『いかに生くべきか』

いかに生くべきか

 

一条真也です。
ブログ『面白いぞ人間学』を書いたとき、同書で取り上げた101冊の本のうち、まだブログや読書館で紹介していないものが多いことに気づきました。
そのすべてをブログで紹介し直すわけにはいきませんが、何度読み返しても色褪せない名著だけは遅まきながら取り上げたいと思います。今回は、『いかに生くべきか』安岡正篤著(致知出版社)です。もうすぐ終わる「平成」という元号は、陽明学者の安岡正篤によって考案されました。「東洋倫理概論」というサブタイトルがついた本書は、その名のとおり「倫理」について書かれた本です。

 

国家の品格 (新潮新書)

国家の品格 (新潮新書)

 

 

現在の日本という国家において、倫理の欠如が各所で叫ばれています。政治家の汚職、企業の不祥事は後を絶ちません。つい最近も、日本を代表する自動車会社が信じられないような不祥事を起こし、会長と社長が逮捕されるという事態に陥りました。いま、わたしたちはこの国に「倫理」を蘇らせなければなりません。まさに「国家の品格」が求められるのです。

 

老福論―人は老いるほど豊かになる

老福論―人は老いるほど豊かになる

 

 

本書を一読して非常に感心したのは、人生の倫理を3つに分けて論じていることです。すなわち、早年の倫理としての「志向」、中年の倫理としての「敬義」、そして晩年の倫理としての「立命」です。わたしは、もともと「人は老いるほど豊かになる」と考えており、『老福論』(成甲書房)なる著書も上梓したことがあります。

 

論語 (岩波文庫 青202-1)

論語 (岩波文庫 青202-1)

 

 

その考えの基本となったのは、『論語』に出てくる「子ののたまわく、われ十有五にして学に志し、三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順(したが)う。七十にして心の欲する所に従って矩(のり)を踰(こ)えず」という、あまりにも有名な一節です。この孔子の言葉は、老いることを衰退とせず、一種の人間的完成として見ていることを示しています。その価値観、人生観は本書にも流れています。

 

女性の品格 (PHP新書)

女性の品格 (PHP新書)

 

 

また、「女性と我欲」「女性と敬と恥」「女性と礼」など、女性にとっての倫理についても、あますところなく語られています。昭和4年に書かれたという本書は、なんと90年近く前に書かれた『国家の品格』であり、『女性の品格』なのです!

 

いかに生くべきか

いかに生くべきか

 

 

2018年12月14日 一条真也