民生委員総会講演

一条真也です。
ブログ「世界平和パゴダ戦没者慰霊祭」に書いたように、14日の朝、わたしは世界平和パゴダを訪れて参拝しました。それから黒崎へと向かい、民生委員および児童委員の総会後に開かれた記念講演会で講演しました。
会場は「黒崎ひびしんホール」の大ホールですが、400名近い方々が集まりました。講演テーマは、「人は老いるほど豊かになる」でした。


講演のようす

「ハートフル」とは

礼=ハートフル

冠婚葬祭は「文化の核」



主催は、八幡西区民生委員児童委員協議会です。
ますます進む高齢化社会において、様々な「老い」に寄り添いながら活動に取り組む、民生委員・児童委員は、地域住民にもっとも身近な相談・支援者として、地域福祉の増進に努めています。高齢者が住みなれた地域で生き生きとした生活を続けていける支援に繋がるように「豊かな老い」について講演してほしいとの依頼を受けたのです。
登壇したわたしはまず最初に「今日は、民生委員さんの総会で講演できるなんて、本当に光栄です。わたしは『助け合いは人類の本能である』と思っていますが、言うは易く、行うは難し。文字通りの利他の人生を送っておられるみなさんを心の底から尊敬しています」と述べました。


さまざまなテーマで語りました

思いやりの時代

「人間の幸せ」について

超高齢社会をどうとらえるか



「人は老いるほど豊かになる」という講演テーマは、もともと拙著『老福論』(成甲書房)のサブタイトルです。わたしは、もう何百回もこのテーマで講演してきました。「老い」は人類にとって新しい価値です。自然的事実としての「老い」は昔からありましたし、社会的事実としての「老い」も、それぞれの時代、それぞれの社会にありました。しかし、「老い」の持つ意味、そして価値は、これまでとは格段に違ってきています。


好老社会(古代ローマ

好老社会(江戸時代)



これまで「老い」は否定的にとらえられがちでした。
仏教では、生まれること、老いること、病むこと、そして死ぬこと、すなわち「生老病死」を人間にとっての苦悩とみなしています。現在では、生まれることが苦悩とは考えられなくなりました。
でも、まだ老病死の苦悩が残ります。わたしたち人間が一個の生物である以上、老病死は避けることのできない現実です。日本人の「こころ」には仏教の他に、神道儒教も強い影響を与えています。「老い」とは、神道では神に近い翁となることであり、儒教では人間的完成の過程です。


高齢者をとらえなおす

人は老いるほど豊かになる



それならば、いっそ老病死を苦悩ととらえない方が精神衛生上もよいし、前向きに幸福な人生が歩めるのではないでしょうか。
すべては、気の持ちようであり、苦悩や不幸はすべて人間の心が生みだすものです。ですから、これからは「人は老いるほど豊かになる」という魔法の呪文をいつも心の中で唱えて下さいと訴えるのです。すると、必ず、そうなるから不思議です。


長寿祝いのすすめ

北九州の未来について話しました



また、わたしは北九州市の未来についてお話ししました。
北九州市の最大の特徴とは何か。それは、高齢者が多いことです。98万1174人の人口に対して、65歳以上の高齢者は25万7315人で、高齢者比率はじつに26・2%となっています(数字は、いずれも平成25年3月31日、住民基本台帳人口要覧による)。この高齢者比率は、全国に20ある政令指定都市の中で最も高い数字です。
北九州市はいわば「日本一の高齢化都市」であると言ってよいでしょう。そこで、わたしは日本中の高齢者の方々にも北九州市に来ていただきたいと考えています。現在、全国には600万8000人(平成27年、内閣府の推定)もの独居老人が分散しています。そういった方々に北九州に参集していただき、余生を過ごしていただきたいのです。


北九州市を好老都市に!

長年のプランを述べました



日本一の高齢化都市である北九州市は「好老都市」にならなければなりません。北九州市こそが、まず先駆けとして「好老都市」になるべきなのです。わたしは「好老都市」のことを「グランドシティ」と呼びたいと思います。この方が国際的に意味か通りやすいですし、明るくポジティブな印象があります。現在、特区行政ということで、物流特区など数多くの特区が全国につくられています。わたしはぜひ北九州市に「高齢者福祉特区」をつくるべきだと思っています。全国には独居老人すなわち1人暮らしの高齢者が600万人以上もいます。その人たちをはじめ、全国の高齢者が北九州市の「高齢者福祉特区」に集ってくるといいと思います。もともと北九州市は医療施設や介護施設が充実していると言われますが、それらをさらに充実させて、逆に税金や医療費は安くする。買い物はもちろん、高齢者向けのレジャー施設やカルチャー施設も充実させる。つまり徹底して、高齢者にとって安心で楽しくて生きがいを持てる街をつくるのです。


孤独死予備軍10の法則

挨拶の重要性を強調しました



もちろん、これらをすべて北九州市民の税金だけでまかなうのは大変ですし、はじめから不可能です。しかし「高齢者福祉特区」なら、国が負担します。国も、全国に先駆けて理想的な高齢都市のモデルづくりができれば、国益を高めると判断するはずです。全国各地でバラバラに高齢都市モデルをつくるより、日本一の高齢化都市である北九州市において集中的に実験した方が効果は上がります。


老い」の豊かさを訴えました

北九州は「強み」を生かせ!



北九州市は、高齢者が多いことを「強み」として、日本一、高齢者が安心して楽しく生活できる街づくりを目指すべきです。そこで、大事なポイントは「孤独死をしない」ということ。わが社を中心に年間250回以上開催されている「隣人祭り」をはじめとした多種多様な「隣人交流イベント」のノウハウを駆使して、孤独死を徹底的に防止するシステムを構築することが必要です。そうなれば、「北九州にさえ行けば、仲間もできて、孤独死しなくて済む」というふうになるのではないでしょうか。全国の独居老人には、どんどん北九州に移住していただきたいと願っています。


サンレーグランドホテルについて

グランドカルチャーの先進都市に


わたしは「人は老いるほど豊かになる」というコンセプトに基づく「老福都市」をイメージし、そのモデルとして2004年に高齢者複合施設「サンレーグランドホテル」を北九州市八幡西区に作りました。セレモニーホールと高齢者用のカルチャーセンターなどが合体した前代未聞の施設として大きな話題になりました。「老い」と「死」に価値を置く施設であるサンレーグランドホテル北九州市に誕生したことは多くの方々から評価されました。なぜなら、高齢化が進む日本の諸都市、世界各国の都市にとって北九州市とは自らの未来の姿そのものだからです。こういった考え方も、すべてドラッカーの「強みを生かす」という思想をベースにしています。


隣人祭り」について

なぜ「隣人祭り」を開くのか



わたしは、北九州市はもう一度、この「禍を転じて福となす」を実現すべきと考えます。いま、全国の人々に「北九州市のイメージは?」と聞くと、必ず返ってくる言葉が2つあります。「暴力団」と「孤独死」です。かつての「公害」に代わるネガティブ・キーワードであると言えるでしょう。しかし、末吉興一前市長が見事に環境モデル都市へと変身させたように、また現職の北橋健治市長が日本最大の暴力追放運動を成功させたように、残る「孤独死」の問題も必ず解決できると信じています。


「隣」とは何か

終活は人生の卒業準備



この日は民生委員さんたちの総会での講演でしたが、わたしは北九州市が「老福都市」となり、日本が「老福国家」となるために、「民生委員」の存在はきわめて大きいと考えています。「無縁社会」などと言われる現在、独居老人などの孤立死を防ぐ民生委員の役割は大きくなる一方です。
ブログ「無縁社会シンポジウム」で紹介した座談会でも発言しましたが、孤立死が増加する原因の1つは「民生委員制度」が機能しなくなったことではないでしょうか。高齢単身者がどのような生活状況、あるいは健康状況にあるかを監視するのが、地域の民生委員の役割です。この民生委員制度がうまく機能していないのです。


民生委員のみなさんに本心を訴えました



民生委員制度の発端は大正7年(1918年)の大阪府における方面委員制度に始まるそうです。重要なことは、方面委員は無報酬の名誉職だったことです。天皇の御聖慮による名誉職だったので、誰も不満は言いませんでした。しかし戦後になって、昭和21年(1946年)に民生委員制度として再発足したときにも無報酬が引き継がれてしまったのです。名誉職的な色彩が薄くなったことにより、高度成長期の民生委員は自営業者が減少し、引退者や主婦が増加したそうです。でも、今や民生委員を引き受ける人間はどんどん減る一方です。元日本経済学会会長の橘木俊詔氏は、ブログ『無縁社会の正体』で紹介した著書で「民生委員の仕事に対して俸給を支払うことを考えてよい」と提案されています。この橘木氏の提案には、わたしも大賛成です。さらに、わたしは質の良い民生委員の数を一気に増やし、孤独死を激減させるアイデアを持っています。


民生委員の民間委託を提案しました



わたしは、行政が困っているときは民間に委託すべきだと考えます。
これは郵便局の事業の一部をヤマト運輸などの宅配便業者が行ったり、警察の仕事の一部をセコムなどの警備業者がやるのと同じようなこと。つまり、行政サービスの民間委託ということですね。それで、民生委員が少なくて困っているのなら、互助会業界に任せてくれたらどうかなと思います。
互助会には、営業員がたくさんいます。それなら、例えばその営業員さんが独居老人のお宅の数を控えておいて、時々訪問する。行政からそういう委託を受け、互助会が老人宅を訪問して安否確認を行えば、これは相互扶助の機能を発揮すると共に、互助会そのもののイノベーションになるのではないかという気がしています。世のため人のためになって、互助会そのものもインベーションを図れるというわけです。この「民生委員の民間委託」というアイデアを「無縁社会シンポジウム」で初めて披露したところ、大きな反響がありました。いずれにしろ、わたしはこの日本から孤独死をなくし、無縁社会を乗り越えたいと心から願っています。その最高のチャレンジの場こそ、北九州市であるとも考えています。


無縁社会から有縁社会へ

わが志を述べさせていただきました




わたしは、北九州市は「老福都市」を、「助け合い都市」を、そして「隣人愛都市」を目指すべきだと確信します。それは「社会福祉都市」でもあります。
そんな都市が日本にできるなんて素敵ではありませんか!
そんなことをお話したところ、盛大な拍手を受けて感激しました。


著書の販売コーナーもありました

あら、良さそうな本ですこと・・・・・・

おかげさまで、たくさんお求めいただきました

控室で次々にサインしました

サイン後にハイ・ポーズ!

副会長さんともハイ・ポーズ!



それから、今日はわたしの著書の販売コーナーが設置されました。
みんさん、いろいろと立ち読みされてから、購入していただきました。
特に、『決定版 終活入門』(実業之日本社)の人気が高かったようです。
すると、本を購入された方にサイン会を開いてほしいと言われました。
それで、急遽、控室を開放してサイン会をさせていただきました。
今日は朝からハード・スケジュールでしたが、非常に充実した一日でした。
天下布礼」への手応えをしっかりと感じることができました。
関係者の皆様に心より感謝いたします。



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2015年5月14日 一条真也