グリーフケアという使命

一条真也です。
18日の朝、ブログ「春季例大祭」で紹介した神事と直会(朝粥会)の後、松柏園ホテルの神殿で恒例の月次祭が行われました。

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天道塾のようす

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最初は、もちろん一同礼!

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冒頭に挨拶する佐久間会長

朝粥会の後は、恒例の「天道塾」を開催しました。最初に佐久間会長が挨拶を行いました。会長は、「コロナ後の社会では、互助会の役割はますます高まるものと信じています。時代の変化に合わせた新しい募集の形を考えて、未来を創造していきましょう。今日は、グリーフケアについての話を聴きたいと思います」と述べました。

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グリーフケア活動を報告する市原課長

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わが社の取り組みを紹介

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わたしの考えも紹介されました

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報告する市原課長

 

それから、グリーフケア推進課の市原課長が、「グリーフケアとその取り組みについて」というテーマで報告を行いました。まず、「グリーフケアの時代」という動画を流して、参加者にグリーフケアについての基礎知識とわが社の活動を紹介しました。それから、市原課長が捕捉説明をしました。最初は緊張が隠せなかった市原課長でしたが、グリーフケアへの想いに次第に話は熱を帯びてきました。この情熱があれば、わが社のグリーフケアは大丈夫だと思いました。

f:id:shins2m:20210318093748j:plain春のマスクで登壇しました

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春のマスクを取りました

 

市原課長の話が終わると、社長であるわたしが登壇して、グリーフケアの話の総括を行いました。今日は春をイメージしたピンクの不織布マスクを着けました。わたしは、まず、「コロナ禍という前代未聞の国難を経て、社会が大きく変化しています。関連書をまとめて読みましたが、『資本主義の終焉』とか『ビジネスの役割は終わった』とか『新しいコミュニズムの時代が来る』といったショッキングな言説が多いです。確かに一理ありますが、少し行き過ぎた部分も感じます。しかし、『グレート・リセット』とか『エコノミーにヒューマニティを取り戻す』とか『相互扶助の社会へ』などのキーワードは的確だと思います。

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冠婚葬祭業はエッセンシャル・ワーク

 

これらのキーワード群を前にしたとき、わたしは「これからの社会は、冠婚葬祭互助会の時代ではないか」という思いがしてなりません。冠婚葬祭業は医療や介護と並んで、社会に必要なエッセンシャル・ワークであると考えています。そして、医療・介護・冠婚葬祭といったエッセンシャルワークに従事する人々の待遇がもっともっと高くなる社会でなければならないと思っています。経済学の分野で大ベストセラーとなっている『人新世の「資本論」』を書いた大阪市立大学大学院経済学研究科准教授の斎藤幸平氏は、同書で「現在高給をとっている職業として、マーケティングや広告、コンサルティング、そして金融業や保険業などがあるが、こうした仕事は重要そうに見えるものの、実は社会の再生産そのものには、ほとんど役に立っていない」と述べています。

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「ブルシット」から「エッセンシャル」へ

 

アメリカの人類学者であるデヴィッド・グレーバーが指摘するように、これらの仕事に従事している本人さえも、自分の仕事がなくなっても社会になんの問題もないと感じているとして、斎藤氏は「世の中には、無意味な『ブルシット・ジョブ(クソくだらない仕事)』が溢れているのである。ここでの矛盾は、『使用価値』をほとんど生み出さないような労働が高給のため、そちらに人が集まってしまっている現状だ。一方、社会の再生産にとって必須な『エッセンシャル・ワーク(「使用価値」が高いものを生み出す労働)』が低賃金で、恒常的な人手不足になっている。だからこそ、『使用価値』を重視する社会への移行が必要となる。それは、エッセンシャル・ワークが、きちんと評価される社会である」と述べますが、まったく同感です。

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熱心に聴く人びと

 

 新型コロナウイルス感染症によって多くのものが寸断されてしまった今、社会延滞がここで一度立ち止まり、本当に価値があるものは何かを冷静に見つめ直す契機が訪れました。何事も陽にとらえて考えてみると、冠婚葬祭互助会には明るい未来が待っていることがわかりました。そして、それはグリーフケアにかかっています。わたしは、グリーフケアの普及が、日本人の「こころの未来」にとっての最重要課題と位置づけています。上智大学グリーフケア研究所客員教授として教鞭をとりながら、社内で自助グループを立ちあげグリーフケア・サポートに取り組んできました。2020年からは、副会長を務める全互協と同研究所のコラボを実現させ、互助会業界にグリーフケアを普及させるとともに、グリーフケアの資格認定制度の発足に取り組んでいます。全互協のグリーフワークPTの座長として、資格認定制度を今年から開始するべく活動を進めています。

f:id:shins2m:20210318094631j:plainなぜ、いま、グリーフケアなのか?

 

「なぜ、いま、グリーフケアに取り組むべきなのか」と疑問に思う人もいるでしょう。わたしたちの業界に携わっている方は、「葬儀は必要だ」と考えていると思います。しかし、一方で葬儀は必要ないという方もおられます。そういう方々に、葬儀が必要である理由をどのように説明できるでしょうか。伝統や縁・絆の大切さ、感謝の想い、故人を思う時間・・・・・・、すべて正しいですが、それだけでは通用しないのではないでしょうか。葬儀は不要という方に納得いただくには、そこにサイエンスの光を当てなければならない。そこで浮かび上がるのが、「こころの科学」であるグリーフケアです。私は著書のなかでも何度か言及してきましたが、葬儀というものを発明しなかったら、人類はとうの昔に滅んでいたと思います。

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葬儀の2つの目的とは? 

 

葬儀には2つの大きな目的があります。1つは故人を供養すること、もう1つは遺された方の心をケアすること、つまりグリーフケアです。一緒に生活していた家族や配偶者、子どもが亡くなってこの世から消えてしまったら、何事もなかったように、それまでと同じ生活していくことは到底できません。心に空いた大きな穴をそのままにしていたら、精神的に病んでしまいます。実際、うつ病は古代からあり、そのせいで自死する人もいたといわれています。そうならないように、いったんけじめをつける知恵、あるいは文化装置が葬儀だったのです。その重要性がわかっていたからこそ、日本だけでなく、世界中でそれぞれの葬儀が脈々と受け継がれてきたのでしょう。

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葬儀がなければ、人類は滅亡していた!

 

葬儀という知恵がなければ、悲嘆が深くなり、精神的に病んで自殺に至る。自死の連鎖が起こり、人類は滅亡していたと、わたしは思っています。最近は「葬式は、要らない」という人たちが現われ、その考えに賛同する人たちも少なくないという現状は、危機的な状況です。家族が亡くなったことを近所にも職場にも知らせない方もおられますが、健全とはいえないでしょう。その背景には、ご自宅で亡くなる方が減り、子どもたちが祖父母の亡くなる場面を見ることもなくなり、葬儀の意味がわかりにくくなっているということがあると思います。

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熱心に聴く人びと

 

葬儀にはグリーフケアとしての役割があり、それが遺された方にとっていかに重要か。それこそ、葬儀が必要である最大の理由だと思います。一般に葬祭ビジネスにとって優秀なスタッフとは、これまでは単価の高い葬儀を受注する人だったと思います。当社もそうでした。しかし、現在の消費者はどのように故人を見送るかより、なるべく費用をかけないことに関心があります。こうした多くの消費者の考えと裏腹に、単に単価を上げようとしていては、生き残ることはできません。

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いま冠婚葬祭互助会がやるべきこと

 

いま冠婚葬祭互助会がやるべきことは、葬儀にはどんな意味があるのか、どういう重要性があるのか、また故人をしっかり見送ることが悲しみを癒せる最大の力であることをきちんと理解し、お客様にお伝えすることです。言い換えれば、これからはグリーフケアをしっかりサポートすることが、葬儀という仕事を続けていくうえでの前提になる。言い換えれば、グリーフケアとは葬儀サービスの「付加価値」などではなく、「絶対条件」となる。これが、「グリーフケアがどうビジネスに結びつくのか」という問いに対する答えになると思います。

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日本的グリーフケアの本質は「集い」

 

わたしは、グリーフケアの普及が、日本人の「こころの未来」にとっての最重要課題と位置づけています。じつは、わが社がこれまで行ってきた「隣人祭り」とか「ともいき倶楽部」とか「笑いの会」とか「気功教室」とか「月へ送魂」とか「禮鐘の儀」とか・・・すべては、グリーフケアに関わっています。上智大学グリーフケア研究所島薗進所長は、「欧米のグリーフケアは『カウンセリング』を中心に発展してきたが、日本のグリーフケアは『集い』が中心になる」と発言されていますが、まさに、わが社の歩みのことではないかと個人的には思っています。

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初期設定は「日本民俗学」にあり!

 

なぜ、わが社の従来の活動がすべてグリーフケアになりうるのか。それは、わが社の初期設定に秘密があります。國學院大學で日本民俗学を学んだ佐久間会長は、「日本人を幸せにする」という柳田国男折口信夫の志を実現する器として冠婚葬祭互助会に出合ったのです。柳田国男の『遠野物語』などは、同じ村に住む者同士が助け合い、慰め合うエピソードの宝庫で、まさに「相互扶助」の物語であると言えます。そして、「相互扶助」というのは「グリーフケア」によって完成されるのです。要するに、グリーフケアを取り入れることによって、真の互助会が誕生すると言えるでしょう。

f:id:shins2m:20210318100412j:plain わが社の使命を果たします!

 

互助会が冠婚葬祭のすべてとグリーフケアを行うことによって人が生きていくうえで必要な儀式とケアが行えることになります。古来よりその役目を担ってきた地域の寺院の代わりに不可欠なとして存在していくことで地域社会に必要なものとして、より根差していけるのではないでしょうか。また、地域ごとにセレモニーホールを持つ冠婚葬祭互助会は寺院が担ってきた地域コミュニティの中心としての存在となり得ることが可能です。それは人と人が関わりあう地域社会の活性化にもつながっていくと考えられます。この日は、以上のような話をしました。グリーフケアによって、ミッショナリー・カンパニーとしてのわが社の使命が果たせると考えています。

f:id:shins2m:20210318100818j:plain最後は、もちろん一同礼!

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松柏園の庭園にて

 

2021年3月18日 一条真也