「生活の古典」を大切に    

一条真也です。
長崎に来ています。30日に小倉に戻ります。
サンデー毎日」2月11日号が発売されました。
表紙の人物はジャニーズ事務所滝沢秀明です。
いつものようにネットでは黒塗りになっています。
わたしは、同誌にコラム「一条真也の人生の四季」を連載しています。第115回のタイトルは、「『生活の古典』を大切に」です。


サンデー毎日」2018年2月11号



早いもので、この前、年が変わったと思ったら、今年の正月も終わります。みなさんは正月を祝われたでしょうか。わが家では、いつものように門松や鏡餅などの正月飾りをしました。もともと正月というのは、年神を迎える年中行事です。古い信仰の形では、年神は祖霊神としての性格が強かったといわれます。すなわち、お盆とは対の関係にあったのです。



民俗学者折口信夫は、年中行事を「生活の古典」と呼びました。彼は、『古事記』『万葉集』『源氏物語』などの「書物の古典」とともに、正月、節分、雛祭り、端午の節句、七夕、盆などの「生活の古典」が日本人の心にとって不可欠であると訴えました。



國學院大客員教授岩下尚史氏は、著書『大人のお作法』の中で、「正月もそのうち実体がなくなる。おそらく今の80代の人たちが絶える頃には、寺社は別としても、古風な信仰を保つ人たちを除いては、単なる1月になるだろう」と予測しています。岩下氏によれば、いま、「伝統文化とか伝統芸能を大切にせよ」などとよく言われるが、それはわたしたちの暮らしの中で昔から伝承されてきた「生活の古典」がなくなる前触れではないかといいます。同感です。



文化が大きく変化する、あるいは衰退するのは、日本の場合は元号が変わった時であると言われています。実際、明治から大正、大正から昭和、昭和から平成へと変わったとき、多くの「生活の古典」としての年中行事や祭り、しきたり、慣習などが消えていったといいます。そして、平成も終わり、新しい元号へと変わります。



来年の2019年4月30日、天皇陛下は退位されることになりました。平成は来年の4月末で終わります。翌5月1日に改元となります。わたしはいま、年中行事についての本を執筆しています。今春にPHP研究所から刊行予定ですが、新しい時代となっても、日本人が「生活の古典」を大切にすることを願っています。2月になったら節分があります。わが家も、豆撒きをする準備をしなければ。


サンデー毎日」2018年2月11号の表紙




2018年1月30日 一条真也