スピリチュアルケア学術大会

一条真也です。
6日の朝、北九州空港からスターフライヤーに乗って東京へ・・・・・・。
赤坂見附の定宿にチェックインして、四谷の上智大学まで歩いて行きました。ここで、日本スピリチュアルケア学会の「第7回学術大会 in東京」が開催されるのです。ここ最近は業界や会社の仕事が忙しく、なかなか勉強ができませんでしたが、一念発起して、この大会に参加しました。



このイベントのことは、「ムーンサルトレター」第110信で知りました。
2日間にわたる開催ですが、「バク転神道ソングライター」こと鎌田東二先生が2日目のシンポジウム「宗教とスピリチュアルケア」に出演されるというので、わたしは参加を決めました。上智大学グリーフケア研究所所長の島薗進先生、前所長の高木慶子先生にお会いする目的もありました。


上智大学の正門をくぐると看板が・・・・・・

上智大学のキャンパスにて



しかし、会場に到着してみると、鎌田先生の姿が見えません。
知り合いの方に聞くと、なんと網膜剥離になられて、欠席だそうです。
現在は入院されており、手術も受けられる予定だとか。
大変驚きましたが、手術の成功と早い回復を心より願っています。
でも、会場では、島薗先生をはじめ、京都大学カール・ベッカー先生、高野山大学の井上ウィマラ先生などにお会いしました。その他にも、医療、グリーフケア、仏教、キリスト教の世界で有名な方々も多かったです。
さながら「スピリチュアルケア・サミット」の観がありましたね。
わたしも何人かの方から「一条さんですよね?」とか「ブログ、いつも読んでいます」などと声をかけられ、恐縮しました。


会場となった上智大学の10号館

記念講演をする柳田邦男先生



上智大学副学長である川中仁先生の基調講演「カトリックスピリチュアリティ」に続いて、評論家の柳田邦男先生による記念講演「人生の総括とスピリチュアリティ」を拝聴しました。柳田先生といえば、1936年生まれで、わが国を代表するノンフィクション作家です。1971年に『マッハの恐怖』で第3回大宅壮一ノンフィクション賞、79年に『ガン回廊の朝』で第1回講談社ノンフィクション賞を授賞するなど、ノンフィクション関連の賞を総ナメにされています。航空機事故、医療事故、災害、戦争などのドキュメントや評論を数多く執筆していますが、わが子の自死について書いた『犠牲(サクリファイス)―わが息子・脳死の11日 』をはじめ、「死」に関する著作が多いことでも知られます。


柳田先生の講演のようす



柳田先生の講演は、以下の問題意識に沿った興味深い内容でした。
1.「物語を生きる人間」とスピリチュアリティ
  ――傾聴・聞き書きを中心に
2.「生活臨床」とスピリチュアリティ
  ――自然・生活の周囲から見られている「私」
3.苦しみ・悲しみの意味とスピリチュアリティ
4.言葉とスピリチュアリティ
  (1)名言・名句の力
  (2)表現することの力
5.音楽とスピリチュアリティ
6.ユーモアとスピリチュアリティ
7.「死後生」から見つめられている「今」


さまざまな本を紹介して下さいました

フランククルの『夜と霧』も紹介



柳田先生は、「死」や「グリーフケア」に関するさまざまな書籍を紹介しながら、時にはその中の一節を朗読して下さいました。わたしは特に、『ホスピス通りの四季』徳永進著(新潮文庫)に大きな関心を抱きました。早速アマゾンで注文しましたが、早く読んでみたいです。
先生は、ナチスによるユダヤ強制収容所に入っていた心理学者V・E・フランクルの不朽の名著『夜と霧』(みすず書房)にも言及されました。


フランクルの言葉を紹介

ジャンケレヴィッチの言葉を紹介



また柳田先生は「名言・名句の力」について大いに語りました。
わたしの口癖ですが、言葉には人生をも変えうる力があります。そして、言葉は悲しみの淵に沈んでいる心を癒すこともあります。まず先生は、フランクルの「あなたが人生に絶望しても、人生はあなたに期待することをやめない」とか「それでも人生にイエスを言う」といった言葉を紹介しました。
続いて、死生学の古典である『死』を書いた哲学者V・ジャンケレヴィッチの「死は生を無にするが、死は逆に自らを無にすることによって、生を意味づけするものだ」などの言葉を紹介しました。


「人生(いのち)のライフサイクルの新しいとらえ方」を説明

「死後生」とは



さらに柳田先生は、「人生(いのち)のライフサイクルの新しいとらえ方」を図表で説明し、ライフサイクルの先には「死後生」があることを明言されました。「死後生」とは、「肉体はなくなっても、人の生きた証(精神性、心)は、大切に思ってくれた人の心の中で生き続ける」ということだそうです。
わたしは、東京大学医学部大学院教授の矢作直樹先生との共著『命には続きがある』(PHP研究所)でも述べたように、「死後生」の存在を信じることこそはグリーフケアの核心であると考えています。

命には続きがある 肉体の死、そして永遠に生きる魂のこと

命には続きがある 肉体の死、そして永遠に生きる魂のこと

「死後生」がもたらすものとして、柳田先生は以下の5つを挙げました。
(1)遺された人の人生を豊かに膨らませる
(2)「死後生」をよりよいものにするために、自分は「今」いかに生きるか
(3)死への恐怖が薄らぎ、未来を展望するようになる
(4)医療者やケアワーカーも「死後生」まで展望したケアのあり方を考えるようになる
(5)これら全体こそ、スピリチュアリティの「開花」である




柳田先生のお話は大変「学び」の多い素晴らしい内容でした。
90分の講演時間の予定でしたが、110分ぐらい話して下さいました。
講演が終わると、会場から盛大な拍手が起こりました。そして10分間の休憩を挟んで、「総会」「資格認定・認定プログラム授与式」が開かれました。


懇親会で挨拶する柳田先生

柳田先生の挨拶を聴く島薗先生(左端)と郄木先生(右端)



18時からは、2号館の5階ホールで懇親会が開かれました。
ここでも柳田先生が御挨拶をされ、島薗先生や高木先生もじっと聴いておられました。乾杯の後は大いに盛り上がりましたが、わたしは柳田先生と高木先生のお二人と名刺交換させていただき、貴重なお話を拝聴しました。わたしも、自分がやっていること、これから目指すことを簡単に説明させていただきました。お二人とも大変興味深く聴いて下さいました。北九州に戻ったら、ぜひ拙著をお送りしたいと思います。



また、鎌田先生がいないのに1人で参加したわたしを気遣われたのでしょう、島薗先生が何かと話しかけて下さり、その優しさに感激しました。
というわけで、鎌田先生にお会いできなかったのは残念でしたが、とても有意義な時間を過ごすことができました。この日に学んだこと、考えたことは、必ずやわたしの新しい著作に反映したいと思います。



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2014年9月7日 一条真也