故人は家族だけのものではない

一条真也です。
日本初の終活情報誌「ソナエ」の2019年秋号が刊行されました。わたしは以前、同誌に「一条真也の老福論」というコラムを連載していました。現在は、WEB「ソナエ」で「一条真也の供養論」というコラムを連載しています。

f:id:shins2m:20190921094636j:plainソナエ」2019年秋号の表紙

 

今号では「墓じまい」がメインの特集でしたが、「著名人に学ぶ 葬儀と供養」として、亡くなったジャニー喜多川さんの家族葬、お別れ会の特集も組まれました。そこでは、「SOGI」の元編集長である碑文谷創氏とともに、わたしがコメントを寄せました。わたしは、「故人は家族だけのものではない」と題して、持論を展開しました。

f:id:shins2m:20190921094758j:plainソナエ」2019年秋号 

 

9月4日、ジャニー喜多川氏の「お別れ会」が東京ドームで行われました。同所でお別れ会が開催されるのは初めてで、祭壇や遺影のサイズも巨大でした。二部制で合計約9万人が参列したといいますが、まさに空前のスケールといえるでしょう。

 

芸能人では、これまでhide(X JAPAN)5万人、忌野清志郎4万2000人、政治家では吉田茂4万人でした。世界を見ると、チトー(ユーゴスラビア大統領)が最大とされたそうですが、昭和天皇の御大葬がそれを上回ったという記事があります(葬列の見送り57万人、最終記帳者数900万人)。

 

しかしながら、今回のジャニー氏のお別れ会は、少なくとも芸能界史上最大であり、おそらくは私人としても最大ではないでしょうか。ジャニー氏はショービジネスを知り尽くした男ですが、お別れ会こそは人生最後にして最大のショーであることを、わたしたちに教えてくれたように思います。

 

7月12日には、渋谷区内にあるジャニーズ事務所所有のビルで「家族葬」が行われ、ジャニー氏は、自らがプロデュースした約150人のタレントたちに見送られました。会場は、ジャニーズJr.の稽古場で、祭壇や照明、音響などはタレントたちやスタッフが出来る限り自らの手で準備しました。温かみのある儀式でした。

 

そもそも「家族葬」などという言葉が誤解を招くもとになっていますが、故人は家族だけの所有物ではありません。友人や知人や周囲の人々との縁や絆があって、はじめて故人は自らの「人生」を送ることを忘れてはなりません。ジャニー氏の「家族葬」は従来の「家族葬」の定義を一変する画期的なセレモニーであったと思います。

 

常に時代を創ってきた男が、最後に新しい「葬」のカタチを示してくれました。アメリカ文化の影響が強かった同氏にとっては、「家族」よりも「ファミリー」の方が大切だったのかもしれません。わたしには、そう思えました。

 

終活読本 ソナエ vol.26 2019年秋号 (NIKKO MOOK)
 

 

2019年9月22日 一条真也