一条真也です。
東京に来ています。13日の夜、この日から公開されたアイルランド、アメリカ、イギリス、カナダ、韓国の合作映画「ブゴニア」をTOHOシネマズ日比谷で観ました。ヨルゴス・ランティモス監督の新作ですが、いやもう、むちゃくちゃ面白かった! 今年最初の一条賞大賞候補作!
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「チャン・ジュヌァン監督の『地球を守れ!』をリメイクしたサスペンス。ある製薬会社のCEOを地球侵略を目指す宇宙人だと信じ込んだ男たちが、彼女を誘拐して地球から手を引くように迫る。メガホンを取るのは『女王陛下のお気に入り』などのヨルゴス・ランティモス。ランティモス監督作『哀れなるものたち』などのエマ・ストーン、ドラマシリーズ「ブレイキング・バッド」などのジェシー・プレモンスのほか、エイダン・デルビスらが出演する」

ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「ある製薬会社CEOのミシェル(エマ・ストーン)を地球侵略を目論む宇宙人だと信じる陰謀論者のテディは、彼を慕う従弟のドンと共にミシェルを誘拐して自宅の地下室に監禁する。テディたちは、ミシェルに対し、彼女の星の皇帝と退去の交渉をするために宇宙船に連れて行けと彼女に迫る。心理学の学位を持つミシェルは、テディたちを言いくるめながら逃れようとするが、テディの隠された過去が暴かれたことで、事態は思いも寄らない方向へ向かう」
この映画、本当に面白かった! でも、ネタバレ厳禁なので、詳しいことは書けません。思ったのは企業の社長というのは予期せぬ恨みを買う危険性をつねに持っているということ。それが製薬会社のような人命に関わる業種の社長なら、猶更だと思います。恨む側も中には正当な理由のある者もいるでしょうが、いわゆる「アタオカ」と呼ばれる頭のおかしい連中の妄想も多いことだと思います。そんな連中に拉致された場合でも、本作の主人公であるミシェル(エマ・ストーン)のように堂々と誘拐犯と渡り合う腹と話術を持つと心強いですね。この映画、自分に殺意を抱く犯人に対して「あなたは、自分を殺さない方がいい。あなたは、自分を殺すと損をする。なぜならば・・・・・・」というロジックは、とても参考になりました。
「ブゴニア」とは、古代ギリシャの「牡牛の死骸からミツバチが自然発生する」という概念を指します。そこから転じて本作のタイトルになりました。「死からの再生」「人類の滅亡による生態系の回復」といったテーマを象徴しているようです。映画では、地球を侵略しに来たエイリアンだと信じられた女性CEOを、陰謀論に傾倒する養蜂家が誘拐しますが、ここでは「ブゴニア」の概念がメタファーとして描かれています。それにしても「牡牛の死骸」が意味の発端とは! 前日のブログの最後に映画「黒い牡牛」(1957年)のことを書いたばかりなので、その偶然の一致に驚きました。シンクロニシティかもしれません。
本作は、ブログ「女王陛下のお気に入り」で紹介した2019年の映画、ブログ「哀れなるものたち」で紹介した2023年の映画などで知られる鬼才ランティモスが、これで5度目のタッグとなるストーンを主演に迎えた誘拐サスペンスです。ブログ「エディントンへようこそ」で紹介した2025年の映画でストーンを起用した監督アリ・アスターがプロデューサーに名を連ねています。ランティモス監督は、本作の脚本を読み、すぐさまストーンに「きみはどう思う?」と脚本を送ったという。そのストーンは、「私の感想は『何これ』」とおどけてふたりを笑わせながらも、「脚本が届いたとき、読むのをやめられないほど引き込まれた。驚きや現実とのつながりもあって、色んな点で未来を占ってると思った」とコメントしています。
「映画.com」のインタビューで、ジェシー・プレモンスは、テディというキャラクターについて「このストーリーは評判どおり、触れれば触れるほど、彼がどういう経緯で物語の出発点に達したかが見えてくる。過去にさまざまな苦痛やトラウマを経験してるんだ」と分析し、単なる誘拐犯ではない彼の奥底に潜む悲壮感を強調しています。次々と先入観を覆していく仕掛けを施したランティモス監督は、本作の見所について、「自分の信じる対象があるものから別のものに移り、登場人物への見方も変わっていく。誰を応援すべきか戸惑うはずだ。本作を観る中で非常に面白い体験ができると思う」と語っています。その出来栄えに自信を持っているようですが、実際、この映画は抜群に面白かったです!
「ブゴニア」は製薬会社の女性CEOをエイリアンだと信じ込んで誘拐する陰謀論者の話ですが、実際、アメリカにはUFOやエイリアンに関する陰謀論者が数えきれないほどいます。彼らの間でいま、大きな話題になっているのが「ディスクロージャー・デイ」というSF映画です。「未知との遭遇」(1977年)、「E.T.」(1982年)などの映画作品でエイリアンに関する情報開示を行ってきたと一部で言われているスティーヴン・スピルバーグ監督の最新作です。ストーリーは明かされておらず、未だ多くの謎が残っています。予告編では、エミリー・ブラント演じる天気予報キャスターが番組放送中に異変に見舞われる不穏なシーンでスタートしています。陰謀論者たちは、この映画公開された1ヵ月後に、ドナルド・トランプ大統領が実際にエイリアンの情報を開示するなどと囁かれています。
映画「ブゴニア」は、2003年の韓国映画「地球を守れ!」のリメイクです。「地球を守れ!」の監督はチャン・ジュヌァン。地球がエイリアンに侵略されていると思い込む青年と、エイリアンに間違えられた会社社長の戦いを描いたSFサスペンスコメディ。独自の研究からアンドロメダのエイリアンが秘かに地球に潜入、いよいよ人類を滅ぼそうとしていると確信した青年ビョング(ペク・ユンシク)。そんなビョングに一途な想いを寄せる太めの少女スニ(ファン・ジョンミン)。製薬会社のカン社長(ペク・ユンシク)がエイリアンであることを見抜いたビョングは、スニの助けを借りてカン社長の拉致に成功、社長を山奥の隠れ家に監禁します。次の皆既月食までにアンドロメダの王子に会わなければならないと主張するビョングは、王子の居場所を教えろと、カン社長に迫る。ビョングの話がまるで理解できず困惑するばかりのカン社長でした。モスクワ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞。こちらも、ぜひ観てみたいです!
*よろしければ、佐久間庸和ブログもお読み下さい!
https://tenkafurei.hatenablog.com/
2026年2月14日 一条真也拝