グリーフケア・ソングとしての「Lemon」

一条真也です。
ついに「令和」の時代を迎えましたね。 
6月3日、WEB「ソナエ」に連載している「一条真也の供養論」の第10回目がアップしました。タイトルは、「グリーフケア・ソングとしての『Lemon』」です。

f:id:shins2m:20190425150819j:plainグリーフケア・ソングとしての『Lemon』」

 

令和の時代が始まり、平成の時代が終わりました。その平成の最後に、日本の音楽市場に残る大ヒット曲が誕生しました。米津玄師の「Lemon」です。
2018年1月12日から3月16日までTBS系で放送された石原さとみ主演のドラマ「アンナチュラル」の主題歌です。不自然な死を解明する司法解剖医たちの物語でしたが、主題歌である「Lemon」は、大切な人を亡くした人の悲しみに寄り添うナンバーとして大きな話題となりました。

 

わたしが「Lemon」を初めて聴いたのは、昨年のNHK「第69回紅白歌合戦」においてですが、まずは題名が良いと思いました。梶井基次郎の名作「檸檬」を連想させるスタイリッシュな印象があります。それから、歌詞が絵画的で素晴らしいと感じました。そして何度か耳にするうち、「Lemon」はまさに「グリーフケア・ソング」だという結論に至ったのです。

 

愛する人を亡くした人は誰でも、「Lemon」の冒頭の歌詞のように、「夢ならば、どれほどよかったでしょう」と思うのが常です。また、「いまだに、あなたのことを夢に見る」はず。「戻らない幸せがあることを、最後にあなたが教えてくれた」とも思うでしょう。「今でも、あなたはわたしの光」という言葉も出てきますが、悲しみという闇の中で光を見つける営みこそ「グリーフケア」ではないでしょうか。

 

「Lemon」は、今や知らない人がいないくらい有名になりました。MVがYouTubeで3億回以上再生されており、何よりも、昨年末の紅白歌合戦に米津本人が出演し、徳島の美術館から生歌を披露したことが大きな話題となり、現在も高い人気を誇っています。この曲は、カラオケで歌われる曲としても歴代1位に輝きました。しかし、この歌、はっきり言って難しいです。リズムや音程など非常に難易度の高い楽曲です。それにも関わらず、発売直後よりカラオケでも高い人気を博しています。

 

じつは、わたしもカラオケで「Lemon」をよく歌います。東京、金沢、小倉、那覇のカラオケ店でもう数十回は熱唱しました。自分で言うのも何ですが、評判は上々である。精密採点では、信じられないような高得点が出ました。サビで高音を出すところなどが自分に合っているのかもしれません。しかし何よりも、わたしが、この歌のテーマである「グリーフケア」について考え続けてきたのが最大の原因ではないかと思います。

 

それはさておき、令和という新たな時代のおとずれと共にこのような「愛する人を亡くした人」のために作られた歌のMVが3億回以上も再生されたという事実に、わたしはグリーフケアの時代の到来を実感してしまいます。今日も誰かが「Lemon」を歌うたびに、今は亡き人々の面影が浮かんできます。

 

2019年5月1日 一条真也