一条真也です。
儒教では、開祖である孔子を「聖人」としています。
そして、孟子をそれに次ぐ存在としての「亜聖」と位置づけました。
その孟子は、人間誰しも、あわれみの心を持っていると述べました。
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幼い子どもがヨチヨチと井戸に近づいて行くのを見かけたとします。
誰でもハッとして、井戸に落ちたらかわいそうだと思います。
そして、救ってやろうと思います。それは別に、子どもを救った縁でその親と近づきになりたいと思ったためではありません。村人や友人にほめてもらうためでもありません。また、救わなければ非難されることが怖いためでもありません。してみると、かわいそうだと思う心は、人間誰しも備えているものです。さらに、悪を恥じ憎む心、譲りあいの心、善悪を判断する心も、人間なら誰にも備わっているものです。
かわいそうだと思う心は「仁」の芽生えであり、悪を恥じ憎む心は「義」の芽生えであり、譲りあいの心は「礼」の芽生えであり、善悪を判断する心は「智」の芽生えである。人間は生まれながら手足を四本持っているように、この四つの芽生えを備えている。これは、あまりにも有名な「性善説」の根拠となった「四端の説」です。孟子は「人間の本性は善きものだ」という揺るぎない信念を持っていました。
人間の本性は善であるのか、悪であるのか。
これに関しては古来、2つの陣営に分かれています。東洋においては、孔子や孟子の儒家が説く性善説と、管仲や韓非子の法家が説く性悪説が古典的な対立を示しています。西洋においても、ソクラテスやルソーが基本的に性善説の立場に立ちましたが、ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も断固たる性悪説であり、フロイトは性悪説を強化しました。
そして、共産主義をふくめてすべての近代的独裁主義は、性悪説に基づきます。毛沢東が、文化大革命で孔子や孟子の本を焼かせた事実からもわかるように、性悪説を奉ずる独裁者にとって、性善説は人民をまどわす危険思想であったのです。独裁主義国家の相次ぐ崩壊や凋落を見ても、性悪説に立つマネジメントが間違っていることは明らかです。
マネジメントとは何よりも、人間を信じる営みであるはずです。
しかし、お人好しの善人だけでは組織は滅びます。
1人でも悪党というのは、悪人はみな団結性を持っているからです。
彼らに立ち向かうためには、悪に染まらず、悪を知る。
そして、その上手をいく知恵を出すことが求められるのですね。
なお、今回の孟子の名言は『龍馬とカエサル』(三五館)にも登場します。
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*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。
2017年3月7日 一条真也拝