何かを生み出す行動でなければ行動とは言えない(カエサル)


一条真也です。
古代ローマの英雄ユリウス・カエサルは、理想的なリーダーであったとされています。彼には、何よりも行動力というものがありました。
ハートフル・リーダーとしてのカエサルについては、『龍馬とカエサル』(三五館)に詳しく書きました。龍馬は日本史の、カエサルは世界史の、それぞれ「人気ランキング」の首位を指定席としています。2人は大変な人気者なのです。そのバックボーンには、司馬遼太郎塩野七生といった国民的人気作家の存在も大きく影響しています。


ローマ人の物語 (4) ユリウス・カエサル-ルビコン以前

ローマ人の物語 (4) ユリウス・カエサル-ルビコン以前

ローマ人の物語 (5) ユリウス・カエサル-ルビコン以後

ローマ人の物語 (5) ユリウス・カエサル-ルビコン以後

ユリウス・カエサルは、昔からジュリアス・シーザーの名で『プルターク英雄伝』やシェイクスピアの戯曲に登場し、大きな人気を博してきました。もともとアレクサンダーやナポレオンと並んで世界史の人気者でしたが、作家の塩野七生氏の大著『ローマ人の物語』によって、一躍、最高の人気者にのぼりつめました。『ローマ人の物語』の中で活躍するカエサルは「こんなリーダーの下に仕えてみたい」と読者に思わせるほど、何ともいえぬ男の色気をふんだんに放っており、人間的魅力の塊とさえ言えます。



シェイクスピアの戯曲には、「何かを生み出す行動でなければ、行動とは言えない」というカエサルの名セリフが登場します。
では、カエサルは何を生み出したのでしょうか。
ずばり、彼は「平和」というものを生み出しました。
カエサルがローマの城壁を壊したことは有名です。
古代から中世ヨーロッパでも中国でも都市とは城塞のことであり、外的から市民を守るための城壁は不可欠なものとされていました。それを取り壊したのです。



塩野七生氏によれば、カエサルは、城壁が人々の心に「内」と「外」の区別を産み出すと考えたのだといいます。そこで彼は常識破りの城壁撤去により、「都市国家ローマの時代は終わった」と内外に明らかにしました。それは同時にカエサルの「平和宣言」でもあったのです。すなわち、新しいローマにおいては首都防衛を考える必要はないほどに平和になるのだという決意表明です。事実、この後、ローマは300年にわたって「城塞なしの首都」として存在し続けました。いわゆる「ローマによる平和(パクス・ロマーナ)」の時代が到来したのです。



真のリーダーとは、つねに万人が平和に暮らせることを理想とします。
龍馬も、無血革命としての「明治維新」を呼び込みました。
理想主義者である彼らが平和主義者でもあることは当然かもしれません。それゆえ、どうしても自身の危機管理がおろそかになるという弱点も持ちます。事実、龍馬もカエサルも暗殺されました。しかし、民衆は彼らがもたらしてくれた平和によって、幸せに生きることができたのです。


龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2017年6月15日 一条真也