NHKスペシャル「臨死体験〜死ぬとき心はどうなるのか」

一条真也です。
14日の21時から22時13分まで放映されたNHKスペシャル「立花隆思索ドキュメント 臨死体験〜死ぬとき心はどうなるのか」を観ました。
以前から楽しみにしていた番組です。本来ならもっと早く放映されると聞いていましたが、何らかの事情で延期されたようですね。


番組のオープン・タイトル(NHKより)



NHKスペシャル公式サイト」には、以下のように書かれています。
「『私』という存在は死んだらどうなるのか、死ぬとき『私』は何を見るのだろうか――。 20年余り前、臨死体験について徹底的に取材し考察を深めてきたジャーナリスト/評論家立花隆さん。74歳を迎え、がんや心臓の病を抱えて死を間近に感じる今、再び臨死体験の最新研究の現場を見つめ、“死”について思索しようとしている。死の間際に一定の人が見る臨死体験臨死体験が世界で注目され始めた1980年代以来、その解釈としては、脳内現象として科学で説明できるとする『脳内現象説』と、肉体が死んでも“魂(もしくは自我を感じる『意識』)”が存在し続けるという『魂存在説』―――これら二つの説が互いに相容れない、激しい議論が続いてきた。そうした中、立花さんは新たな臨死体験の掘り起こしをすると同時に、そもそも『意識(魂)』と呼ばれているものの正体とは何なのか、最新の脳科学・心理学・哲学にいたるまで、徹底した取材に基づいて正面から挑もうとしている。科学的に見て、死後の世界があると言える余地はどれくらいあるのか。死後の世界がないとしたら、『私(自分)』という意識(魂)はどう生まれどう消えていくのか。私たちが当たり前と思っている『私』という存在はいったい何なのか。有史以来、人類が答えを追い求め続けてきた生と死にまつわる壮大な謎―――その謎に挑む立花さんの思索の旅を通じて、大震災や紛争などで多くの命が失われる今、命や『私』の存在する意味を考える」


現在の立花隆氏(NHKより)



立花隆氏は、現代日本の「知の巨人」の1人として知られます。
ブログ「立花隆講演会」に書いたように、わたしは氏の講演を聴くために会場である東京ビッグサイトを訪れましたが、じつに1500人を超える参加者がありました。立ち見まで出て、大変な盛況でした。その講演で、立花氏は「臨死体験」について何か発言するかと思いましたが、結局は言及しませんでした。代わりに、ユング神秘主義的な心理学について大いに語り、特にユングの大著『赤の書』を詳しく紹介しました。


1991年当時の立花隆氏(NHKより)



1991年3月、NHKスペシャル「立花隆リポート 臨死体験〜人は死ぬ時 何を見るのか〜」が放映されました。『宇宙からの帰還』や『脳死』などの著作において「宇宙」や「生命」といったテーマを追求してきた立花氏が「臨死体験」という新たな秘境に挑んだ番組でした。
世界中に数多くいる、死に臨んで奇跡的に命を取り戻した人々は以下のような共通体験をしているといいます。すなわち、死んだときに自分と自分を取り巻く医師や看護婦の姿が上のほうから見えた。それからトンネルのようなものをくぐって行くと光の生命に出会い、花が咲き乱れている明るい場所が現れたりする。さらに先に死んでしまった親や恋人など、自分を愛してくれた人にめぐりあう。そして重大なことは、人生でおかした過ちを処罰されるような体験は少ないこと、息を吹き返してからは死に対して恐怖心を抱かなくなった・・・・・・。


ロマンティック・デス―月を見よ、死を想え (幻冬舎文庫)

ロマンティック・デス―月を見よ、死を想え (幻冬舎文庫)

それまで臨死体験というものを知らなかった、ほとんどの視聴者は大変なショックを受け、放送後には立花氏のもとに数千通の反響の手紙や電話が来たそうです。わたしも大いに影響を受けた1人で、NHKスペシャル「臨死体験」のインパクトによって『ロマンティック・デス〜月と死のセレモニー』(国書刊行会)を一気に書き上げ、同年10月に上梓したくらいです。
その後、同書は『ロマンティック・デス〜月を見よ、死を想え』と改題されて幻冬舎から文庫化されました。「死」と「月」と「葬」について述べました。
ちなみに、その約20年後の2010年1月に放映されたNHKスペシャル「無縁社会〜“無縁死”3万2千人の衝撃〜」を観たときも大変なショックを受け、わたしは『隣人の時代』(三五館)を書きました。というわけで、NHKスペシャルによって、これまで2冊の著書が生まれたことになります。


臨死体験〈上〉 (文春文庫)

臨死体験〈上〉 (文春文庫)

臨死体験〈下〉 (文春文庫)

臨死体験〈下〉 (文春文庫)

その後、立花氏は大著『臨死体験』上下巻(文春文庫)を出版されました。
わたしは、この本をもう何度読み返したかわかりません。
「死は最大の平等である」というのは、わたしの信条です。箴言で知られるラ・ロシュフーコーが「太陽と死は直視することができない」と語ったように、太陽と死には「不可視性」という共通点があります。わたしはそれに加えて「平等性」という共通点があると思っています。
太陽はあらゆる地上の存在に対して平等です。太陽光線は美人の顔にも降り注げば、犬の糞をも照らすのです。わが社の「サンレー」という社名は、万人に対して平等に冠婚葬祭を提供したいという願いを込めて、太陽光線(SUN−RAY)という意味を持っています。



「死」も平等です。しかし、「生」は平等ではありません。
生まれつき健康な人、ハンディキャップを持つ人、裕福な人、貧しい人・・・・・・「生」は差別に満ちています。しかし、王様でも富豪でも庶民でも乞食でも、「死」だけは平等に訪れるのです。
また、世界中の臨死体験者たちはいずれも、死んでいるあいだは非常に強い幸福感で包まれていたと報告しています。この強い幸福感は、心理学者マズローの唱える「至高体験」であり、宗教家およびロマン主義文学者たちの「神秘体験」、宇宙飛行士たちの「宇宙体験」にも通じるものです。いずれの体験においても、おそらく脳の中で幸福感をつくるとされるβエンドルフィンが大量に分泌されているのでしょう。



臨死体験については、まぎれもない霊的な真実だという説と、死の苦痛から逃れるために脳が作り出した幻覚だという説があります。
いわゆる「魂存在説」と「脳内現象説」と呼ばれるものです。
しかし、いずれの説が正しいにせよ、人が死ぬときに強烈な幸福感に包まれるということは間違いないわけです。しかも、どんな死に方をするにせよ、です。こんな平等が他にあるでしょうか!まさしく、死は最大の平等です。日本人は死ぬと「不幸があった」と馬鹿なことを言いますが、死んだ当人が幸福感に浸されているとしたら、こんなに愉快な話はありませんね。


NHKスペシャル 超常現象 科学者たちの挑戦

NHKスペシャル 超常現象 科学者たちの挑戦

現在、このような「臨死体験」のNHKスペシャルが放映されるということは、世間の関心が再び高まっているのでしょう。
ブログ『超常現象 科学者たちの挑戦』で紹介した本は、やはりNHKスペシャルの番組を書籍化したものですが、その第一部のepisode3「『死後の世界』を垣間見た人々」の冒頭には、以下のように書かれています。
「2013年3月9日と10日の両日、フランス南部の港町マルセイユで開かれた国際臨死体験学会は異様な熱気に包まれていた。医療関係者を中心に延べ2500人が会場に詰めかけ、チケットは完売。キャンセル待ちの列ができ、途中で帰る人から入場券を譲り受けようと交渉する姿もあった。そして会議場では連日、スタンディングオベーションが起きていた。
臨死体験――。死に瀕した人々が垣間見たという世界の報告に、今、注目が集まっている。その背景として臨死体験の報告が年々増加していることが指摘されている。医療の進歩のおかげで蘇生技術が発達し、死の間際から生還する人が格段に増えたからだ」
この「国際臨死体験学会」の様子は、今夜の番組でも紹介されました。


NHKスペシャル公式サイト」より



さて今夜の番組の内容ですが、以下のような構成でした。
第1章 臨死体験の謎
第2章 臨死体験を科学は解き明かせるのか?
第3章 心はどのように生まれるのか
最終章 臨死体験 人はなぜ“神秘”を感じるのか


「死」の謎を求める立花隆氏(NHKより)



番組のナレーションを小倉高校の同級生である上田早苗さんが担当していて、嬉しかったです。さすがに前回の番組から23年の時間を経ているだけあって、最新の情報が満載でした。大変刺激的で、勉強になりました。
現代科学を代表するビッグネームもたくさん登場して、立花氏と語り合っていました。たとえば、脳神経外科医のエベン・アレキサンダーノーベル生理学・医学賞受賞者で理研MIT神経回路遺伝学センター長の利根川進神経科学者のヘンリック・エーソン、精神医学者のジュリオ・トノーニ、脳神経外科医のケビン・ネルソンといった人々ですが、まさに錚々たる顔ぶれです。NHKの取材力の凄さを痛感しました。


心のメカニズム(NHKより)

「フォルス・メモリー(偽の記憶)」を説く利根川氏(NHKより)

辺縁系」に注目するケビン・ネルソン(NHKより)

脳の「辺縁系」が臨死体験を起こす?(NHKより)




「心」の不思議を追求する立花氏は、「意識のメカニズム」を探ります。
ジュリオ・トノーニが「意識を持った人工知能を作れる」と発言した場面には考えさせられました。「心のあるコンピューター」が生まれるというのです。
また、利根川博士は「フォールス・メモリー(偽の記憶)」が臨死体験の正体ではないかという仮説を唱え、ケビン・ネルソンは脳にある「辺縁系」という古い部分に注目します。この辺縁系は人間に夢を見せる部位でもあるようですが、これが臨死体験を起こしている可能性が高いというのです。このような意見を聞いた立花氏は、「死ねば、心も消える」という結論に至ります。これは一種の唯物論で、最近の一連のNHKの超常現象番組が「唯物的」であると某宗教団体が機関誌で批判していたことを連想しました。
ちなみに、わたしは辺縁系とは、人間に死者とのコミュニケーションを可能にさせる機能を持っていると思います。


レイモンド・ムーディーの言葉(NHKより)

レイモンド・ムーディーの言葉(NHKより)



しかし、立花氏は23年ぶりになつかしい人物と再会します。
医師で臨死体験研究者であるレイモンド・ムーディー博士です。ムーディーは自身が臨死体験をしたことから、死後の世界の実在を信じています。
一方の立花氏は「死ねば、心も消える」と考えています。しかし、そんな立花氏に向かってムーディーは微笑みながら「あなたが先に死ぬか、私が先に死ぬかはわかりませんが、きっといつかどこかで、あなたとまた再会できると信じています」と語りかけるのでした。それを聞いた立花氏も満面の笑みでムーディーに応えます。感動的な場面でした。
レイモンド・ムーディーの名前は、ブログ「関連著者」にも登場します。つまり、わたしの「著者ページ」で、「一条真也に関連のある著者」ということで紹介されています。ですから、わたしは彼に親近感を抱いています。


死ぬことは怖くない!(NHKより)

番組のエンド・タイトル(NHKより)



じつは、立花氏は膀胱がんを患っており、今年になって再発されたそうです。自らが死を意識するようになってから、20年以上の時を経て、再び「臨死体験」について調べてみたいと思われたそうです。長い取材活動の後、番組の最後で立花氏は次のように述べました。
「結局、人間の死ということは、死と神秘と夢が隣り合わせのボーダーランドに入っていくことだ。死ぬことがそれほど怖いことじゃないことが分かった。人生の目的と言うのは結局、哲学者エピクロスが言った『アタラクシア(心の平安)』ということ。人間の心の平安を乱す最大のものというのは、自分の死について想念、頭を巡らせること。いい夢を見たい、見ようという、そういう気持ちで人間は死んでいくことができる」


命には続きがある 肉体の死、そして永遠に生きる魂のこと

命には続きがある 肉体の死、そして永遠に生きる魂のこと

1991年3月17日にNHKスペシャル「立花隆リポート 臨死体験〜人は死ぬ時 何を見るのか〜」が放映されてから23年後の現在、再び「臨死体験」が熱い注目を浴びているのです。
その背景には、「勇気の人」こと東京大学医学部大学院教授で東大病院救急部・集中治療部長の矢作直樹先生の活躍があるように思います。先日、アマゾンの総合ベスト10を見たら、矢作先生の本が3冊もランクインしていて驚きました。わたしは、2013年6月に矢作先生との対談本である
命には続きがある』(PHP研究所)を上梓しました。「肉体の死、そして永遠に生きる魂のこと」というサブタイトルの同書でも、臨死体験についてたっぷりと語り合っています。関心のある方は、どうぞお読み下さい。


エベン・アレクサンダー(NHKより)


矢作先生だけでなく、最近は死後の世界を認める学者や医師が増えています。今夜の番組にも登場していた脳神経外科の世界的権威であるエベン・アレクサンダー医師もその1人です。彼は多くの患者たちから「臨死体験」の話を聞いていましたが、死後の世界の存在を真っ向から否定していました。しかし、彼自身も臨死体験をしたことによって、今では「死後の世界は必ず存在する。私は死後の世界を知ることで、今を生きる意味をより理解できた」と述べています。


決定版 終活入門

決定版 終活入門

明日は「敬老の日」ですが、「老い」と「死」は万人に訪れます。
わたしたちは「老いる覚悟」と「死ぬ覚悟」を持たなければなりません。
そして、自らの人生を心安らかに修め、堂々と人生を卒業していくためには「人は死んだらどうなるのか」を知る必要があります。そのことを考えながら、わたしは『決定版 終活入門』(実業之日本社)を書きました。
今夜、NHKスペシャル「立花隆思索ドキュメント 臨死体験〜死ぬとき心はどうなるのか」を観て、「死は人類最大のミステリー」であると改めて思いました。誤解を恐れずに正直に言うならば、わたしは死ぬのが楽しみです!



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2014年9月14日 一条真也