縁を生かす沖縄に学ぶ

一条真也です。
15日、「西日本新聞」に「令和こころ通信 北九州から」の第6回目が掲載されました。月に2回、本名の佐久間庸和として、「天下布礼」のためのコラムをお届けしています。今回のタイトルは「縁を生かす沖縄に学ぶ」です。

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西日本新聞」2019年7月2日朝刊

 

先月23日は、戦後74年目の沖縄の「慰霊の日」でした。1945年6月23日に沖縄戦の組織的戦闘が終結したことにちなみ、アメリカ施政権下の琉球政府および沖縄県が定めた記念日です。毎年、この日には糸満市摩文仁平和祈念公園で沖縄全戦没者追悼式が行われます。今年の「慰霊の日」には、石垣島でわが社が展開するセレモニーホールの「石垣紫雲閣」がオープンしました。

 

石垣紫雲閣の前には、見事なさとうきび畑が広がっています。歌手の森山良子さんが歌って有名な「さとうきび畑」という名曲があります。この歌、じつは11連まであり、全部歌うと10分以上かかります。第二次世界大戦末期の沖縄戦で戦死した人々が眠る、夏のさとうきび畑に流れる風の音が繰り返されます。

 

第二次世界大戦を通して、沖縄の人々は日本で最も激しい地上戦を戦い抜きました。激戦であった沖縄戦において、日米両国、無数の人々が敵味方として殺し合い、そして集団自決するという悲しい事実もあったことを忘れてはなりません。沖縄本島と同じく、石垣島でも激しい戦闘や戦時に蔓延したマラリア等の疫病により、多くの犠牲者が生まれましたが、数え切れないほど多くの方たちが今なお「さとうきび畑」の下に眠っているといいます。

 

名曲「さとうきび畑」の中では「ざわわ、ざわわ」という風の音が66回も繰り返されますが、まさに慰霊と鎮魂の歌です。石垣島をはじめ、沖縄の人々は亡くなると海のかなたの理想郷である「ニライカナイ」へ旅立つという信仰があります。石垣紫雲閣を「魂の港」と位置づけ、1人でも多くの方をニライカナイへ導いてさしあげたいです。石垣紫雲閣の竣工式で主催者あいさつをしたわたしは、最後に「さとうきび ざわわざわわと風に揺れ 青い空には紫の雲」という短歌を披露しました。

 

沖縄は「守礼之邦」と呼ばれます。もともとは琉球宗主国であった明への忠誠を表す言葉だったようですが、わたしは「礼」を「人間尊重」という意味でとらえています。沖縄の方々は、高齢者を大切にし、先祖を大切にし、熱心に故人の供養をされます。その上、隣人も大切にします。それだけではありません。

 

沖縄には、「いちゃりばちょーでい」という言葉がありますが、「一度会ったら兄弟」という意味です。沖縄では、あらゆる縁が生かされるのです。まさに「袖すり合うも多生の縁」は沖縄にあり!
 「守礼之邦」は大いなる「有縁社会」でもあります。すべての日本人が幸せに暮らすためのヒントが沖縄にはたくさんあります。高齢者の多い北九州も、沖縄に学ぶ点は多いです。今こそ、本土復帰ではなく、沖縄復帰を!

 

2019年7月15日 一条真也