「一礼」と「一同礼」

一条真也です。
男子ゴルフの松山英樹選手が日本男子で初制覇した米マスターズ・トーナメントでは、松山選手を支えた早藤将太キャディーの行動も話題を呼びました。松山選手の優勝後、早藤キャディーは最終18番のグリーンでピンをカップに戻した後、脱帽してコースに向かって一礼したのです。

f:id:shins2m:20210414185645j:plain
コースに一礼する早藤キャディー(写真PGA)

 

日本人らしいこのシーンを映した動画が米メディアのSNSなどで反響を呼び、「コースに敬意を示す素晴らしい振る舞いだ」など称賛の声が上がりました。12日、早藤キャディーは当時の心境について「特別な感情はありませんでした。ありがとうございました、ただそれだけでした」と振り返りました。ラウンド前後のコースに向けて、一礼するゴルファーは日本では必ずしも珍しくありません。しかし、優勝直後で会場が興奮に包まれる中で自然に出た振る舞いが、国内外で反響を呼んだようです。

f:id:shins2m:20210413141749j:plain

 

早藤キャディーの「一礼」を紹介したSNSは世界中に拡散されました。米スポーツ専門局ESPNのTwitter動画は、日本時間13日午前7時までに再生回数が140万回を突破、「リツイート」は1.1万件に上り、5万件の「いいね」が集まりました。海外から称賛コメントが多く寄せられましたが、元世界ランキング1位のリー・ウェストウッド(イングランド)は「これまで目にしたゴルフ、スポーツにおいて、おそらく最も敬意があり、相応しいことだ。ヒデキ、彼のキャディ、そして日本は素晴らしかった」と投稿しています。

f:id:shins2m:20210413141812j:plain

 

わたしは、このエピソードに感動をおぼえました。早藤キャディーの「一礼」に感動したというより、日本人なら何ということのない「一礼」が世界中の人々に感動を与えたということに感動したのです。思えば、莫大な資金を使って五輪を開催するよりも、礼をするというノーコストのふるまいで世界に感動を与え、日本のイメージを大いに向上させたというのは素晴らしいことではありませんか!

f:id:shins2m:20210413142716j:plainわが人生の「八美道」』(現代書林)

 

「一礼」とは「お辞儀」のことですが、お辞儀というのは世界中の人々に感動を与えるぐらい美しいのです。コロナ禍の中で拳を合わせたり、スポーツ選手たちがやっているような肘と肘を合わすような行為はけっして美しくありません。わが社の佐久間進会長は礼法家でもあります。実践礼道・小笠原流の宗家なのですが、『わが人生の「八美道」』(現代書林)という著書で、ブッダの「八正道」ならぬ「八美道」というものを提唱しています。「自分には正しいことはわからなくても、美しいことはわかる」というわけですが、その象徴が礼法なのです。早藤キャディーの「一礼」に感動した人々も、「正しさ」ではなく「美しさ」を感じたのでしょう。

f:id:shins2m:20210413142733j:plain礼を求めて』(三五館)

 

コロナ禍の中にあって、わたしは改めて「礼」というものを考え直しています。特に「ソーシャルディスタンス」と「礼」の関係に注目し、相手と接触せずにお辞儀などによって敬意を表すことのできる小笠原流礼法が「礼儀正しさ」におけるグローバルスタンダードにならないかなどと考えています。西洋式の握手・ハグ・キスではコロナ時代にマッチしないからです。じつは佐久間会長だけでなく、わたしも礼法家の端くれです。小笠原流惣領家第三十二代施主・小笠原流礼法宗家の小笠原忠統先生から免許皆伝されました。そんなわが社は、何よりも「礼」というものを重んじています。

f:id:shins2m:20210413141935j:plain
わが社の「一同礼」 

 

みんで一斉にお辞儀をする「一同礼!」がサンレーの代名詞になっています。毎日の朝礼や各種の式典、進発式、起工式、竣工式、責任者会議、平成心学塾などで「一同礼」をすることが習慣ですが、その写真をわたしがブログにアップし続けてきたこともあり、今では「一同礼!」でネット検索すると、わが社の画像が大量に出てきて驚きます。「礼の社」としては本望です。これからも、わが社では「一同礼!」で「こころ」を1つにしたいと願っています。最後に、わたしはコロナ時代の「礼」についてのガイドブックである『イラストでわかる 美しい所作・ふるまい』(仮題)という監修書を7月に刊行する予定です。

f:id:shins2m:20210413142319j:plain

 

2021年4月12日 一条真也