わが荷車に火をつけよ(アレクサンダー)


一条真也です。
火といえば、アレクサンダーのエピソードが思い浮かびます。
彼がアフガニスタン入りの前に荷車に火をつけ、焼いたことは有名です。彼は必需品を除き、荷物を荷車に載せるよう兵士たちに命じました。余分な荷物が満載されて1ヵ所に集められると、ラバと馬を放すように命じました。そして、松明に火を灯し、アレクサンダー自身の荷物を載せた荷車に火をつけました。そして残りの荷車にも火をつけるように命じたのです。


アレクサンダー大王:未完の世界帝国 (「知の再発見」双書)

アレクサンダー大王:未完の世界帝国 (「知の再発見」双書)

マケドニア兵は余分な荷物と、遠征中に集めた戦利品のすべてが煙となって立ちのぼるのを眺めました。なすすべもなく、反対の声も上がりませんでした。駆け寄って荷物を救おうとする者もいませんでした。彼らはただ燃えさしと炎を見つめるばかりでした。失望はしましたが、何年間も遠征を続けてきた彼らは、よく知られた自制心と規律を失うことはありませんでした。彼らはむしろ荷が軽くなったことを喜び、とりわけ数週間後にはそのことを感謝することになります。アレクサンダーの示した模範に倣った将軍は多いです。ナポレオンもその1人で、モスクワから不運にも撤退したとき、これと同じことを実行しています。


アレクサンダーの行ったことは「必要でないものは携行しない」ということに焦点が当てられ、現在ではロジスティクスの問題とされています。しかし、わたしはそうは思いません。これは完全に心の問題です。アレクサンダーは荷車に火をつけ荷物を燃やすことによって、兵士の心に火をつけ情熱の炎を燃やしたのです。これまで故郷マケドニアに帰ることばかり考えていた兵士たちは、その後、遠征に対する覚悟を決め、世界帝国建設というアレクサンダーの夢を共にしたのです。アレクサンダーは「王の中の王」でした。
なお、今回の名言は『龍馬とカエサル』(三五館)に登場します。


龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

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*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2017年5月14日 一条真也