神仏を尊びて神仏を頼らず(宮本武蔵)

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今日で11月も終わり。明日から師走ですね。
今回の名言は、宮本武蔵の「我、神仏を尊びて、神仏を頼らず」です。武蔵の生まれについては諸説ありますが、現在の兵庫県西部にあたる播磨国の生まれという説が有力です。戦国時代後期から江戸時代初期に生きた剣豪ですが、武蔵はその時代に生きる様々な剣豪と戦って勝利を収め、「生涯無敗」と言われました。特に有名なのが、巌流島の決闘で知られる佐々木小次郎との対決です。
武蔵の名声は、昭和の作家・吉川英治の『宮本武蔵』によって不動のものとなりました。その武蔵は、「我、神仏を尊びて、神仏を頼らず」という言葉を残しています。

 

 

宮本武蔵 全8冊   吉川英治歴史時代文庫

宮本武蔵 全8冊 吉川英治歴史時代文庫

 

わたしは2013年のサンレーグループの新年祝賀式典の社長訓示で、武蔵のこの言葉を紹介しました。吉川英治の『宮本武蔵』では、武蔵が吉岡一門との決闘にたった1人で出かける際、ある神社の前を通りかかって武運を祈ろうとしますが、「神仏は崇拝するものであって、利益を願うものではない」と思って、そのまま通過するという場面があったと記憶しています。わたしは、このエピソードから「人事を尽くして天命を知る」という言葉を連想しました。

 

神仏というのは、つまるところ、人間の世界を超えた偉大な存在としての「サムシング・グレート」であると言えるでしょう。人間は、サムシング・グレートを尊び、祈らなければなりません。祈りの対象は太陽でも神でも仏でもよいのです。人が不可知な力について感じるようになれば、人生そのものに必ず大きな展開がもたらされてくるものなのです。
「歌聖」と呼ばれた西行法師は、伊勢神宮を参拝したときに「なにごとの おはしますかはしらねども かたじけなさになみだこぼるる」という有名な歌を詠んでいますが、その正体はわからなくても畏敬の念を抱いて祈ることが大切なのです。

 

もちろん、あくまで「人事を尽くして天命を待つ」が基本です。かつて、アメリカが月に向けてアポロを打ち上げた際、あらゆる準備、点検をすべて終え、残るは発射のボタンを押すのみという時に、その責任者は「あとは祈るだけだ」とつぶやいたといいます。これこそ、人事を尽くして天命を待つということではないでしょうか。人が「もう、これ以上は無理だ」というぐらいまでベストを尽くしたとき、最後にはサムシング・グレートが力を貸してくれるように思います。

 

サンレーグループ佐久間進会長も「オリンピックの金メダリストの多くに、サムシング・グレートのサポートを感じる」と述べていますが、まったく同感です。あの山下泰裕氏が足の怪我にもかかわらずロス五輪で金メダルを取得したとき、あのイチロー選手が不調だったWBCで最後の最後に勝利のヒットを放ち、「野球の神様が降りてきた」とコメントしたときにもサムシング・グレートの存在を感じました。

 

わが社の場合でも、売上・利益ともに大きな目標を掲げたとき、それを達成することは容易ではありません。しかし、各人がそれぞれの持ち場で最善を尽くし、「もう、これ以上は無理だ」という極限状況に至ったとき、最後にはサムシング・グレートがわたしたちを助けてくれるかもしれません。まずは神仏を尊ぶことが先決であり、次に人事を尽くさなければならないのです!

 

2018年11月30日 一条真也