グリーフケアに関する講演会を実施

一条真也です。
葉月晦日一般社団法人 全日本冠婚葬祭互助協会が発行する「互助会通信」の最新号(458号)が届きました。そこには、ブログ「グリーフケア講演in横浜」で紹介したイベントの記事が掲載されていました。

f:id:shins2m:20210831151141j:plain「互助会通信」458号 

 

記事は、「フューネラルビジネスフェア2021 グリーフケアに関する講演会を実施」のタイトルで、「2021年6月24〜25日、全互協などが後援し、パシフィコ横浜で開催されたフューネラルビジネスフェア2021には、107社が出展し、8280名(前回比69.9%)が来場しました。その中で、佐久間庸和副会長・グリーフケアPT座長が講演会を実施。グリーフケア資格認定制度の概要や、グリーフケアの意義と役割について説明し、盛況のうちに閉会しました。」のリード文が書かれています。続いて、「■講演要旨『重要性高まるグリーフケアの意義と役割』 (株)サンレー代表取締役社長、全互協副会長/グリーフケアPT座長 佐久間庸和」として、以下のように書かれています。 
「今の世の中は、悲嘆に満ちた社会『グリーフフルソサエティ』と言えます。血縁関係が希薄になり、神社仏閣が減少し、コロナ禍によって、結婚式や披露宴を行わない、葬儀を縮小するといった状況が加速しています。このような中、葬儀施行や医療現場など、様々な現場でグリーフケアが求められるようになってきました。
グリーフケアとは、『ひと・もの・こと』の喪失によるグリーフ(悲嘆)にくれている人を、心を込めてお世話することです。対象者が事実を受け入れ、環境の変化に適応するプロセスを支援していきます。グリーフの原因は、死別による愛する人の喪失だけではなく、所有物や環境、役割、自尊心の喪失なども原因となり得ます。これらによる深い悲しみは、身体の健康にも大きな影響をもたらし、抑うつ、食欲不振、睡眠障害などを引き起こすこともあるほどです。特に死別による人生最大の喪失を抱えたご遺族にグリーフケアを行うことは、社会を健全に保つためにも欠かせません。日本の社会が抱える問題の一つに、自殺がありますが、自殺の要因で圧倒的に多いのはうつ病です。そして、うつ病になるきっかけとして、配偶者の死は見逃すことができません。ご遺族の近くにいる葬祭業の人々がグリーフケアを行うことが、自殺者数の減少にもつながる可能性を秘めているのです。
今年の6月、グリーフケア資格認定制度がいよいよスタートしました。この制度では、グリーフケアの基礎知識を持って、グリーフを抱える人と向き合い、必要に応じてケアができる専門職へ橋渡しする能力を備える者をグリーフケア士として認定します。さらに今後は上位資格として上級グリーフケア士も設置。実践力が身に付き、現場におけるグリーフケアのファシリテート(サポートや手助け)ができる能力を備える者を認定します。受験対象者は葬祭業界関係者だけに限らず、職務を通してグリーフケアの実践が必要な方(医師や看護師、介護士などのエッセンシャルワーカー)や、遺族会患者会などで寄り添ってケアをする方、グリーフケアに関心のある一般の方など、多くの方に受験していただけるようにしました。また、グリーフケアを学ぶすべての方に、正しいアプローチをしていただくため、制度設計からテキスト制作、試験問題に至るまで、 上智大学グリーフケア研究所の監修を受けています。
葬祭業に関わる方々がグリーフケアを実践することは、葬祭業・互助会の存続と復興にもつながると考えています。なぜなら、過去のパンデミックでは、十分に看取りや葬儀ができなかった人々の後悔や悲しみ、罪悪感の高まりによって、感染収束後には葬儀が重要視されてきた歴史があるからです。コロナ禍において多くの人が、新型コロナウイルス感染症による肺炎で看取りや葬儀ができないといった深い悲しみを経験しています。だからこそ、収束後には、心豊かに儀式を行う時代が訪れる可能性があるのです。儀式は、不安定なものに形を与えることで安定させること。人の死によって不安定になった心を安定させるために、葬儀があります。多くの方にグリーフケア士を取得していただき、業務などで役立てていただければと思います」

f:id:shins2m:20210831151237j:plain「互助会通信」458号  

 

「互助会通信」458号には、一条真也として連載しているコラム「独言」も掲載されており、今回は「サービスからケアへ」のタイトルで以下のように書きました。
「6月25日、パシフィコ横浜で講演を行った。『フューネラルビジネスフェア2021』シンポジウム内の講演で、『重要性高まるグリーフケアの意義と役割』の演題だった。冒頭、ついにスタートした『グリーフケア資格認定制度』の話から始めた。わたしは、全互協のグリーフケアPTの座長として、かねてから資格認定制度の発足に取り組んできた。まず、同資格者認定制度の背景にある、葬儀の施行に加え、サポートやケアなどのスキルを持った専門職(グリーフケア士)育成の重要性について解説した。
続いて、『心のケアの時代』をテーマに論じた。『サービス』から『ケア』に焦点を当て、縦の関係(上下関係)であるサービスと横の関係(対等な関係)であるケアの本質を求め、その違いを説明した。また、『さまざまなケア』として、ヘルスケア、メンタルヘルスケア、コミュニティーケア、インフォーマルケア、ターミナルケア、緩和ケア、スピリチュアルケア、そしてグリーフケアについて詳説した。無縁社会に加え、コロナ禍の中にある日本で、あらゆる人々の間に悲嘆が広まりつつあり、それに対応するグリーフケアの普及は喫緊の課題であると訴えた。
さらには、『ケアすることは、自分の種々の欲求を満たすために、他人を単に利用するのとは正反対のことであり、相手が成長し、自己実現することを助けること』などのケアについての見解を示し、講演を結んだ。葬祭業は、サービス業というよりもケア業である。他者に与える精神的満足も、自らが得る精神的満足も大きい。いわば『心のエッセンシャルワーク』とでも呼ぶべきだろう。グリーフケア士を含む冠婚葬祭業に携わる者が、人々の心を支えるケアワーカーとして、広く尊敬を集める時代は近いと信じる」

 

2021年8月31日 一条真也拝