死を乗り越える夏目漱石の言葉

 

噓でも冗談でもない。
死んだら皆に柩の前で
万歳を唱えてもらいたいと
本当に思っている。
夏目漱石

 

一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、夏目漱石(1867年~1916年)の言葉です。彼は文豪というよりは国民的小説家であり、英文学者でした。現・東京都新宿区に生まれました。帝国大学(後の東京帝国大学)を卒業。代表作に『吾輩は猫である』『坊ちゃん』『虞美人草』『坑夫』『文鳥』『夢十夜』『三四郎』『こゝろ』『道草』『明暗』などがあります。『明暗』執筆途中に死去しました。



漱石のこの言葉は、どこまで本音なのか。漱石は『吾輩は猫である』でもわかるように、独特なユーモアをもっていましたが、これも彼なりの死に対するシニカルなユーモアなのでしょうか。わたしたちは子どもの頃から、夏目作品に接しているからかもしれませんが、夏目漱石というと文豪というか、高齢者のイメージ(お札にもなった肖像)があります。漱石は、49歳10カ月で亡くなりましたが、50歳にも達してなかった事実には驚くばかりですね。



もっと長生きし、晩年、あるいは老いという時間を、彼がどう描いたか。かなわぬこととは知りながら興味はつきません。彼の最期は長編小説『明暗』を執筆中だったといいます。最期の言葉は、寝間着の胸をはだけたままで、「ここに水をかけてくれ、死ぬと困るから」と叫んだといいます。日本を代表する文豪の最期としては似つかわしくない気もしますが、これもまた茶目っ気のある彼らしいものかもしれません。なお、この夏目漱石の言葉は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。

 

 

2022年5月9日 一条真也