スミスとビンタと猪木

一条真也です。
世界中を震撼させた事件でした。ブログ「第94回アカデミー賞」に書いたように、同賞の授賞式で前代未聞のハプニングが発生。妻の容姿を侮辱された俳優のウィル・スミスがプレゼンターをビンタしたのです。アカデミー賞の公式SNSは「いかなる形の暴力も容認しません」と声明を発表。スミスも自身のインスタグラムで謝罪しました。


ロシアのウクライナ侵攻によって「暴力」への批判が叫ばれている中で、スミスは公然と暴力を奮ったのです。「暴力は絶対に許せない」という意見と、「人前で妻を馬鹿にされて平然と笑う夫より断然こっちのほうがいい」という意見で世界中が二分されました。その後、主演男優賞を受賞したウィル・スミスが平手打ちしたことを涙を流して謝罪。いろんな意味で、歴史的なアカデミー賞授賞式となりました。アカデミー賞は「いかなる理由があっても暴力的行為は許されない」というメッセージを発したわけですが、テレビ中継でこの様子を見ていた世界中の人々は大きなショックを受けたようです。しかし、昭和のプロレスファンであったわたしには、ビンタなんか見慣れた光景で、既視感こそあれ、ショックなど微塵も感じませんでした。

ヤフーニュースより

 

ビンタといえば、日本では“燃える闘魂アントニオ猪木氏の代名詞です。猪木氏自身も、「ビンタの元祖なんですよ」と話しています。「ビンタで謝罪のウィル・スミス、“闘魂ビンタ”アントニオ猪木氏との意外な接点」という「ENCOUNT」発信のネット記事によれば、2人には大きな接点があるそうです。この記事を読んで、わたしは縁の不思議さというものを感じるとともに、何と言うか、愉快な気分になりました。



猪木氏は1976年6月26日、ボクシングの世界ヘビー級王者モハメド・アリと「格闘技世界一決定戦」で激突しました。「世紀の一戦」と呼ばれたこの試合は15ラウンド引き分け。プロレス的展開に欠ける試合内容に、「スーパー茶番劇」「真昼の欠闘」「世紀の上げ底ショー」など報道は酷評の嵐でした。クローズド・サーキットも大不振に終わり、猪木氏が社長を務めていた当時の新日本プロレスは約30億円ともいわれる借金を背負います。しかし、この試合は紛れもなく真剣勝負でした。現在の総合格闘技(MMA)の礎となった偉大な試合であり、試合が行われた6月26日は「格闘技の日」とされています。


一方のスミスは2001年、映画「ALI アリ」で主演し、アリさんに扮したのです。翌年4月には、PRのために来日。東京・日本武道館で行われた試写会で、ゲストとして登場した猪木氏と“猪木VSアリ戦”を再現したというのです。記事には、「あれから20年、まさかスミスがビンタで騒動になるとは・・・。猪木氏もさぞかし驚いているだろう」と書かれています。まあ、アリ役をやったぐらいですから、スミスはパンチにも自信があったと思いますが、授賞式ではパンチではなくビンタという平手打ちにしたところが彼の優しさを示しているのかもしれませんね。あれがストレートのパンチでも顔面に炸裂させていたら、顔が血だらけになって昏倒していたかもしれず、もっと大騒ぎになっていたことは間違いありません。


そもそも、猪木の闘魂ビンタはどのようにして生まれたのか? 記事には、「闘魂ビンタの起源は、諸説あるものの、参院議員時代に早稲田予備校トークゲストとして登場した際、予備校生に放った1発が語り継がれている。教壇で生徒から腹にきつめの正拳突きをもらった猪木氏は、瞬間的にビンタ。翌日ワイドショーやスポーツ紙で大きな話題になった。その後、猪木氏のビンタは受けると幸運を呼ぶとされ、受験に合格したり、社会で成功する者が続出。子どもを授かりたい女性がビンタを受けて妊娠したりと、闘魂注入として現在まで幅広い人気を集めている」と書かれています。


さらに、記事には「実際に猪木氏のビンタを受けたことがある50代男性は29日、取材に『頭がガーンとさえるね。あれはええことある。脳が覚醒されるというか、頭から吹っ飛ぶんですよ』と語り、その衝撃を昨日のように振り返っていた。異なるのは、暴力ではなくパフォーマンスとして認知されている点。東日本大震災でも希望者が殺到し、猪木氏は避難所で被災者や自衛隊員にビンタを連発。『復興が1日も早く実現しますように』と願う姿が印象的だった」と書かれています。わたしは昔から生粋の猪木信者で、死ぬまでに一度でいいから猪木氏にビンタされたいと切実に願っています。現在闘病中の猪木氏ですが、わたしをビンタするまではお元気でいていただきたい!

 

2022年3月29日 一条真也