さらば愛しき映画監督よ

一条真也です。映画監督の原田眞人監督が8日にお亡くなりになられたとの訃報に接しました。76歳でした。ブログ「タキシードを着て、映画とグリーフケアを語る」で紹介したように、ちょうど1年前、原田監督とは映画談義を交わしたばかりでした。再会を楽しみにしていたのに残念です。

ヤフーニュースより

 

原田監督は大学進学を断念し、1973年からロスに居住。ハリウッドで皿洗いしながら映画にのめりこんだ青春時代を送られました。映画誌に寄稿し、映画祭を求めてヨーロッパをさすらいました。23歳までに見た映画がざっと4000本だといいますから、凄いですね。1979年、自伝的要素の濃い「さらば映画の友よ・インディアンサマーで初監督。1995年、「KAMIKAZE TAXI」でヴァレンシエンヌ冒険映画祭準グランプリ・最優秀監督賞を受賞するなど海外で高い評価を得ました。1997年、援助交際する少女を描いた映画「バウンス koGALS」では、ブルーリボン賞など数々の映画賞を受賞されました。


昨年12月14日、原田眞人監督と

 

その後の原田監督は、1999年金融腐蝕列島 呪縛、2002年「突入せよ!『あさま山荘』事件」などの社会派ドラマで一気にその実力を開花させました。1年前に初めてお会いした原田監督はタキシード姿だったこともあり、とても知的なジェントルマンに見えました。その日のクリスマス・パーティーの余興で、小生が正確な演題は、「映画は、愛する人を亡くした人への贈り物」のタイトルでテーブルスピーチをさせていただいたのですが、真剣な表情で聴いて下さいました。「とても興味深いお話でした」と言って下さったのが本当に嬉しかったです。思いやりに満ちた方でした。

 

原田監督がメガホンを取った作品は多いですが、いずれも名作揃いです。特にわたしが感動したのが、「クライマーズ・ハイ」(2008年)です。1985年、群馬県御巣鷹山で起きた日航機墜落事故をめぐって翻弄される地元の新聞記者たちの姿を描く社会派ドラマです。実際に記者として日航機墜落の取材をした作家・横山秀夫が自らの体験を反映した同名小説を原田監督が映像化しました。1985年8月12日、乗員乗客524名を乗せた日航機123便が、群馬と長野の県境に墜落、その一報が北関東新聞社に入る。編集部で全権デスクに任命された悠木和雅(堤真一)は記者として扱う一大ニュースに対する興奮を禁じえませんでしたが、中央紙とのスクープ合戦や組織や家族との衝突を経て、命の重さに対しわき上がる使命感を覚えるのでした。

 

ブログ「日本のいちばん長い日」で紹介した2015年の作品も感動しました。半藤一利のノンフィクションを基にした群像歴史ドラマ大作です。1945年7月。太平洋戦争での戦況が悪化する日本に対して、連合軍はポツダム宣言の受託を迫ります。やがて広島、長崎に原爆が投下され、日本を取り巻く状況はさらに悪くなっていきます。全国民一斉玉砕という案も取り沙汰される中、阿南惟幾陸軍大臣役所広司)は決断に悩み、天皇陛下本木雅弘)は国民を案じました。そのころ、畑中健二少佐(松坂桃李)ら若手将校たちは終戦に反対するクーデターを画策していたのです。「クライマーズ・ハイ」と本作は拙著死者とともに生きる産経新聞出版)でも紹介しており、同書は原田監督にも献本させていただきました。日航ジャンボ機墜落事故から40年、終戦から80年という大きな節目の今年、原田監督が旅立たれたわけです。とても偶然とは思えません。

 

その他、ブログ「検察側の罪人」で紹介した2018年の映画も良かったです。雫井脩介のミステリー小説を、木村拓哉二宮和也の初共演で映画化。東京地方検察庁を舞台に、人望の厚いエリート検事と彼に心酔する新米検事がある殺人事件の捜査をめぐってすれ違い、やがて二人の正義がぶつかり合うさまが映し出されます。東京地方検察庁刑事部に配属された検事の沖野啓一郎(二宮和也)は、有能で人望もある憧れのエリート検事・最上毅(木村拓哉)と同じ部署になり、懸命に仕事に取り組んでいました。あるとき、二人が担当することになった殺人事件の容疑者に、すでに時効が成立した事件の重要参考人・松倉重生が浮上する。その被害者を知っていた最上は、松倉に法の裁きを受けさせるべく執拗に追及するが、沖野は最上のやり方に疑問を抱き始めるのでした。

 

そして、ブログ「燃えよ剣」で紹介した2021年の作品が素晴らしかったです。司馬遼太郎のベストセラー小説を原作にした時代劇です。新選組の副長・土方歳三の姿を、近藤勇沖田総司といった他の志士たちの人生と共に活写します。江戸時代末期、黒船来航と開国の要求を契機に、天皇中心の新政権樹立を目標とする討幕派と、幕府の権力回復と外国から日本を守ることを掲げた佐幕派の対立が表面化。そんな中、武士になる夢をかなえようと、近藤勇鈴木亮平)や沖田総司(山田涼介)らと京都に向かった土方歳三岡田准一)は、徳川幕府の後ろ盾を得て芹沢鴨伊藤英明)を局長にした新選組を結成します。討幕派勢力の制圧に奔走する土方は、お雪(柴咲コウ)という女性と運命の出会いを果たすのでした。 ブログ「イクサガミ」で紹介したNETFLIXの大ヒットドラマにも通じる力作でした。

タキシード姿でスピーチする原田眞人監督

 

わたしは日本映画史の影の功労者として故ジャニー喜多川の存在があると思います。彼が興したジャニーズ事務所からは数多くの名優が生まれましたが、なんといっても木村拓哉岡田准一二宮和也の3人が際立っています。原田監督は「検察側の罪人」でキムタクとニノの初共演を実現させ、「燃えよ剣」ではアクション俳優・岡田准一の魅力を全開に引き出しました。じつはさらば愛しき人よ(1987年)では、原田監督はジャニーズ事務所出身の郷ひろみ主演でわたし好みのアクション映画を作られています。この作品での郷ひろみは最高にカッコ良かった! また、「日本のいちばん長い日」ではやはりジャニーズ事務所出身の本木雅弘昭和天皇を演じさせるという驚愕のキャスティングで大きな話題に。モックンの演技は威厳がありましたね。

 

今度、原田監督と再会したら、「ジャニーズ事務所と映画」についても意見交換させていただきたかったのに残念です。15日の通夜式、16日の葬儀告別式はどうしても仕事の都合で参加できません。会場には、お花を出させていただきます。原田監督は生前、「映画は愛よ!」と口癖のように言われていました。わたしは、名作「さらば愛しき人よ」にならって、「さらば愛しき映画監督よ」と原田監督に言いたいです。たくさんの名作を、たくさんの感動を、本当にありがとうございました! 最後に、日本映画界が誇る名匠・原田眞人監督のご冥福を心よりお祈りいたします。合掌。

 

*よろしければ、佐久間庸和ブログもお読み下さい!

 

2025年12月13日  一条真也