「劇映画 孤独のグルメ」

一条真也です。
北九州でも大雪が降り積もった10日から公開の日本映画「劇映画 孤独のグルメシネプレックス小倉で鑑賞。原作コミックおよびTVドラマ版の大ファンであるわたしは大いに楽しみにしていましたが、劇映画もすごく良かったです。想像した以上に感動的な内容で、泣けました。

 

ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「原作・久住昌之、作画・谷口ジローによる漫画を原作にしたドラマ『孤独のグルメ』シリーズを映画化。仕事で訪れた土地での食事を楽しみにしている主人公が、ある依頼を受けて究極のスープ探しの旅に出る。シリーズを通して主人公を演じてきた松重豊が監督・脚本を兼任し、彼と旧知の甲本ヒロトがボーカルを務める『ザ・クロマニヨンズ』が主題歌を担当。共演には『俺俺』などの内田有紀、『若き見知らぬ者たち』などの磯村勇斗のほか、塩見三省、杏、オダギリジョーらが名を連ねる」

 

ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「輸入雑貨商を営む井之頭五郎松重豊)は、かつての恋人の娘である松尾千秋(杏)からの連絡を受け、フランス・パリを訪れる。千秋と共に彼女の祖父・一郎(塩見三省)を訪ねると、『子供のころに飲んでいたスープをもう一度飲みたい』と、そのスープのレシピ探しを依頼される。わずかな地名を手掛かりに五郎は究極のスープを求めてレシピと食材探しを始めるが、いつしかそれは国境を越えた壮大な旅となっていく」

 

 

原作は「パンジャ」に1995年から1996年にかけて連載され、1997年に単行本化されました。新装版(SPA!コミックス)のアマゾンの内容紹介には、「個人で輸入雑貨商を営む主人公・井之頭五郎が一人で食事をするシチュエーションを淡々と描くハードボイルド・グルメマンガ。井之頭五郎は、食べる。それも、よくある街角の定食屋やラーメン屋で、ひたすら食べる。時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき、彼はつかの間自分勝手になり、『自由』になる。孤独のグルメ。それは、誰にも邪魔されず、気を使わずものを食べるという孤高の行為だ。そして、この行為こそが現代人に平等に与えられた、最高の『癒し』といえるのである」とあります。この言葉は、ドラマ冒頭のナレーションでも使われていますね。

 

ドラマ版「孤独のグルメ」は、2012年よりテレビ東京系列で放送されているシリーズです。現在、10のテレビシリーズと、スペシャルドラマ版が数作放送されています。主演は松重豊で、本作が初主演作品です。テレビ東京特有の典型的な低予算番組でありながら、DVDや動画配信などの二次収入で多額の利益を上げており、テレ東を代表する看板番組となっています。久住はSeason1以前にも長嶋一茂を主演としたドラマ化のオファーがあったが断ったそうです。また久住は、別のインタビューで「漫画とドラマとは別」として、漫画版の五郎とはあえて似てない人間の方が良いと思ったこと、候補者の中で「ものすごくロケ弁を美味そうに食べる」という点を評価して松重を推したことなどを明らかにしています。

 

ドラマ「孤独のグルメ」では、松重演じる井之頭五郎の健啖ぶりが、放送している時間帯も伴って視聴者の食欲を刺激し「夜食テロ」として人気を博し[、松重の知名度を大きく上げることとなりました。当初は成功を不安視して「漫画とは別物」と述べていた久住も、言を訂正して絶賛する仕上がりとなりました。松重はSeason3で辞するはずでしたが、意外にも高齢者たちから「次は何時やるのか?」と言われ、続ける意義が残ったことと、人間ドックにも引っかからなかったために現在に至っているとか。シーズン開始やスペシャル放送前には松重が本番組に対してネガティブなコメントをすることが多く、それを名物として捉えられているファンも多いようです。そして、今回の映画化に至ったわけですね。

 

「劇映画 孤独のグルメ」では、テレビドラマ版に引き続き松重豊が主演を務め、監督と脚本も松重が兼任することになりました。日本(長崎・五島列島)、パリ、韓国が主な舞台ですが、映画に登場したパリのオニオンスープと韓国のテグタンが美味しそうでしたね。制作発表会見で松重が語ったところでは、きっかけはドラマがSeason10まで続く中でスタッフの入れ替わりが進み「若手スタッフが育っていない」と感じたことだという。そこでSeason10の撮影と並行して、若手スタッフの育成の場になるような作品を作ろうという話が出る中、映画を撮る話が浮上したといいます。



今回の映画版では、究極のスープを求めてフランス、韓国、長崎、東京を駆け巡る五郎でしたが、行く先々でさまざまな人物や事件に遭遇し、次第に大きな何かに巻き込まれていきます。韓国領の島で暮らす女性・志穂を内田有紀、スープ探しを手伝うことになる青年・中川を磯村勇斗、五郎をフランスに呼ぶ千秋を杏、千秋の祖父・一郎を塩見三省、中華ラーメン店「さんせりて」の店主をオダギリジョー、五郎の同業者・滝山を村田雄浩が演じ、ドラマ「梨泰院クラス」のユ・ジェミョンが韓国入国審査官役で特別出演。いずれも観客の心にしっかりと残る印象深い演技でしたが、現在49歳という内田有紀がまるで20代のように若々しいのには驚きました。

 

「劇映画 孤独のグルメ」の監督は、当初はかつて松重が出演した映画「シェイキング東京」(2008年)で監督を務めたポン・ジュノを考えたもののスケジュールの都合で断られ、日本の監督も何人か考えたものの「(既存の監督だと)日本の映画システムに若手スタッフが飲み込まれてしまう」ことを危惧し、自ら監督を務めることにしたそうです。脚本もテレ東側が野木亜紀子の起用を提案し松重に無断で野木に話を持っていったほどでしたが、松重が「(脚本も)自分でやる」として撤回させたとか。「劇映画」という表現を用いたのも、「単なるテレビドラマの延長線上としての劇場版にはしたくない」と思ったことの現れだといいます。松重と長年の交流があるという甲本ヒロトによる主題歌も良かったですね。最後に、映画に登場する「子どもの頃に食べたあの料理が食べたい」といった味の探偵みたいな仕事は需要があると思いました。

 

2025年1月11日  一条真也