ムーンサルト・トークセッション

一条真也です。東京に来ています。
ブログ「『唯葬論』講義」で紹介したように、22日の14時から神田にある東京自由大学の特別企画イベントで、講演を行いました。テーマは「唯葬論〜なぜ人間は死者を想うのか」です。続く第2部として、「バク転神道ソングライター」こと鎌田東二先生とのトークセッションを行いました。


満月交遊 ムーンサルトレター』上下巻(水曜社)

本にサインさせていただきました

多くの方が本を購入して下さいました

1人1人とお話しました

心をこめてサインさせていただきました

冒頭、「月への送魂」の動画を流しました



このトークセッションは、『満月交遊 ムーンサルトレター』上下巻(水曜社)の刊行記念です。鎌田東二先生と満月の夜にウェブ上の文通を交わしています。文通は「ムーンサルトレター」と名付けられ、2005年10月18日に開始されました。そして、2015年6月7日に第120信がアップされました。その単行本化が本書です。
トークセッションの相手である鎌田先生が所要のため到着が遅れており、冒頭で「月への送魂」の動画を流しました。その後、姿を現した鎌田先生は「一条さんと出会ってほぼ四半世紀。新著『唯葬論』は、本当に集大成にして新出発の記念すべき名著であると思います。また、葬儀を行う葬祭業界にとっても大切なカノン(規範)とも聖典ともなる古典的良書だと思います。これからのますますのご活躍と展開を期待し、祈念しております」と言って下さいました。それから、法螺貝を奏上して下さいました。


鎌田先生の到着を待ちました

法螺貝を吹く鎌田先生


第60信がアップされた際には、『満月交感 ムーンサルトレター』が上下巻で出版されています。それぞれの巻は300ページを優に超え、その過密な字組みは業界に衝撃をもたらし、多くの出版社の編集部で回覧されたといいます。あれから5年、ついに『満月交遊 ムーンサルトレター』上下巻が刊行されました。出版界に再び衝撃が走りました。


さあ、トークセッションが開始!



前作の『満月交感』はとにかく本のカバー・デザインがインパクト大でした。満月に向って吠える二匹の狼が描かれているのですが、まるで伝奇小説のようなイメージでした。わたしは上巻の「まえがき」の最後に、「満月に吠える二匹の狼が世直しめざす人に化けたり」という歌を詠みました。


語る鎌田先生

わたしも語りました



じつは、鎌田先生もわたしも大の月狂いなのですが、これはどうやら干支と関係があるように思えます。つまり、二人ともウサギ年生まれなのです。ということは、わたしたちは狼の皮をかぶった二羽のウサギなのかもしれません。今回の『満月交遊』では、表紙にウサギが描かれていて、「やっぱり!」といった感じです。編集を担当して下さった水曜社の朝倉祐二さんによれば、デザイナーの方が「日本最古の漫画」と称される『鳥獣戯画』に出てくるウサギをイメージされたそうです。これを見たわたしは「世直しをめざす兎が二羽跳ねり月を見上げて今宵も遊ぶ」という歌を詠みました。


鎌田先生から『唯葬論』についての質問が・・・

唯葬論』について答えました



トークセッションでは、鎌田先生から『唯葬論』についての質問が色々と出ました。「なぜ、この時期に書いたのか?」とか「この18の章立てはどのように考えたのか?」といった質問でした。わたしは、質問の1つ1つに答えさせていただきました。


次々に問いかける鎌田先生

質問に対して考えました



また、鎌田先生は「今の時代をどのように考えるか?」といった問いを投げかけてこられましたので、わたしはイスラム国の問題をはじめ国際情勢などについて触れつつ、日本が「死者を軽んじる国になっている」と述べ、「時代は新しい段階に突入したと実感しています」と答えました。鎌田先生は「現代は、大中世の復活のように思える」と述べ、独自の歴史観、文明観を披露されました。その後、わたしたちは戦争と平和について熱く語り合いました。わたしは「戦争の反対語は結婚」と言うと、鎌田先生は「戦争の反対は遊びではないか」と言われました。それを聞いたわたしが「遊びとは魂を自由にすること。葬儀も遊びですよ」と言いました。


未来医師から質問が!

質疑応答のようす


その後、質疑応答の時間となりました。すると、最前列のわたしの前の“かぶりつき”に座っていた「未来医師イナバ」こと東大病院の稲葉俊郎先生が手を挙げ、「歴史の教科書を見ると、戦争の記述ばかりです。まるで人類はこれまで戦争ばかりしてきたようで、違和感をおぼえます」と言われました。それを聞いてわたしは「人類はもちろん戦争ばかりしてきたわけではありません。一般民衆の普通の生活の歴史が真の人類史です。それは、日本民俗学を開いた柳田國男も考えていたことではないでしょうか」と言いました。柳田國男の「志」については日本経済新聞電子版の「ライフ」に連載中の「一条真也の人生の修め方」の次回(24日アップ予定)にも書きました。


さまざまな話題が出ました



満月交遊 ムーンサルトレター』に話を戻します。人類は神話と儀礼を必要とする」がわたしたちの合言葉ですが、上巻で『古事記』をめぐって神話論を交わしたわたしたちは、下巻では儀式論を展開しています。じつは、かつて柳田國男折口信夫の2人が「日本民俗学」を創設したように、わたしは鎌田先生とともに「儀式学」を立ち上げるのが夢なのです。わたしは現在、九州国際大学客員教授京都大学こころの未来研究センター連携研究員、冠婚葬祭総合研究所の客員研究員などを務めていますが、「なぜ人間は儀式を必要とするのか」を明らかにするのが使命だと思っています。
いま、わたしは『儀式論』という本を書いています。弘文堂から上梓する予定ですが、この日は担当編集者である外山千尋さんも来て下さいました。


トークセッションを終えて・・・・・・



満月交遊 ムーンサルトレター』では、じつにさまざまなテーマを取り上げていますが、すべては「儀式」の本質を見つめています。わたしは、「神界のフィールドワーカー」にして「現代の縁の行者」でもある鎌田先生と満月の文通を続けながら、冠婚葬祭会社の経営者として、また冠婚葬祭業界団体の会長として、儀式の継承と創新に取り組み、「楽しい世直し」をめざしたいと思います。下巻の「まえがき」の最後で、わたしは「満月の気に誘はれて文交わし魂振り鎮めこれも儀式よ」という歌を詠みました。



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2015年11月23日 一条真也