「きっと、うまくいく」

一条真也です。
東京で、「きっと、うまくいく」を観ました。
世界中で大ヒットした、2009年製作のインド映画です。


ブログ「ニューヨーク、恋人たちの2日間」に書いたように、前回の東京出張の際、わたしは観賞予定だった「きっと、うまくいく」を観ることができませんでした。要するに、わたしは「うまくいかなかった」わけですが(笑)、そのことをご丁寧にもわざわざブログで紹介している人もいます。(苦笑)
なんだか悔しいので、しぶといわたしは今回はスケジュールをやり繰りした上で再チャレンジ、やっと観賞することができました。(涙)
なんと9日までの上映だったので、ぎりぎりセーフでした。
今回は、なんとか「うまくいった」ようですな。ふふふ。



公式サイトの「INTRODUCTION」には以下のように書かれています。
「ハリウッドを凌ぎ世界一の製作本数&観客動員数を誇る映画大国インドで、なんと歴代興行収入ナンバーワンの偉業を達成! さらに全世界興収75億円を叩き出し世界でリメイクが決定した『最強のふたり』に続く大ヒット感動ムービーがいよいよ日本上陸」
「主演は“ミスター・パーフェクト”の異名を取るボリウッドの大スター、アーミル・カーン。実際には40代半ばなのに、ハツラツとした若者にしか見えない素晴らしい名演技も必見ポイント。この1作を見れば、どうしてインドはここまで急成長した発展しているのかも非常によくわかる。 笑って泣いて心がほっこり温まる、世界中が感動した奇跡の大感動インド映画が誕生」



また、同じく公式サイトの「STORY」には次のように書かれています。
「舞台は日の出の勢いで躍進するインドの未来を担うエリート軍団を輩出する、超難関理系大学ICE。未来のエンジニアを目指す若き天才が競い合うキャンパスで、型破りな自由人のランチョー、機械よりも動物が大好きなファラン、なんでも神頼みの苦学生ラージューの“三バカトリオ”が、鬼学長を激怒させるハチャメチャ珍騒動を巻き起こす。彼らの合言葉は「きっと、うまくいく!!」
抱腹絶倒の学園コメディに見せかけつつ、行方不明になったランチョーを探すミステリー仕立ての“10年後”が同時進行。その根底に流れているのは、学歴競争が加熱するインドの教育問題に一石を投じて、真に“今を生きる”ことの素晴らしさを問いかける万国普遍のテーマなのだ。


「きっと、うまくいく」のポスター




さて、近年にないほど大変な苦労をしてやっと観賞した「きっと、うまいく」ですが、わたしの率直な感想は「ん〜、こんなもんなの?」です。
かのスティーヴン・スピルバーグが「3回も観るほど大好きだ」と絶賛したとか、ブラッド・ピットも「心震えた」とコメントしたとか言われていますが、「え〜、本当かよ?」と言いたくなります。まあ、インド以外でも高い評価を受けて各国でリメイクが決定しているのは事実のようです。



たしかにシナリオが抜群にうまくて面白く、3時間近い上映時間があっという間に過ぎてしまいます。でも、エンターテインメントとしては良く出来ているのですが、後に何も残るものはない。この映画を観て「友情の大切さを知った」とか「生きるって素晴らしい!」といった感想を真面目に抱いた人があれば、その人は「idiot」と呼ばれても仕方ないかもしれません。ちなみに「バカ」という意味です。まあ、無邪気な「おバカちゃん」ぐらいにしておきましょうか。「きっと、うまくいく」という邦題は「Aal Izz Well」(アール・イーズ・ウェル)を訳したものだそうです。この言葉の由来ですが、イギリス統治時代のインドで夜警が街を見回りながら口にしていたフレーズだとか。



この映画、ネットでの評価が非常に高いです。たしかに面白いからそれはそれで結構なのですが、現代の日本人はこういう映画に高評価を与えるのかと思うと、ちょっと複雑な気分になりました。わたし的には、ブログ「終戦のエンペラー」で紹介した映画のほうがずっと傑作でしたね。おそらく、普段はテレビ、それもお笑い番組とかバラエティー番組ばかり観ている人が「きっと、うまいく」が大好きな人ではないでしょうか。そんな気がします。つまり、何も難しいことを考えなくて済んで、馬鹿笑いができて、気分がスカッとすればそれが一番という人たちです。でも、それでは現実逃避しているだけで、何も事態は好転しないし、何事もうまくいかないと思うのですが・・・・・。



あと、気になったのは主人公の“三バカトリオ”が何をしても許されること。たとえば、学長の自宅のドアに放尿したり、学長室に忍び込んで卒業試験問題を盗み出したりするのは明らかな犯罪で、悪ふざけの範囲を超えています。これらの悪事を発見した学長が「おまえら、退学だ!」と言い放つのを「鬼学長」などと悪者扱いするのは共感できませんでした。はっきり言って、この映画の登場人物で学長が一番好きですよ、わたし。



また、いくら勉強してもランチョーに勝てない“万年2番”のチャトル・ラーマリンガムの描き方もひどい。ニセのスピーチ原稿を与えて、大勢の前で一生心に傷を残すような恥をかかせたり、はっきり言って「いじめ」以外の何物でもありません。また、10年後の彼は大企業の副社長にまでなっているのですが、それでも両手両足を縛られて車に乗せられるなど、これまた犯罪そのものの被害に遭います。最後の彼がパニックに陥るオチも、わたしには笑えませんでした。こういう「いじめ」的なオチで笑いを取るのは好きではありません。


しかし、わたしはけっしてケチばかりつけるつもりはありません。
この映画、いろいろとインドという未来大国を知る上で勉強になります。
登場人物たちの言語ですが、英語とヒンディー語が混在していました。
それから、インドの異常なまでの教育熱ぶりも興味深かったです。
この映画、とにかく授業のシーンがやたらと出てきます。
学園モノだから当然というレベルではなく、「教育」とか「授業」のあり方そのものを問う場面が多いのです。わたしは、ブログ「ライフ・オブ・パイ」で紹介した映画を思い出しました。この映画の舞台はインドではありませんが、インド人少年が数学で天才ぶりを発揮する場面が登場します。
「0」を発見したインド人には、やはり数式が似合う気がします。


インドでは、男の子はエンジニア、女の子は医師にしたいという傾向が強いそうです。このああたりは未だにカースト制度を引きずる超・格差社会の存在が背景にあるようです。わたしはインドの人々の「知」への志向と上昇志向を見て、かの名画「スラムドッグ・ミリオネア」を思い浮かべました。
ちなみに、主人公のランチョーは学業が1番という好成績でありながら、下位の同級生や落第生との差別待遇を嫌います。
このランチョーの平等主義者から、わたしは坂本龍馬を連想しました。


龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究


映画com.でも、映画評論家の若林ゆり氏が「なんといっても最大の魅力は、“3バカ”、とくにランチョーのキャラクターがめっぽう魅力的だということ。坂本龍馬を思わせる自由人で、自分に正直な楽天家」と書いていますが、ランチョーに日本で最も人気のある歴史的人物の1人である龍馬を重ね合わせる人は多いようです。なによりも一見バカのようでいて、じつは賢いランチョーの行動には、「愚」の哲学といったものまで感じてしまいます。
わたしにはその名も『龍馬とカエサル』(三五館)という著書があるのですが、そこに「真の知恵者は馬鹿のふりをする」と書きました。



論語』には寗武子(ねいぶし)という愚者を評価する場面が出てきます。
孔子はどうも、愚を高く評価していたようです。この愚の思想は日本にも伝わり、民間の口碑や伝説や格言などにも残っています。
その1つに「馬鹿殿」なる語があります。後世の人々はこれを本当の馬鹿殿様の意味に理解していますが、そうではなく本当は殿様礼賛の語なのです。殿様というものは、よくできる者もできない者も、役に立つ者も立たない者も、とにかく多様な家来を抱えて、何とか使いこなしていかねばなりません。
さらにその後には幕府という厄介なものが控えていて、隙があれば取り潰してやろうと絶えず目を光らせています。
小利口な殿様ではとてもやっていけないのです。
それこそ馬鹿にならなければ、務まらない。
それをアイロニカルに表現したのが「馬鹿殿」なのです。


やはり、この映画は底抜けに明るいです。
落ち込んでいるときなどに観ると元気が出ることでしょう。
若林氏は「『うまーくいーく(All is well)』と言いながらピンチを乗り切る姿は日本の高度成長期ヒーロー、『ニッポン無責任時代』の植木等にも通じる」と述べていますが、わたしもまったく同感です。このような超能天気映画を作れること自体が、インドが高度成長中だということなのでしょうか。
自分の過去を振り返れば、「すべて、うまくいく」などと思っていた勘違いの最盛期(?)は、大学1年生の頃だったと思います。バブルの全盛期でもあった当時、わたしは六本木に住んで、毎晩のようにディスコに繰り出して踊っていました。それこそ、何かというと急に踊りだすインド映画の登場人物たちのように・・・。


初めて訪れた「シネマート六本木」

こんな映画を上映しています



この映画、公開終了直前で、ぎりぎりセーフでした。
前回、苦杯を舐めた「ヒューマントラスト渋谷」は60席あまりで1日1回のみの上映っということが判明。これでは大都会・東京の映画人口を考えたら、あっという間に満席になります。広末涼子チャンのデビュー曲「MajiでKoiする5秒前」ではありませんが、もともとわたしは、渋谷はちょっと苦手〜♪でもあり、今回は慣れ親しんだ六本木の映画館で観賞しました。「シネマート六本木」です。ここなら80席以上あります。シネマート六本木を訪れたのは初めてでしたが、わたしが以前住んでいたマンションのわりと近くでした。


なつかしい「香妃園」の看板を発見



ふと、隣接したビルを見上げると、「香妃園」の看板が・・・・・。
おお、なつかしい! たしか以前は、麻布警察署の近くにあったはず。
いつの間にか、ここに店が移っていたのですね。
この香妃園といえば、鶏の煮込みソバが名物。
かつて松田聖子チャンがアイドルだった頃、「わたし、六本木の香妃園の鶏の煮込みソバにハマってま〜す」とラジオか何かで発言したことがあります。それを聴いたわたしは、踊り疲れたディスコの帰りによく香妃園に寄って、鶏の煮込みソバを啜っていました。なつかしい思い出です。


四半世紀ぶりに「香妃園」に入りました

これが、鶏の煮込みソバだ!!



早速、わたしも映画が始まる前に香妃園に入って鶏の煮込みソバを注文。
1300円でしたが、じつに25年ぶりぐらいで食しました。相変わらず旨かったごわす。近くの席で、関○連合みたいな雰囲気の若者たちが同じソバを食べていたのが気になりましたが・・・・・。ソバを食べて映画を観たら、なんとなく元気が湧いてきました。だからといって、「きっと、うまくいく」とは思いませんでしたが。(苦笑)今後この映画の話題が出る度、わたしは鶏の煮込みソバを思い出すでしょう。



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2013年8月10日 一条真也