一条真也です。
14日の夜、クリスマスのフォーマル・パーティーで卓話をしました。わたしはタキシードを着て、水天宮のロイヤルパークホテルからタクシーで会場に向かいました。
ロイヤルパークホテルのクリスマスツリーを背に
ENEKO Tokyoの前で
この日のパーティー会場は、西麻布にあるバスク料理店の名店「ENEKO Tokyo」です。スペイン・バスクでミシュラン三ツ星を獲得し続けている「アスルメンディ」のエネコ・アチャ。彼の哲学である「持続可能な調和」をもとに、伝統的なバスク料理を新しい素材や調理技法で独創的に表現した忘れられない食の空間です。
ENEKO Tokyoのクリスマスツリーの前で
ホワイエのようす
まずは、今回のパーティーの主催者である伊佐邦子さん(イサアンドパートナーズ代表)に御挨拶をすると、いろんな参加者の方々を紹介していただきました。各国の大使・大企業の経営者・芸術家が多い印象でしたが、映画監督や俳優さんといった映画関係者の姿もありました。そう、わたしの今夜の卓話のテーマは「映画」です。正確な演題は、「映画は、愛する人を亡くした人への贈り物」。
原田眞人監督と
ホワイエで、日本映画界の重鎮である原田眞人監督にお会いしました。原田監督といえば、ブログ「わが母の記」、ブログ「日本のいちばん長い日」、ブログ「検察側の罪人」、ブログ「燃えよ剣」、ブログ「BAD LANDS バッド・ランズ」で紹介した数多くの名作のメガホンを取った方です。大監督を前に映画の話をするのは恐縮のきわみ。
伊佐さんの乾杯の発声で開宴
晩餐会のようす
卓話のようす
レジュメの表紙
テーブルでの卓話ですが、今回は簡単なレジュメを用意しました。最初に編集者より卓話者の紹介がありました。続いて、わたしは、「本日は、お招きいただき、ありがとうございます。よくハリウッド映画などで“Ladies and Gentlemen”というセリフが出てきます。『紳士淑女のみなさん』という意味ですが、今夜はまさにそんな感じですね(笑)。わたしはホテルや結婚式場も経営しておりますので、タキシードを着る機会はわりと多いんですが、これだけタキシード姿の男性が揃っている光景は壮観ですね!」と言いました。
レジュメより
わたしは日々たくさんの映画を観ますが、奇妙な現象が起きていることに気づきました。どんな映画を観ても、グリーフケアの映画だと思えるのです。ジャンルを問わず、どんな映画にも死者の存在があり、死別の悲嘆の中にある登場人物があり、その悲嘆がケアされる場面が出てきます。この不思議な現象の理由として、わたしは3つの可能性を考えました。1つは、わたしの思い込み。2つめは、映画に限らず物語というのは基本的にグリーフケアの構造を持っているということ。3つめは、実際にグリーフケアをテーマとした映画が増えているということです。わたしとしては、3つとも当たっているような気がしていました。
レジュメより
その後、グリーフケアについて説明した後、拙著『愛する人を亡くした人へ』(PHP文庫)を原案とするグリーフケア映画「君の忘れ方」が、2025年1月17日に全国公開されることを告知しました。「グリーフケア」は心の喪失を埋める営みであり、わが造語である「ハートフル」にも通じます。映画は特別な場所において特別な時間を創り出す儀式であり、そこには人間が常に求めている「この世にいない者」の姿があるのかと思います。葬送儀礼には死者の存在が不可欠ですが、総合芸術である映画にもそれは継承され、悲嘆を軽減する文化装置として今日もわたしたちに愛を贈与し続けてくれます。
齋藤工さんの横で映画への想いを語りました
卓話では、ブログ「大きな家」で紹介した、前夜に観たドキュメンタリー映画についても言及しました。児童養護施設の子どもたちをテーマにしたドキュメンタリー映画ですが、非常に感動しました。映像も涙が出るほど美しく、今年の一条賞の最有力候補作品であります。この作品は映画監督で俳優の齋藤工さんが製作者なのですが、この夜、ご本人がパーティー会場にサプライズ登場されました。齋藤さんはわたしの感想をとても喜んで下さいました。
グリーフケアについても語りました
齋藤工さんと
齋藤さんには『心ゆたかな映画』と、児童養護施設への支援について書かれた『コンパッション!』の2冊をお渡しし、プリントアウトした「大きな家」のブログもお渡ししました。齋藤さんはとても腰の低い方で、セクシーな外見だけなく、知性と人間性を兼ね備えた一種の「PERFECT HUMAN」だと思いましたね。齋藤さんが「君の忘れ方」で主演している坂東龍汰さんの同じ学校の先輩であり、小倉昭和館に「斎藤工シート」が存在することも話題に出て、驚きました。まさに、この世は有縁社会!
笑顔で挨拶する原田眞人監督
その後、原田眞人監督の御挨拶がありました。原田監督は静岡県沼津市生まれで、1972年にロンドンに語学留学されています。P・ボクダノヴィッチ監督の「ラストショー」(1971年)の評論を『キネマ旬報』に載せたことをきっかけに映画評論家となり、『キネマ旬報』や『宝島』にアメリカ発の映画情報を寄稿。著書も出しておられます。原田監督は、トム・クルーズ主演の「ラストサムライ」(2003年)に俳優として出演されていることでも有名ですが、監督としての次回作は富士山の爆発をテーマにした作品を構想しておられるそうです。奥様が「エキストラ希望の方はいますか?」と言うので思わず手を挙げたら、お隣の齋藤工さんも挙げていました。笑
映画ジャーナリストのアキさんと
さらに、この日は、映画ジャーナリストのアキ(堀田明子)さんにも久々にお会いできて嬉しかったです。アキさんは、いま、「ハリウッド・リポーター・ジャパン」の記者として大活躍です。いずれ映画に関する著書の出版を希望されており、その本を手にするのが楽しみです。そのときは、不肖わたしが帯に推薦文を書かせていただきます。ENEKO Tokyoのバスク料理も美味しく、各種のワインも美味しく、正装した素晴らしき紳士淑女に囲まれて、西麻布の夜はハートフルに更けていきました。
中庭で参加者全員で集合写真を撮影
2024年12月15日 一条真也拝