝いは安産の祈願

    帯祝いの作法
    現在の帯祝いは若夫婦中心に
❖出産準備と退院
    妊娠中の諸手続き
    退院時の病院へのお礼
◆コラム◆へその緒
命名と出生届
    命名お七夜までに
    命名は心をこめて
    名付け親をだれにするか
    出生届は誕生後十四日以内に
❖出産祝いをするときの配慮
    出産祝いはお七夜以降に
    出産祝いの手紙
    出産の内祝いのしきたり
2 宮参りと年祝い
❖宮参り・初誕生の祝い

 宮参りは生後一カ月くらいに
 百日のお食い初めの作法
 初正月の迎え方
 初節句のしきたり
 初誕生日のお祝い
❖七五三
 成長の節目を祝う七五三
    七五三の晴れ着は合理的に
    七五三の贈答
❖成人式
    成人の祝いでおとなの仲間入り
❖厄年・年祝い
    年祝いの意味
    厄年と厄除け
    長寿の祝いのいろいろ
    長寿祝いの祝宴
◆コラム◆長寿祝い
3 学校や社会の祝いごと
❖子どもの祝いごと

    入園・入学祝い
    卒業と大学進学の祝い
    子どもの誕生会
❖おとなの祝いごと
    就職祝いの贈り物
    就職の報告とお礼の手紙
    昇進・栄転・退職
    受賞(章)祝い
    新築披露
    新築祝い
    開店・開業祝い
❖結婚記念日
    夫婦の記念日
    金婚式・銀婚式の祝い
◆コラム◆結婚記念日の名称
4 見舞い
    病気見舞いの気配り
    快気祝い
    事故・火事・災害見舞い 
第二章  婚
1縁談・見合い
❖縁談の進め方

    縁談を依頼するとき
    見合い写真と履歴書・身上書
    縁談の受け方、断り方
❖見合いの進め方
    見合いの準備
    見合い当日の身だしなみ
    見合いの進行
    見合い後の返事は仲介者に
    交際期間は三カ月が目安
◆コラム◆
    結婚相談所、結婚情報サービスの利用
2 婚約・結納
❖婚約の段取り

    婚約を整えるには
    婚約の準備と仲人の依頼
    婚約記念品を選ぶとき
❖結納
    結納の段取りと内容
    結納品は両家でそろえる
    結納金の相場
    目録、受書、家族書
    結納当日の服装
3 結婚の準備
❖式・披露宴の決定
    日取りは早めに決める
    式と披露宴の概略を決める
    式場選択の目安と予約
◆コラム◆式場選びのポイント
❖挙式と新生活の準備
    招待者をリストアップ
    招待状は本人名で
    新婚旅行のプラン
    婚姻届の提出
    婚礼衣装とお色直し
    引出物はかさばらないものを
    結婚指輪の手配
    披露宴の席次を決める
    結婚費用の分担
4 式当日の心得
❖新郎新婦の家族の心得
    花嫁・花婿の準備
    控え室での挨拶
    当日のスケジュール
    両親、兄弟の服装
◆コラム◆ 婚礼の忌みことば
5 挙式のプログラム
❖神前結婚式
キリスト教結婚式
◆コラム◆人前結婚式
◆コラム◆仏前結婚式
6 披露宴
    披露宴の流れ
7 新生活のスタート
    新婚旅行先で
    結婚後の挨拶回り
    婚姻届と結婚通知
    結婚祝いのお返し
8 結婚式に招かれたら
❖結婚祝いの作法
    お祝いの品は持参するのが正式
    結婚祝いの品の選び方
◆コラム◆結婚祝いの品
❖式・披露宴に招待されたら
    招待状の返事は早めに
    出席者の服装
    式・披露宴でのマナー
 スピーチの心得
    祝電の打ち方
第三章  葬 
1 危篤・臨終
❖危篤・臨終を迎えたら
    危篤の連絡方法
    末期の水の作法
❖死亡届の提出
    死亡届の出し方
    事故死・変死の場合
◆コラム◆
臓器提供等の意思表示があった場合
❖遺体の安置のしきたり
 湯灌・死化粧の作法
 遺体安置の作法
 枕飾りの作法
❖死亡通知を出すとき   
 死亡の連絡の方法
 死亡通知状の出し方
◆コラム◆死装束  
2 葬儀の準備
❖遺族・近親者が決めておくこと

 だれが喪主になるか
 宗教形式を決める
 規模と費用を決める
 葬儀の日程を決める
 式場を決める
 社寺・教会への依頼
◆コラム◆ 社葬・団体葬を出すとき
 遺族の服装の心得
❖納棺まで
 枕づとめ
 納棺
❖戒名と位牌
 戒名とは何か
 戒名の種類
 戒名の謝礼
 位牌
❖通夜のしきたり
 祭壇を飾る
 通夜の席次
 通夜の進行
 焼香の作法
 通夜ぶるまい
❖葬儀・告別式
 葬儀と告別式
 進行の打ち合わせ
 葬儀社を加えた打ち合わせのポイント
 葬儀の進行
 告別式の進行
❖出棺までのしきたり
 最後の対面
 くぎ打ちの儀式
 出棺
 火葬場へ向かう
 男性の喪服
 女性の喪服
◆コラム◆数珠
❖火葬場のしきたり
 火葬場へ持っていくもの
 納めの式
 骨あげの作法
◆コラム◆野辺送り
❖精進落とし
 遺骨を迎える準備
 遺骨を迎えるときの作法
 精進落とし
 事務の引き継ぎは早めに
◆コラム◆精進落としの由来
3 その他の宗教による葬儀
❖神式の葬儀
 通夜祭
 遷霊祭
 葬場祭
 出棺から忌明けまで
キリスト教による葬儀
 プロテスタントの葬儀
 カトリックの葬儀
4 弔問・会葬の心得
❖死去直後の段取り
 死去の知らせを受けたら
 近親者はすぐにかけつける
 友人・知人の弔問時期
 事故死・変死の場合の弔問
 弔電を打つとき
❖弔問のマナー
 お悔やみの挨拶
 遺体と対面するときの心得
❖香典・供物・供花
 香典の目的
 香典の差し出し方
 供花を贈るときの注意
 供物は宗教によって異なる
 香典・供物・供花の辞退
❖通夜のしきたり
 通夜への出席、作法出席、作法通夜の席次
 通夜ぶるまいの席での心得
❖葬儀・告別式
 葬儀・告別式は続けて行う
 受付での心得
 葬儀・告別式の作法
 弔辞の内容と形式
 出棺・火葬
5 葬儀のあとで
❖葬儀の後始末
 挨拶回り
 支払いと精算
 寺社、教会への謝礼
❖香典返しと忌明けの挨拶状
 香典返しの時期と金額
 忌明けの挨拶状
 遺品の整理と形見分け
 服喪期間
❖遺言と相続の法律
 遺言の方式
 遺言の効力
 相続人と相続の割合
◆コラム◆親族の範囲
◆コラム◆相続人は誰ですか?  相続の割合は?
◆コラム◆   保険金と年金
❖納骨・埋骨のしきたり
    納骨・埋骨の時期
    納骨・埋骨での祀り方
    埋骨(納骨)式
◆コラム◆墓地・墓石
◆コラム◆自分に合う墓を選ぶ
第四章  祭
1 法要と供養のしきたり
❖仏式法要
    一周忌までの法要
    初七日
    七七日忌(四十九日)
◆コラム◆位牌と仏壇
    年忌法要
    盆と彼岸
    墓参りの作法

◆コラム◆忌日表
◆コラム◆ 手元供養
❖霊祭・追悼ミサ・祈念式
    神式霊祭
    祈念式と追悼ミサ
◆コラム◆神道キリスト教の追悼儀式
2 季節の供養
    彼岸
    花祭り
    盆
    中元と歳暮

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日本人の「こころ」の「かたち」を知る二大ガイドブック

 

本書は、昨年7月に刊行された『決定版 年中行事入門』(PHP研究所)の姉妹本です。2冊揃えば、日本人の「こころ」の「かたち」を俯瞰することができます。
もうすぐ新しい元号が決まり、新しい天皇陛下が即位されます。すべての日本人が大きな節目を迎えることになりました。改元に際して、新天皇が誕生する秘儀である「大嘗祭」をはじめ、多くの儀式が執り行われます。改めて日本は、儀式にあふれている国であることを実感しています。ときには人間に恵みをもたらし、ときには人間の生命をも奪う自然というものに対して畏敬の念をもちながら、神事などのセレモニーを大切にしてきたのが日本人なのではないでしょうか。それが「冠婚葬祭」になったのではないでしょうか。 一方、日本では四季がはっきりしているがゆえに「年中行事」が発達・普及したように思います。

 

元号のもと、東京でオリンピック・パラリンピックが開催され、大阪では万国博覧会が開かれます。それらのビッグイベントが開催されるニュースを聞いたとき、わたしはかつての日本の歴史と重なりました。1964年の東京オリンピック、そして1970年の大阪万国博覧会です。じつは同時期の日本で、歴史的ベストセラーが生まれています。1970年1月30日発行の塩月弥栄子氏が書かれた『冠婚葬祭入門』(光文社カッパ・ホームズ)です。5か月間で100版を超す大ベストセラーとなり、総発行部数は300万部を超え、その記録は現在に至るまで破られていません。

 

日本という敗戦国が、五輪と万博という二大国際イベントによって国際社会に本格的デビューを果たしたとき、「国際化はしたけれども、日本の文化は大丈夫か」といった不安感が当時の日本人の心の中に湧き上がったのではないでしょうか。そうした不安が具体的には核家族というライフスタイルが確立される中、古い世間との付き合い方(冠婚葬祭)への戸惑いとして、入門書を手に取らせたのではないでしょうか。「そのやり方で大丈夫」という冠婚葬祭との付き合い方にお墨付きと安心を与えてくれたのが、塩月弥栄子版『冠婚葬祭入門』だったのかもしれません。

f:id:shins2m:20190314092844j:plain『冠婚葬祭入門』から『決定版 冠婚葬祭入門』へ! 

 

この度の改元に際し、わたしは同じような空気感を感じています。世界はインターネットで瞬時につながり、「日本」という国家、「日本人」という国民性、「日本的」という文化の輪郭のようなものが、それぞれ不明瞭になっているように思えてなりません。ゆえに、わたしたちは「日本」そのものの存続に不安を感じているのかもしれません。そこで、日本人の「こころ」を「かたち」にした冠婚葬祭の存在が非常に重要になってくると考えます。

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「贈るタイミングと表書き」

 

そもそも、冠婚葬祭とは何でしょうか。「冠婚+葬祭」として、結婚式と葬儀のことだと思っている人も多いようです。たしかに婚礼と葬礼は人生の二大儀礼ではありますが、「冠婚葬祭」のすべてではありません。「冠婚+葬祭」ではなく、あくまで「冠+婚+葬+祭」なのです。
「冠」はもともと元服のことで、15歳前後で行われる男子の成人の式の際、貴族は冠を、武家は烏帽子(えぼし)を被ることに由来します。

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「礼装のマナー 婚礼」

 

現在では、誕生から成人までのさまざまな成長行事を「冠」とします。「祭」は先祖の祭祀です。三回忌などの追善供養、春と秋の彼岸や盆、さらには正月、節句、中元、歳暮など、日本の季節行事の多くは先祖を偲び、神を祀る日でした。現在では、法事などの先祖祭祀の他にも、正月から大晦日までの年中行事を「祭」とします。そして、「婚」と「葬」があります。結婚式ならびに葬儀の形式は、国や民族によって、きわめて著しく差異があります。これは世界各国の儀式には、その国の長年培われた宗教的伝統あるいは民族的慣習といったものが反映し、人々の心の支えとなる「民族的よりどころ」となっているからです。

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「葬儀のマナー」

 

現在の日本社会は「無縁社会」などと呼ばれます。しかし、この世に無縁の人などいません。どんな人にだって、必ず血縁や地縁があります。そして、多くの人は学校や職場や趣味などでその他にもさまざまな縁を得ていきます。この世には、最初から多くの「縁」で満ちているのです。ただ、それに多くの人々は気づかないだけなのです。わたしは、「縁」という目に見えないものを実体化して見えるようにするものこそ冠婚葬祭であると思います。結婚式や葬儀、七五三や成人式や法事・法要のときほど、縁というものが強く意識されることはありません。冠婚葬祭が行われるとき、「縁」という抽象的概念が実体化され、可視化されるのではないでしょうか。

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「葬儀のあとで」

 

そもそも人間とは哲学者のウィトゲンシュタインが言うように「儀式的動物」であると思います人間は儀式を行うことによって不安定な「こころ」を安定させ、幸せになれます。その意味で、儀式とは、幸福になるためのテクノロジーなのです。さらに、儀式の果たす主な役割について考えてみましょう。それは、まず「時間を生み出すこと」にあります。日本における儀式あるいは儀礼は、「人生儀礼」(冠婚葬)と「年中行事」(祭)の二種類に大別できますが、これらの儀式は「時間を生み出す」役割を持っていました。

f:id:shins2m:20190328111549j:plain儀式=冠婚葬祭+年中行事

 

わたしは、「時間を生み出す」という儀式の役割は「時間を楽しむ」に通じるのではないかと思います。「時間を愛でる」と言ってもいいでしょう。日本には「春夏秋冬」の四季があります。わたしは、儀式というものは「人生の季節」のようなものだと思います。七五三や成人式、長寿祝いといった人生儀礼とは人生の季節、人生の駅なのです。わたしたちは、季語のある俳句という文化のように、儀式によって人生という時間を愛でているのかもしれません。それはそのまま、人生を肯定することにつながります。 そう、冠婚葬祭とは人生を肯定することなのです。

 

人間の「こころ」は、どこの国でも、いつの時代でも不安定です。だから、安定するための「かたち」すなわち儀式が必要なのです。そこで大切なことは先に「かたち」があって、そこに後から「こころ」が入るということ。逆ではダメです。「かたち」があるから、そこに「こころ」が収まるのです。人間の「こころ」が不安に揺れ動く時とはいつかを考えてみると、子供が生まれたとき、子どもが成長するとき、子どもが大人になるとき、結婚するとき、老いてゆくとき、そして死ぬとき、愛する人を亡くすときなどがあります。その不安を安定させるために、初宮祝、七五三、成人式、長寿祝い、葬儀といった一連の人生儀礼があるのです。

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2冊揃えば、鬼に金棒!

 

「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助翁は、「竹に節(フシ)がなければ、ズンベラボーでとりとめがなくて風雪に耐えるあの強さも生まれてこないであろう。竹にはやはり節がいるのである。同様に、流れる歳月にもやはり節がいる」との名言を残しています。冠婚葬祭という人生儀礼こそは、人間が生きていく上で流れる歳月の節にほかなりません。冠婚葬祭という節が人間を強くし、さらには人生を豊かにするのではないでしょうか。その意味で、本書は「人生の節」のガイドブックなのです。本書を読まれたみなさんが、新しい時代の訪れとともに冠婚葬祭の重要性を知り、人生の節をきちんと修められることによって揺れ動く「こころ」が安定され、幸福になられますように。

 



2023年3月20日 一条真也]拝