ラグビーのような社会へ

一条真也です。
昨日のラグビーW杯で、日本は因縁の相手であるスコットランドを破って、初の決勝トーナメントへの進出を決めました。わたしを含め、多くの日本人が歓喜しました。今朝、「西日本新聞」に「令和こころ通信 北九州から」の第12回目が掲載されました。月に2回、本名の佐久間庸和として、「天下布礼」のためのコラムをお届けしています。今回のタイトルは、ずばり、「ラグビーのような社会へ」です。

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西日本新聞」2019年10月14日朝刊

 

日本中が、ラグビーのワールドカップ(W杯)の話題で持ちきりです。今後も11月2日まで熱い戦いが繰り広げられます。開催前は「サッカーならいいけど、ラグビーのW杯ねぇ」と今一つ興味が湧かなかったわたしも、世界の強豪チーム同士の熱い闘いに、「ラグビーとは、これほど面白いスポーツだったのか!」と見方が一変しました。

 

強豪ウェールズ北九州市で事前キャンプを行い、地元の子供たちがウェールズ聖歌を歌うなどして歓迎しました。この粋な演出による北九州市の「おもてなし」に、ウェールズの選手や関係者は深い感銘を受けたといいます。9月28日には、日本は世界ランク2位(当時)のアイルランドから大金星を挙げました。ラグビーは番狂わせが起きにくいとされていますが、日本は前回大会で南アフリカを破ったのに続き、再び優勝候補からの金星です。

 

ラグビーという競技は、「ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワン」という思想に支えられています。「一人は全員のために、全員は一人のために」と訳されることが多いです。由来は古代ゲルマン人の言い伝えなど諸説あります。19世紀半ばのアレクサンドル・デュマ著『三銃士』で、青年ダルタニアンと意気投合した三銃士が結束を誓う言葉として出てくるのが有名です。同時期の空想的社会主義者、エティエンヌ・カベーのベストセラー『イカリア旅行記』の表紙にも登場しますが、この言葉は、相互扶助の思想として社会にも影響を与えました。

 

ロシアのヒョードルクロポトキンは一般にはアナキストとして知られていますが、ロシアで革命家活動を終えたのち、亡命先のイギリスで1902年に『相互扶助論』を書きました。クロポトキンによれば、きわめて長い進化の行程のあいだに、人類の社会には互いに助け合うという本能が発達してきたといいます。近所に火事があったとき、人々が手桶に水を汲んでその家に駈けつけるのは、隣人しかも見知らぬ人に対する愛からではありません。愛よりは漠然としていますが、しかしはるかに広い互助の本能が人間を動かすというのです。

 

「相互扶助」という考え方は、多くの人々が少額を出し合って万一に備える保険業や、わが社・サンレーのような冠婚葬祭互助会業の根本理念にもなっています。そもそも互助会の「互助」とは「相互扶助」を縮めたものなのです。そして、わが社は「互助会から互助社会へ」をスローガンとしています。互助社会とは、共生社会であり、思いやり社会でもあります。ラグビーチームのような社会が本当に実現したら、これ以上に素晴らしいことはありません。

 

2019年10月11日 一条真也