千葉真一さん、逝く!

一条真也です。
俳優の千葉真一さんが亡くなられました。19日5時26分、新型コロナウイルスによる肺炎のため千葉県・君津市の病院で息を引き取られました。82歳でした。

f:id:shins2m:20210820084437j:plainヤフーニュースより 

 

所属事務所によると、千葉さんは8月8日より新型コロナによる肺炎が悪化したため入院。酸素吸入を続けている状態だったが、回復に至らず息を引き取られたそうです。日本を代表するアクション俳優であり、常に身体を鍛えておられた千葉さんの命をも奪ったコロナの恐ろしさを改めて思い知りました。

f:id:shins2m:20120228193857j:plain千葉真一さんと

 

わたしは千葉さんとお会いしたことがあります。場所は、ブログ「孔子文化賞授賞式」で紹介した2012年2月28日に東京・目白の椿山荘で行われた「第2回孔子文化賞」の授賞式の会場でした。その日、わたしは「孔子文化賞」を、千葉さんは「日中映画賞」を受賞され、2人で一緒にテレビの取材も受けました。わたしたちはお互いに「おめでとうございます!」と言い合って、がっちり握手しました。その後、しばらく歓談しましたが、千葉さんが「一条さんは映画にお詳しいですね!」と言って下さったことを記憶しています。なつかしい思い出です。


わたしは、もともと千葉さんのファンでした。1939年生まれで福岡県のご出身ですが、わたしが最初に千葉さんの存在を知ったのはTBSのTVドラマ「キイハンター」(1968年~1973年)でした。わたしがお世話になった丹波哲郎さんも出演されていましたが、千葉さんは主演の風間洋介役で、アクションシーンがとにかくカッコ良かったです。同作で共演された女優の野際陽子さんと1973年に結婚し、1994年に離婚。娘さんは女優の真瀬樹里さん。その後に再婚され、息子さんは俳優の新田真剣佑、眞栄田郷敦のイケメン兄弟です。


千葉さんは、フジテレビ系ドラマ「影の軍団」シリーズ、NHK大河ドラマ風林火山」などにも出演され、話題を呼びましたが、「キイハンター」以降でわたしが千葉さんに夢中になったのは、一連の空手映画に主演された頃でした。特に、1975年の「けんか空手極真拳」では、主役の大山倍達を演じ、圧倒的な存在感を示しました。まさに「和製ブルース・リー」でした。千葉さんは、極真空手四段、少林寺拳法弐段でもありましたが、もともとオリンピックの体操選手を目指していただけあって、特技の器械体操や乗馬・スキーを活かしたアクロバティックなスタント・擬斗・殺陣に定評がありました。


千葉さんは、吹き替えに頼らないで、自ら演じるアクションスターの元祖ともいえる存在でした。半世紀以上の60年を超える芸能生活の中で、映画・テレビドラマ・演劇などで計1500本以上の作品に出演し、監督・プロデュースと幅広く活躍されました。また、ジャパンアクションクラブ (JAC)の創始者で、俳優・スタントマンの育成もしてきました。志穂美悦子真田広之大葉健二・黒崎輝・渡洋史ら千葉さん以外の主演俳優や、助演俳優・スタントマン・スーツアクターやアクション監督などスタッフを育て、1980年代に入ると千葉さんの念願の1つであったミュージカルを発表し、多角的に活動していました。JACには、千葉さんの親友である夏八木勲桜木健一萩原佐代子といったなどのJACに所属していない俳優たちもアクションを学ぶために、練習に通っています。

 

千葉さんは、日本を代表するアクションスターとして海外でも人気を博し、Sonny Chiba(サニー千葉)の名で知られています。2003年に公開されたクエンティン・タランティーノ監督の「キル・ビルVol.1」では、服部半蔵を演じています。彼は「影の軍団」シリーズの主人公で、伝説の殺し屋・刀鍛冶。服部半蔵としては100代目にあたります。彼の打った刀は高い実力を持つ殺し屋でなければ授かれません。現在は引退、「すしや」という店名のマズい寿司屋を沖縄で経営していましたが、自分と生まれてくる子供を殺そうとした暗殺者チームへの復讐に燃えるザ・ブライド(ユマ・サーマン)にために刀を打ちます。ド派手なアクションシーンで世界中で大ヒットした「キル・ビル」ですが、千葉さんが女優たちに剣術を指導したそうです。ブライドとの一騎討ちの際、オーレン石井が履物を脱ぐのは千葉さんのアイデアだとか。

 

 

千葉真一さんが亡くなられたニュースには本当に驚きました。というのも、そのニュースを知った前日、わたしは千葉さんのインタビュー記事を読んだばかりだったからです。『役者は一日にしてならず』春日太一著(小学館)という本に収められたインタビューです。拙著『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)が「愛する人へ」のタイトルで映画化されることになり、映画製作の勉強のために最近は俳優や女優に関する本を読みまくっている最中でしたが、千葉さんのインタビューを読んで、孔子文化賞の授賞式でお会いしたときのことを思い出しました。その直後に訃報に接し、大変驚いたわけですが、じつは読書をして誰かのことを思い出したら、直後にお亡くなりになったという経験はこれまでにも度々あります。読書は、わたしにとってシンクロニシティが発動するスイッチなのかもしれません。多くの映画やドラマに出演されて多くの方々に勇気と感動を与え、多くの後輩俳優を育成されて日本の芸能界に多大な貢献をされた千葉真一さんの偉大な生涯に深く敬意を表し、心より御冥福をお祈りいたします。合掌。



2021年8月19日 一条真也